「Mリーグの知名度の大きさ、それ以外の活躍を知られない歯がゆさ。そしてMリーグという舞台において、二人は敗北のプレッシャーとどう向き合い、何を残そうとしているのか」
近代麻雀note・Mリーガー対談スペシャル企画。内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)×松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)のVol.3。麻雀プロが戦うリーグ戦では、負けて降級することはあれど、基本的には出場資格を失うようなことはほとんどない。しかし、Mリーグでは契約満了があり、次年度の契約ができなければMリーガーであり続けることはできなくなる。そして、その判断基準において成績が大きなウエートを占めていることは、異論を待たない。今シーズン不調の2人は、そのプレッシャーとどのように向き合っているのだろうか。(全3回の3回目/#1、#2へ)(取材日・3月5日)
[文・東川亮]
■Mリーグ以外の団体での成績は今期好調
――お二人は今まで、リーグ戦での降級はあったのでしょうか。
内川 松ヶ瀬さんはなさそう。常に勝っていると思う。
松ヶ瀬 僕はないですね。
内川 僕もリーグ戦等々ではほぼ全部勝っているんですよ。18年間やって、降級はA1から一度落ちただけで、あとのリーグ戦は全部昇級か昇級争いをしているので、あんまり負けた経験はないですね。苦しいな、というシーズンがあっても、降級争いで苦しかった、負けた、というのはないです。タイトル戦はまた別ですけど。
――Mリーグで負けることは、これまでプロとして個人戦を戦ってきた中での負けとは全然意味合いが違うと思います。その辺の感覚の違いについては。
松ヶ瀬 そもそもの視聴数が違いすぎますからね。見ている人たちの記憶に残るんですよ。一年後とかだと忘れている人も多いかもしれないですけど、直近に出会った人たちは見ていたら覚えているわけで、そういうところがだいぶ違うのかなとは思います。
内川 まさにその通りですよね。ここ2ヶ月間、めちゃくちゃ心配されています。どこのゲストに行っても「チームは順調だけど、内川さん大丈夫ですか?」みたいな。僕はケロっとしているんですけど(笑)。
ただ、試合の後でSNSを見たりとかすると「ちょっと不調が過ぎるんじゃないか」とか、心配されているのをよく見かけるんですけど、それもあんまりよくないと思っちゃう。「もしかしたら自分はズレているのかな」って、そういう人の声に惑わされかねないので、僕は今シーズンの1月末ぐらいからSNSを見るのを辞めました。精神上あまりよくないので。お仕事のためのツールとしては使いますけどそれだけで、自己評価や顕示欲的なものは一切捨てて、しばらく見ていないです。
――そういうふうに心配されるのは、麻雀プロとしてはあまりよくないことですよね。
内川 でも、しょうがないんじゃないですか。見ている人が正義というわけでもないですけど、伝えられることも多いですし。松ヶ瀬さんもこの前、優勝(※第6期RMUグランプリ)していますものね。
松ヶ瀬 そうですね、でも誰もそのことは覚えていないわけですよ。
内川 そういうのは、プロ同士は知っているけどアマチュアの人は知らないんです。僕も今期はA1に昇級したし、チームも順調だし、いい年ですよ。でもすごく心配されるんですよ。「めっちゃ負けてますけど大丈夫ですか?」みたいな。まあ印象の問題ですし、しかもめっちゃ負けてるって言ったって、20回程度ですよ。リーグ戦で言ったら半期、4半荘x5節の半期分でしかないですし。
松ヶ瀬 そりゃあね、負けるときもありますよね。
内川 もうあと20回やったらプラマイゼロに普通に戻っているとかは全然あるし。とにかく、数字が大きいからびっくりしちゃいますね、Mリーグは。100負けているなんて負けに入らないですよ。1回麻雀打って結果出してください、というのと同じような話。だから「ちょっと調子悪かったな」ぐらいの感覚です。
■契約満了のプレッシャーとの向き合い方
――Mリーグには、契約満了による選手の入れ替えもあり得ます。特にKADOKAWAサクラナイツは、現状なら大丈夫そうですが、レギュレーションによる入れ替えの対象チーム(※今期レギュラーシーズンで敗退すると最低1名の選手入れ替え義務が生じる)でした。またEX風林火山は、今シーズンは対象チームではないですが、このままいくと来シーズンに引っかかる可能性が出てきます。そして、レギュレーションに引っかからなくても契約満了になる可能性もあります。麻雀プロ、Mリーガーとして、そういうプレッシャーを今、どのように感じていますか。
松ヶ瀬 もともと僕は、負けたりダメだったりしたときに、最初に交代するのは自分だといつも思っています。何だったら来期いない可能性もあるんじゃないかと、そのぐらいの気持ちではずっといます。でも、だからといってそれで自分の動きが何か変わるかって言ったら、やれることは限られているので、頑張ってできるだけの結果を残すしかないですよね。
やっぱりプレッシャー的なものはないわけじゃないんですけど、そんなに影響はしていないと思います。とりあえず、全部終わったときに考えるしかない、今はやれることをやるしかないかなって感じです。
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