帰り道冒険譚

石を蹴って帰る

それはもう毎日

小学生のときの帰り道。


数多くの石の中から

その石を選ぶ。

凄いことなんだぞ・・

その石を見つめながら

選ばれし勇者に語り掛ける王様のように

大奥の中から殿様に選ばれた今夜の相手のように

お前は特別だと石を褒める。


そして蹴りだす。

帰り道がキックオフを告げる。



学校からの帰り道でまず最初の難関

校門の段差。



下りのため

前にいる人の頭に当たらないように注意して蹴る

靴のインステップを駆使しながら丁寧に。

ここで草むらや花壇に入ったら死亡。

でも大体ここはクリアする。

ここで死んだらマリオの一面の最初の

クリボーで死んでるのと一緒。

そんなの男として恥だ。


なんなく校門を出る。

(ここからが冒険の始まりよ…)


校門を出たら俺の帰り道は大きい道ではなく

狭い道。

ここをキャプテン翼少年時代の南葛屈指のドリブラー

滝一(はじめ)ばりに

どけどけどけ!!!

(大概誰もいない)

狭い道は両サイドブロック塀。

そこに石が当たりまくり前にすすんで行く。


時々蹴りすぎて

前に高学年がいたりするから要注意。

石が当たりでもしたら本当の死亡が待つ

年上を見つけたら去るまで

ハーフタイム。

ポカリの代わりに花の蜜でも吸ってよう。


さぁ。高学年がさった。

試合再開じゃ!


今度は広い道。

側溝に落ちないように丁寧に。

でかい道は広いからロングキックで距離を稼ぎたい

しかしロングキックはリスクが大きい。

俺の名もなき靴では

(ホームセンターで買った千円の靴)

コントロールが難しい。

ロングキックをやりたくなるが

石を短く蹴りながら距離を刻む。

意外とここで石が死ぬことが多い。

我慢ができなくてロングキックで側溝に落ちる。


我慢だ。

ここは、、我慢だ!


やっとの思いでジレンマ通り

広い道を抜けて次の角を曲がる。



今度は

駄菓子屋がある人通りが多い難所へと突入。


ここも死亡率があがる。

なぜなら同級生が駄菓子を買いに来てて

石を蹴ってるのを見つかって

「なにやってるの?」

爆裂辱めを食らって

石を蹴ることをやめてしまうからだ。

つまり自殺だ。

ここは自殺の名所だ。

何個の石たちがここで命を捨てたか…

(俺が捨てたんだが…)



よかった。時間がずれてた。

誰もいない。

そこもクリアー。


ふー…

精神的に一番キツイ所を超えたら

次は最大にして最難関、

畑のあぜ道だ。








…ふー

よし!

俺は覚悟を決めて蹴りだす。

「ぼちゃん」

ドブに落ちた。

あぜ道は複雑で

最初の蹴りで突き出た土の塊にぶつかって

バウンドしてドブにドボン。

そして初代は死んだ。

石壱号は死んだ。

サヨナラ壱号・・・

ありがとう壱号!!!!





そしてその辺の石を拾って

「お前を弐号に任命する!

これは凄いことなんだぞ!」


と勝手に盛り上がり弐号とともに

また冒険へと戻っていく。


「ドボン」


弐号は死んだ。

任命されてすぐ死んだ。

さっきの土の塊を意識しすぎた。

丁寧に蹴ったのがあだになってスピンしてドボン



そして…参号。

もう参号からはさっさと蹴りだす。

もうどうでもいいと蹴りだす。


小学生のある一日の帰り道。

なぜか鮮明に覚えてるこの冒険譚。

五号で家にたどり着いて

ゴールした瞬間、その五号もドブに蹴った。

全員死亡かよ!



※サッカーなったり死んだりマリオ出てきたり

アホの小学生なんでご理解くださいませ




子供のころ

なんで帰り道は楽しかったのか。

そして

大人になっても帰り道は楽しい。

楽しい。

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