スイス旅行、グリンテルワルトⅡ

ユースホステルには新婚旅行中で先輩のO夫妻がいた。

 O先輩の新妻のⅬさんと一緒にパラグライダーのタンデムフライトに行った。

 他のメンバーもスタート地点に集まった。

 私から出立した。スタート地点はガスっていた。操縦してくれる現地の方の判断でガスの中テイクオフした。

 私達が飛び立った時まるで劇場のスモークカーテンが開かれライブの幕開けのようだったそうだ。

 Cさんが「あの映像見せたかったなぁ。」と教えてくれた。

 アイガー、メンヒ、ユングフラウ、スイスの美しい山並みを眺めているとだんだん悲しくなってきた。すると涙が頬をつたい、声を出して泣いた。いつしか号泣になっていた。

 「お兄ちゃん、どこにいるの。。」

 操縦してくれた方は沈着冷静に着地地点に舞い降りてくれた。ハーネスを外すとトボトボと柵の端まで歩き、泣き続けた。

 Ⅿさんもその後着地した。私の飛行風景を写真に収めてくれた。私がみんなのところに戻るまでそっとしておいてくれた。

 Ⅿさんは涙を拭いて笑顔で戻った私に「気持ち悪くなったの?」と尋ねた。私は首を振った。

 Lさんと下山し、途中で座り込んで話を聞いてもらった。
話題はメッセージのことや兄がもうすぐ生まれ変わってくるといったことだった。

 その日の晩、Lさんと歩いてユースホステルに戻った。
「もう、あんまり、シャーリーマクレーンのことは考えない方がいい。それからKさんに言って薬をもらって眠った方がいい。」

 Lさんに眠っていないことは話していなかった。

 「じゃあ、今までのこと忘れた方がいいんですか。」

 「その方がいいかもしれない。」

 混乱した。自分の考えが急に変化したことは分かっていたが、兄のことは急に思ったことではなかった。でもなんだか恐ろしくなってLさんの指示に従った。

 夕食の後、Ⅿさんに
「ちょっと疲れてたので寝ます。」

 その日は眠ることだけを考えて久しぶりにぐっすり眠った。朝になりLさんに報告した。

 「眠れたならいいと思うよ。」

 世界が変化しているように錯覚していた。何か恐ろしいことが起こりそうな気がしていた。

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