彼女はたぶん魔法を使う 20枚シナリオ「マッチ」

表題は２年前に７１歳でお亡くなりになった樋口有介氏の著作より。(柚木草平シリーズより僕と僕らの夏や八月の舟などの高校生が主人公の作品のほうが好きでした)合掌。
着想は他の作品で使おうとしているカットバックドミノ倒し(この作品では３人娘が出るシーン)。
課題マッチでこのシーンを思いついた為、アンチで入るつもりが枚数制限でカット。結果的に張り手型の導入になった。構想半年。各シーンの箱書きまでやって書き始めて2週間で完成。前回に続きカットバックの練習です。

課題２　マッチ

彼女はたぶん魔法を使う

中村　ヘブン

【人物表】
新納(にいろ)　奏多(17)高校２年生
静寂(しじま)　明日香(17) 新納の幼馴染
魔法使い　　(75)明日香の変身姿
新納　佐里衣(22)響一の姉

一ノ瀬　愛子(17) 新納の同級生　
二階堂　美奈(17) 新納の同級生
三枝　　真由紀(17) 新納の同級生
ピーちゃん　　(2)  新納家のインコ・メス

◯道

学生服姿の新納(にいろ)奏多(17)がカバンをもって歩いている。

魔法使い(75)が歩道に占いの机を出して歩いている新納に声をかける。

魔法使い「おい、そこのお前」

新納、立ち止まり周りを見渡して魔法使いを見る。

新納「おれ？」

魔法使い、うなづき手でまねく。

魔法使い「うむ、お前の悩みがわしにはわかるのじゃ、少し話を聴いてゆけ」

新納、胡散臭げな顔で、

新納「おれの悩み？」

魔法使い「そうじゃ、おぬし、好きな子もおらず、おなごからモテることもなく、ネットでゲームばかりして人生棒に振っておるじゃろう？」

新納、ひきつった顔で

新納「い、今どきの男子高校生はそんなもんだよ！」

魔法使い、ビシッと新納を指さし、

魔法使い「そして童貞じゃ！」

新納、持っていた学生カバンをぼとっと落とす。震える声で

新納「ど、童貞ちゃうわ」

魔法使い、新納の後ろに周り、新納を押しながら、

魔法使い「まあまあ、おぬしに損な話はせん。学割で１万円じゃ」

新納、振り向き驚いた顔で、

新納「たっか！」

魔法使い「しかもこの魔法の愛のマッチも試供品のお試しでくれてやるわい」

新納、心底迷惑な顔で、

新納「霊感商品か？いるわけないだろ！」

キレ気味に言う新納。

◯マンション

夕暮れに沈むこぎれいなマンション

◯新納家・リビング

窓際にピーちゃん(2)  のケージがあるリビング。

新納、テーブルの上の愛と書いてある赤いマッチ箱をいじっている。

新納「あなたを愛していない人が、１０分間だけあなたを愛してしまうマッチ、って」

新納、ピーちゃんの方を見て、

新納「そういえば、お前メスだったよな」

マッチを持ってピーちゃんに近づく。

新納「ピーちゃん、ピーちゃん」

ピーちゃん、ケージに指を入れた新納の指に噛み付く。慌てて指を抜く新納。インコの威嚇する鳴き声。

新納「いった、嫌われてんな、オレ」

新納、マッチを一本抜きピーちゃんに向かって

新納「効くんかな、これ」

インコに向けてマッチに火をつける新納

◯新納家・玄関・中（夕）

新納佐里衣(22)がパンプスを脱ぎながら入って来る。

佐里衣「ただいま」

◯新納家・リビング

新納がピーちゃんに頬ずりされている。

リビングに入ってきた佐里衣、

佐里衣「何してんの？」

我に返ったピーちゃんが新納の耳をかじり、肩にフンをひっかけて飛び去る。

新納「痛っ、えーと、１０分間だけの愛？」

かじられた耳をもむ新納。

◯道・（朝）

静寂(しじま)明日香(17)が胸にカバンを抱いて歩道の陰に隠れている。

新納が携帯電話を見ながら前を通り過ぎると、顔を無表情にして

明日香「奏多じゃん、おはよう」

新納「あー明日香、おはよう」

新納、ちらっと明日香を見る。

特に会話もないまま学校に向かう二人。

◯鶴崎高校・外観（朝）

登校時の喧騒がある。

◯同・廊下（朝）

新納が一ノ瀬愛子(17)に声をかける。

新納「あの、一ノ瀬さん、ちょっといいかな？」

愛子、眉をひそめて

愛子「はあっ？」

愛子、不機嫌そうに返事する。

◯同・屋上の出口前の踊り場（朝）

愛子、鼻で笑いながら、

愛子「まさか告白とかじゃないよね。新納は無理だけど」

新納「違う、違う、ちょっと変わったものが手に入ったんで見てもらいたいんだ」

新納、ポケットからマッチを取り出し火をつける。

階段下からこっそり新納たちを盗み見る明日香。

◯同・屋上の出口前の踊り場（朝）

愛子が顔を紅潮させながら新納を激しくパチパチ叩いている。

愛子「ちょっと！、なんで！、わたし新納のこと好きじゃないし！」

愛子、動きをとめ新納の服の裾を掴み、

愛子「好き」

愛子、新納のお腹に頭をこすりつける。

◯同・廊下（朝）

階段の上からバシっと音がして愛子が階段から力強く駆け下りてくる

そのあとを左頬を赤く腫らせた新納が降りてくる。

新納「やべぇ、ジェットコースターじゃん」

陰に隠れている明日香。

◯同・屋上の出口前の踊り場（昼）

二階堂美奈(17)が額に汗をかき、真っ赤になりながら新納を抱きしめている。

美奈「少しだけ、少しだけ、こうしていてもいいですか？」

美奈、顔をあげ涙を流している。

陰に隠れている明日香。

◯同・屋上の出口前の踊り場（夕）

三枝真由紀(17)がうつむき新納の手を両手で包んでいる。

真由紀「今日から私以外の女性と話すのはやめて。私がいればそれで十分でしょ？」

真由紀、うっとりと新納の顔を覗き込む。

陰に隠れている明日香。

◯道（夕）

新納が血で汚れたシャツで歩いている。片目は膨れ鼻にティッシュを突っ込んでいる。

新納「はあ、大変な目にあった

新納、マッチをポケットから出し見つめる。

歩道脇に隠れていた明日香、顔を無表情にして

明日香「奏多じゃん、今帰り」

新納「あー、明日香」

新納、ちらっと明日香を見る。

明日香、新納の持っているマッチを見て

明日香「ん、それ何？」

新納、少し考えるそぶりをして

新納「これ、マッチ」

明日香「へー、珍しいもの持ってるね、どうやって火をつけるの？」

明日香、新納の手を覗き込む。

新納「うん、ちょっとつけて見せるね」

新納、シュっと火をつけて両手で火を囲み明日香にみせる。

明日香「ふーん、キレイな火だね」

明日香、興味を無くしたみたいに火から目をそらし、

明日香「そーだ、また週末買い物付き合ってよ」

新納、疑うように明日香を見る。

新納「う、うん」

明日香「じゃあね」

明日香、角を曲がって新納と別れる。

新納、呆然と見送る。

明日香、新納から見えなくなると胸元をパタパタ。顔を赤くして手で仰ぐ。

◯新納家・リビング

新納、マッチを見ている。

新納「あなたを愛していない人が、１０分間だけあなたを愛してしまうマッチ、って」

新納、ピーちゃんの方を見つめる。

◯静寂(しじま)家

古い洋館

◯同・明日香の部屋

ベッドの横に占いの机や愛と書いてある赤いマッチが数個置いてある。床には五芒星。ベッドにうつ伏せの明日香。

明日香「気が付いたかな？」

明日香、赤くなり足をバタバタ。

◯新納家・リビング

ピーちゃんが新納の肩で求愛のダンスを踊っている。

新納、赤くなりながら明日香の名前が写っている携帯電話の発信をタップする。

後記
カットバックの技術を使ったところ。
　１．状況から反転結果
占い料金が高いと切れ気味に言っていた新納がカットバック後では試供品のマッチを持っている。視聴者が「買うんかーい！」と突っ込みを入れるところ。当初は安い値段で新納が喜ぶという展開だったが、高い値段にして突っ込みを入れさせるほうが面白いと思い書き直した。
　２．状況から時間経過そして結果
インコにマッチを試した後、カットバックで（×××を使わない）新納の姉を出すことで【ラウンドキャラクター】を表現、その後インコにマッチの効果が表れているのを確認後、効果が切れた後の状況も表現している。その後の三人娘にマッチを使った後の報復の伏線。×××を使わずにカットバックで時間経過を表現してと指導されるけど、ただカットバックするのではなくラウンドキャラクターを表現したりとか、シャレードやモンタージュを使ってみるなど意味のあるシーンにした方が面白いと思う。
　３．説明の短縮
愛子に「二人きりで話がしたい、屋上の出口前の踊り場に付いてきてほしい」という面倒くさいセリフをカット。ChatGPTでシーンのシナリオ化をしたとき、美味い具合に短縮していたので採用。
　４．状況から反転結果
新納は無理だけどと言った愛子が、マッチの効果で好きと言う。ツンデレの言葉は【セリフは嘘つき】。愛子のセリフは書いてて楽しかった。
　５．時間と説明の短縮
約１０分の時間短縮、新納に告白した後の愛子の表情やセリフ、１０分後の我に返った後の報復などインコの報復シーンの伏線を愛子で回収。
　６．状況から結果
３～５の状況から美奈にも同じことをしたことを示唆。
　７．状況から結果
３～５の状況から真由紀にも同じことをしたことを示唆。ヤンデレのセリフはChatGPTにヤンデレの告白シーン４０個あげてと書き込んだ結果から良さそうなものを加工しました。
当初は５人くらいいろんなキャラクターで次々にカットバックを入れて告白させていくカットバックドミノ倒しを考えていたのですが枚数の制限でカット。３人くらいで間延びしなくてちょうどよかったと思う。
　８．状況から結果
６～７の状況から報復でズタぼろになった。相当報復がひどかったのを想像させる。
　９．状況から時間経過そして結果
明日香にマッチの効果が効いていないのかインコでマッチを試した後、カットバックで時間経過合わせて明日香が魔法使いであり、自分の気持ちをそれとなく知ってもらいたい明日香の計画が明かされる。ただ好きになるマッチだと新納に彼女ができてしまうので苦肉の策で１０分後に効果が切れるように作ったという設定。その後インコにマッチの効果が表れているのを確認後、もしかして明日香は自分のことを好きなのではと気づいた新納の表情で主人公の変化を表現。

一幕(１シーン)で張り手型の導入
二幕(2シーン)で異次元の世界へ(家と外)
三幕(１シーン)で問題解決

柱の数はちょっと多すぎなので映像にするとバタバタしすぎかも？

女性陣の属性
明日香　クーデレ
愛子　ツンデレ
美奈　あざとい系
真由紀　ヤンデレ