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しみったれ【文・長村大】その14

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鳳凰戦C1リーグ、むろんリーチの発声をしてを横に曲げる。
「ポン」
 トイメンから声がかかり、無筋が通される。おれは目線だけを上げてトイメンの表情を窺う。
 黒木真生プロ。プロ連盟の幹部であり、大昔の同僚でもある。そしてかつての──おれが知る十数年前の──黒木プロは、弱気で「鳴らした」打ち手であった。
 さらにもう1枚、危険牌がトイメンからツモ切られる。はたして、こんな雀風だっただろうか。

 この数日前、久方ぶりに馬場裕一プロと食事をした。近代麻雀とかいうニッチな雑誌を手に取っている方には説明不要であろう、あのバビィである。数日後に迫った「最強戦」に出るのが楽しみで仕方ない風であった。なにしろ馬場さんは──癌との闘病中なのだ。

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