父
父の人生は病気との闘いだった。
私はずっとそう思っていた。
しかし、父の闘いはそれだけでは無かった。父は退職して2年足らずでこの世を去った。
その時、人生のあっけなさのようなものを感じたが、次第に少しずつ見えてきた。
父の闘いは仕事を辞めないで職場に行き続けることだった。
私は自分が病気になって初めて、それがどれほど困難であるかを
思い知った。
そんなことに気づく前の私は父に辛らつな言葉を浴びせていた。
父は自分の体調の苦しみについての訴えや愚痴は私には一切言わず
「お父さんはすごいんだ」と言い返してきた。
父は私達家族を支える為に仕事を続け、退職と同時に力尽きた。
体調不良で何度も転職を繰り返した私には父の苦しみや悲しみや
切なさがようやく理解できた。
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