「『100戦打ちましょう、そして…』MリーグでMVPを獲得した二人が共に思い描く、究極の目標」鈴木優・魚谷侑未対談スペシャル企画(3)
近代麻雀note・Mリーガー対談スペシャル企画、鈴木優×魚谷侑未(3)。魚谷侑未は2019-20シーズンにMVPを獲得。そして鈴木優も、2023-24シーズンでMVPを獲得。愛知の雀荘の師弟は、共に麻雀界を代表する打ち手になった。これからもしのぎを削ることになる二人は、健闘を誓いつつ、究極の目標を思い描いている。(全3回の3回目/#1、#2へ)
[文・東川亮]
■MVP獲得秘話
――お二人はMリーガーとして、共にMVPを獲得されました。
魚谷 MVP、おめでとうございます。
優 ありがとうございます。
魚谷 優くん、私のおめでとうツイート絶対まだ見てないでしょ。
優 すぐ見たよ、いいねした。すごくうれしかった。
――お二人がMVPを獲るにあたって、チームからの後押しもあったと思います。
優 申し訳ないですけど、僕個人としてはMVPになれるかどうかなんてどうでもよかったんですよね。とにかく目標はチームの優勝、レギュラーシーズンではチームとして1ポイントでも多く稼ぐことが大事で、個人成績は二の次でした。でも、周りの応援してくださる方が「こんなチャンスはなかなかないから狙ってほしい」と言ってくれて、そしてなんと言っても家族ですよね、子どもから「絶対にMVP獲って、一番になって」と言われたことで、レギュラーシーズンの最終日にはそれに応えたい気持ちが芽生えていました。
パイレーツとしては、瑞原さんが首位にいて、僕と仲林の2人もMVPを狙える位置につけていましたので、パイレーツの誰かがMVPを獲得するためにはどのような起用がいいのか、監督もすごく頭を悩ませていたと思います。そして、最終的には僕が最終日の初戦に出てトップか2着なら連闘、3着以下なら仲林、1戦目で瑞原さんを超えたなら瑞原さんが2戦目に出ることが決定。チャンスをもらえましたので、最終日は自分のため、MVPを獲ってほしいと思ってくれている人のために頭をフル回転して、自分の打てる一番いい麻雀を打とうと思った結果、連勝することができました。
ただ、終わった直後はとても複雑でしたね。瑞原さんも絶対に悔しかったはずだし、それを思うと喜べませんでした。でも、獲った後は応援してくれた人がすごく喜んでくれましたし、MVP争いの2位3位なんて、数年も経てば思い出してもらえないじゃないですか。この1年だけですけど、記憶と記録に残る賞を取れたことは誇らしく思います。それでも、1週間くらいはもやもやしていましたけど。
魚谷 私のときは、年が明けるまでは成績がマイナスしていて、とてもMVPを狙えるような状況ではありませんでした。そこから運良く成績を伸ばすことができて、(近藤)誠一さんの成績を超えたあたりで、当時の誠一さんは4着回避率1位のタイトルが狙える状況でしたので、監督が誠一さんに「このままMVP争いをするか、ラス回避が欲しければこのまま確定させてもいい」という話をしたんです。そうしたら誠一さんが「自分は今確定している賞をありがたくもらおうと思うから、心おきなくMVPを狙って」と言ってくださって、私がMVPを狙うことになりました。私のときは、優くんのときほどの葛藤はなかったです。
ただ、私は優くんと今シーズンの最終戦を打ったわけですけど、そのときには優くんに「おめでとう」と言いつつ、その後で(瑞原)明奈に会ったときには「ごめんね」と言いました。私がトップを獲れば、もしかしたら明奈がMVPを取れていたかもしれないですから。彼女は「いいよ、大丈夫」みたいな感じで返してくれていました。
――魚谷さんとしてはもちろんトップを目指しつつ、優さんの前に立ちはだかろう、みたいな意識はあったのでしょうか。
魚谷 「邪魔してやろう」とかの感情は一切ないですね、ウチのチームはセミファイナル進出の可能性が事実上なくなっていたので、あとはファンの方に自分の麻雀を届けることだけを考えていました。自分がトップを獲る、獲れないなら自分の順位を少しでも上げる。それだけです。
■100戦、打ちましょう
――優さん的に、最後のハードルとして魚谷さんが出てきたことについては、思うところもあったのでは。
優 僕はMリーグ2年目で、魚谷さんとはそこまでに6回くらい打っているんですけど、全部僕のほうが着順は下で、トップも3、4回取られているんですよね。それをメイク室とかで冗談ぽく話すこともありました。
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