行ったことないハワイ
自己紹介もままならないままに、行ったことのないハワイに思いを馳せている
絵に書いたような南国
観光地化して彩度が上がりすぎた景色が意味もなくがっかり感をもたらす
照りつける日差しは一般人の僕のスポットライト
この地に身を置く間だけ、自分はとても恵まれていると思わせてくれる
青く透き通る海をみて愛する嫁と
伊豆よりきれいだね
なんて身の丈にあった感想をいって笑ってみたりする
着慣れないアロハシャツに袖を通し、食べたことないようなステーキをほおばる
みたことないような生クリームの山にむしゃぶりついて、信じられないくらいきれいな夕焼け
帰りの飛行機では、いつかアナザー・スカイに出演したらハワイってことにしようとか考えたり
現実ではせいぜいこうだろう
浮足立って着陸した先の景色は、極彩色の異国情緒
求めていたハワイがそこにある
ジリジリと肌を焼く日差しに、はじめはノリノリだった嫁も日焼けが気になりだした頃にはいらついている
せっかくハワイまで来たのに、日差しに文句言うなよ…と僕も口数が減る
青く透き通った海を見て、聞こえるか聞こえないかの声できれいとつぶやいた嫁はそれ以上の感想は控え、やけに派手な水着に着替えてとりあえず露出だけする
映えそうな写真が撮れたらあれよあれよと1人足早に好きなところへ行ってしまうだろう
着慣れないアロハシャツに文句を言い、ステーキは高いからとチキンを頬張り、
生クリームあんまり好きじゃないなんて言われて、夕焼けを見ながらあーお酒飲めたらいいのになんて言われる
アナザー・スカイはやっぱりフィンランドだなぁなんて帰りの飛行機で思って、北極圏の淡い思い出に心を抉られる。
ただ、期待はしてるんだ
ずっと期待している人生
期待はFX
フルレバレッジで挑むぜ