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私設Mリーグダービー④ドラフト当日【平岡陽明】

仲間内でMリーガー4人を取って(チームはバラバラ)4人の総合成績を競い合うことを始めた著者たち(おじさん)。
勝手にオーナー気分が味わえて楽しいらしい。詳しく読みたい方はこちら↓(読まなくてもこの話は楽しめます)

そしてついに3年目のドラフト会議の日を迎えた。
会場は新橋の居酒屋・鳥貴族。
 
「出版社最強雀士」のメタボリック健。
「心はいつも雀鬼流」のタクシー貴。
「狂気のマルコ推し、勝ち組人生」のデジタル高見。
小説家の私。
それに新規参加の水谷さんが顔を揃えた。
 
われわれは水谷さんと「どうも、どうも」と挨拶を交わした。
がっしりした体躯。太い眉。意志の強そうな目。
聞けばラグビーではフォワードを務めていたという。
 
健から聞いていた話とあいまって、私の第一印象は「重戦車みたいな人だな」というものだった。健がガチガチ言うので、ここではとりあえず「ガチ水谷」と命名しておく。
 
生ビールで乾杯のあと、運命のドラフト会議が始まった。
みんなのグループLINEに「いっせーのせ」で指名選手を送信し、
指名がかぶったら、アプリのサイコロで決めるルールだ。
 
「それでは1位指名に入りたいと思います。みなさん、書き込みましたか?」
 
健の声が響く。
ガヤガヤする居酒屋で、われわれのボックス席だけが静まり返る。
 
ごくりと唾をのむ。
各チームの今季のエースが出揃う。
ここ、超重要。
 
「それでは行きますよ。いっせーの、せ!」
 
1位指名
メタボリック健 伊達朱里紗
タクシー貴   佐々木寿人
デジタル高見  佐々木寿人
私こと平岡   松ヶ瀬隆弥
ガチ水谷    多井隆晴
 
「あーっ」と声を上げたのは、タクシー貴とデジタル高見だった。
寿人の指名がかぶった。

タクシー貴……雀鬼流が大好きな、麻雀歴30年の酔いどれタクシー運転手。
デジタル高見……麻雀戦術書にすべて目を通す、人生勝ち組のコンサル。丸山奏子(マルコ)推し。

「よしっ」と小さくガッツポーズしたのは、ガチ水谷。
 
私と健も単独指名に成功し、ひとまず胸を撫で下ろした。
 
サイコロアプリが開かれる。
2つのサイコロを振って、足した合計が高い方の勝ちだ。
 
まずは貴が振った。1+5で「6」。
んーっ、と外野から微妙な声が上がる。
 
次にデジタル高見が振った。4+6で「10」。
「よっしゃ、寿人ゲット!」とガッツポーズ。
 
やっぱり金持ちの家に生まれた奴って、引き強ぇーわ。
デジタル高見が寿人を狙ってきたのは、ちょっと意外だったけど。
 
けれどもタクシー貴は、へこたれない。
「まあ、寿人の指名がかぶって、くじで引き負けるところまで、俺は織り込み済みだから」と、へらず口を叩きながら、外れ一位を打ち込んだ。
 
「大介」
 
このシンプルな名前を見て、「うおーっ!」と歓声が上がる。
 
忘れてた。大介はめっちゃ雀鬼流の打ち手だ。
タクシー貴が指名しないはずがない。
 
みんなが様子見しがちな新規参入選手を、わざわざハズレ1位で獲りに行ったあたりに、貴なりの心意気が窺える。
 
「それでは2位いきます。書き込みましたか? いっせーの、せ!」
 
2位指名
メタボリック健 仲林圭
タクシー貴   渡辺太
デジタル高見  仲林圭
私こと平岡   瑞原明奈
ガチ水谷    勝又健志
 
「よしっ!」と、声をあげたのは、またもやガチ水谷。
 
その傍らで、「えっ? うそでしょ?」と声をあげたのはメタボリック健だった。仲林の指名がかぶり、おそらく3位に予定していた瑞原を私に強奪された。

メタボリック健……編集者。「出版界最強の雀士」と言われている。麻雀業界とプロに詳しい。

「なんで瑞原? 平岡さんはこの2年間、瑞原の『み』の字も口にしなかったじゃないですか」
 
「うふふふ。この前あなたに力説されて変わったのよ。いまは女性の時代。瑞原ツエーってね。まあ、これもドラフト戦略よ。江川の『空白の1日』みたいなもん? ありがとね」
 
「うわー、まじ泥棒やん! 人のカネで酒飲んどいて、この仕打ちかよ。これで完全に予定が狂った。サイコロ負けられん!」
 
健と高見で、仲林の獲り合いが始まった。
 
まずサイコロを振ったのは健だった。4+6で「10」。
うしっ! と小さくガッツポーズ。
 
さすがの高見もうなだれ、敗北を覚悟しながらサイコロを振った。
すると、5+6で「11」。
 
「よっしゃー!!」と雄叫びをあげる。
まじ悪運強ぇわ、こいつ。
 
失意の健は、すぐにハズレ2位を打ち込んだ。
「コバゴー」
なるほど。これで健は3年連続でコバゴーを指名したことになる。
困ったときの船長頼みか。
 
タクシー貴の「太」については、意外ではあったが、貴らしいと言えば貴らしかった。正直なところ、こういうトリッキーな奴が一人いると助かる。欲しい選手のかぶりが少なくなるから。
 
2位までのドラフトの成果を振り返るとーー。
 
メタボリック健は、私のドラフト奥義が炸裂したこともあってガタガタ。
デジタル高見は、めくり合いに連勝して、意気軒昂。
私はまあ、思惑どおり。
タクシー貴はよくわからん。
 
そしてわれわれがギャーギャー騒ぐ傍らで、ひとり粛々と「多井・勝又」の単独指名に成功したガチ水谷が不気味だ。
 
ていうか「多井・勝又」の2トップって、めちゃくちゃ強くね?
メッシとロナウド。翔平とトラウト。三井と三菱。多井と勝又。
 
たしかにこの人、なんか「ガチ」かも……。

ドラフト後半戦。まさかの「あの人」が空いている……

さて、ドラフトは折り返しの3位指名。
 
鳥貴族の飲み放題も、いい感じにすぐ運ばれてくる。
 
「それじゃ3位、いきますよ。いっせーの、せ!」
 
3位指名
メタボリック健 本田朋広
タクシー貴   菅原千瑛
デジタル高見  高宮まり
私こと平岡   醍醐大
ガチ水谷    内川幸太郎
 
ここは全員が全員に対して、「意外だ」と思ったところだ。
 
メタボリック健の本田獲得は、意外だった。
 
タクシー貴の「まさかの新規加入縛り?」も意外だった。
 
デジタルであるはずの高見が、高宮を獲ってきたのも意外だった。
 
ガチ水谷の内川も「ふーん、そうきたか」という感じだ。
 
私の醍醐獲りも、みんなからすれば少し意外だったらしい。
(みんなの指名理由については、あとでまとめて開陳してもらう)
 
このまま4位指名に入る。
唯一、女流を指名していないガチ水谷は、ここで女流指名がマストだ。
 
私はここで、凄いことに気づいた。
 
堀ぽよが空いてる……。嘘だろ?
 
私は「ちょっと考えさせて」と言って、「タイム」を取った。
 
生ビールのジョッキの水滴を指でぬぐいながら、自分を落ち着かせる。
 
待て。待つんだ、俺。
今年の大方針は「全選手を入れ替える」だっただろ?

昨年 渋川難波 -105 堀慎吾-124 近藤誠一-195 魚谷侑未 -355

いくら余ってるからって、堀を獲るのはマイルール違反だぞ。
 
それに昨年の堀を思い返してみろ。Mリーグのラス頭だぞ。
さんざん掴んだ姿を見ただろ?
 
脳内では、「そうだそうだ。当初の予定どおり松本でいけ」という声が聞こえる。
 
だが一方で、「でも堀だぜ? 堀が4巡目で獲れるんだぜ?」という悪魔の囁きが押し返してくる。まるでドルビーサラウンドの低音のように。
 
私はしばらく逡巡した。
 
そして健の「そろそろいいですか、平岡さん?」という声にうながされ、私は4位指名選手を打ち込んだ。
 
「いきますよ。いっせのー、せ!」
 
4位指名
メタボリック健 二階堂瑠美
タクシー貴   瀬戸熊直樹
デジタル高見  白鳥翔
私こと平岡   堀慎吾
ガチ水谷    茅森早香
 
私は「ドラフト奥義その③ 手のひら返し」を炸裂させたのだった。
 
だって堀が4位で獲れるなんて、めっちゃお買い得じゃないですか。
それに36名中20名が指名されるこのMリーグダービーで、堀ぽよが指名漏れするなんて、堀に対して失礼だ。
(ドラフト奥義その④ 衝動買いの自己弁護)
 
これにて今年度のドラフトは終了した。
 
各チームの選手一覧を掲げておこう。
あなたはどのチームが強いとお思いですか?
 
チーム・メタボリック健
1位 伊達朱里紗
2位 小林剛
3位 本田朋広
4位 二階堂瑠美

 
チーム・タクシー貴
1位 鈴木大介
2位 渡辺太
3位 菅原千瑛
4位 瀬戸熊直樹

 
チーム・デジタル高見
1位 佐々木寿人
2位 仲林圭
3位 高宮まり
4位 白鳥翔

 
チーム・平岡
1位 松ヶ瀬隆弥
2位 瑞原明奈
3位 醍醐大
4位 堀慎吾
 
チーム・ガチ水谷
1位 多井隆晴
2位 勝又健志
3位 内川幸太郎
4位 茅森早香

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