私は“エンターテイナー”

もう自分のことは好きではないことは分かっているから逆に何でもできるなって感じ。


彼氏ともちゃんと別れたし、そのことを彼にも伝えた。
そして私は4月まで自分を見つめ直して1人で生きていくことにしたので、思ったよりかはスッキリとした面持ちではある。

彼氏と別れたとき、何ヶ月かに1回近況報告することになった。
完全に連絡を絶ったわけではない優しい別れにびっくりした。
そういう別れもあるのかと思った。
同時に、こうやって彼氏と元彼の境界線がボヤけて色々なトラブルに発展していくのだろうかとも感じた。
彼氏は(便宜上彼氏と呼ばせてもらう)私が近況報告するくらいでそこまで嫌いになったわけではないほどの別れだと分かった瞬間に口調が明るくなったように感じた。
私は「東京に来たら、東京に住むことになったら教えてほしい」と伝えた。
彼は「もちろんそうする!」と答えた。
とはいえ彼は良い人だから、すぐに彼女を見つけられると思う。
私に構わず生きていってほしいと心から願っている。

もう1人の彼には、こっぴどく振られたものの私も私で隠し事をしていて、意図せず浮気相手にしてしまったことを謝った。彼も表面上では納得して、何故か向こうも謝罪してくれて、また(多分私の時間に)余裕があったらラーメンを食べに行こうということになった。
大人はみんなこうやってゆるく関係を繋いでいくのだろうか。

もう1人の彼に入れ込んでから半年以上が経った。
未だに依存が抜け切ってないせいか、疲れるとあの日のキスやハグを思い出してしまう。今でももう一度家に来てほしいと思う。

彼と2人で飲んだ後、2軒目を探そうとしたがなかったので解散した。
解散後に「今度は○○(最寄り駅)きてね」とLINEを送ると、彼からすぐに「今から行こうか?」と返信がきた。私は迷わず「じゃあ来て!」と送った。ずっと一緒にいたくてたまらなかった。

彼をベッドに上げる前、ベッドの縁にかけた自分の手が彼の手に一瞬触れた。そのあと彼がしっかりと私の手を握ったその時に、
8月の飲み会の二次会で一瞬私の脚に触れたのも、飲み会の次の日にリモートワークにしていたのも、飲み会の直後に送ったLINEの返信がとても早かったのも、密かに泊まるための着替えを持ち歩いていたことも全部私としたいと思っていたからなんだと全てを悟った。

私もずっとしたかった。

「今の2人が」同じ気持ちだと悟ってからはもう歯止めが効かなくなった。手を握った。ベッドに彼の熱い身体が入ってきた。しばらく手を握ったり脚を触れたりした。彼が横を向いてきたのでハグをした。2人で背中を弄った。そっとキスをしたら舌を絡めてきて、深いキスになった。絡み合った。彼の匂いで脳が蕩けそうになった。首筋にキスした。眠れなかった。眠りたくもなかった。自分より激しい心臓の鼓動を聞いて、彼も一緒に興奮していることを確認した。夜が明けるまで夢中でキスした。でも服は脱げなかったし最後まではできなかった。

雨の日の外を確認して、「ああ、会社に行きたくない」と呟いたら、彼がまた後ろから私を抱きしめてきて、またキスをした。

朝の8時のアラームが鳴ったら、彼は一瞬で冷静になった。
彼が本当はどう思っているのか、私は薄々悟り始めた。

朝食として、牛乳に浸したフルーツグラノーラと、黒部ダムで買ったお土産のスプーンを彼に渡した。「スコップだ」彼は言った。少し緊張が解れたようだった。

私もフルーツグラノーラを食べて、台所に食器を置いた。彼が食器を洗ってくれた。前回も洗ってくれたから、2回目だ。皿洗いがこの世の家事でいちばん嫌い、と言ったら「えっ、そうなんだ?」と新鮮な驚きを口にした。今思えば今後もずっと私の家で皿洗いする気がないのだから、驚く必要もなかったのに。

彼だけ家を先に出た。去り際に来週はいつ暇なのか尋ねると、水曜日以外と答えた。私は水曜日だけが暇だったのでその場は保留になった。彼はまた後でと部屋を出た。そこでだんだん私も冷静になった。

1人になった部屋でこのままでいいのかふと考えた。
なるべく早めにかたをつけようと決心して「聞きたいことがあるから一緒に帰ろう」とLINEを送った。しばらくして、「わかった」とだけ、返信がきた。

そして、冒頭の私に至る。

MBTI診断で、私はいつも“エンターテイナー”が出る。
世間一般的にエンターテイナー型は明るくて無邪気な性格だが、私は内気で引っ込み思案だ。診断は間違っているのかもしれないが、今の私は紛れもなくエンターテイナーだった。

ドラマチックで起伏の激しい1週間だった。人を裏切り、運命に踊らされ、彼にも弄ばれた。黒歴史ではあるが、これくらい激しい日々も何故か自分らしい日々に思える。
そして結局、積み上げたものを全部失う。
これも私らしい。

この日々は胸にしまって、1人で生きていけるかどうかを確認したら、次に進もう。
人生短いけど、まだ結構あるし。

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