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ローファイヒップホップの作り方

以前ローファイヒップホップの構成要素について記事にしたが、その制作方法について、しーたけびーつ DTM Channel様が秀逸な動画を投稿されていたのでまとめてみようと思う(参照元は末尾に記載)。このような制作プロセスを公開している動画は日本では貴重なので、制作する側としては大変ありがたい。

動画によると、ローファイヒップホップの制作において考える要素は「コード」「リード」「ベース」「ドラム」「ローファイ化」「構成」の計6つ。順に見ていこう。

コード

元々90年代のサンプリングヒップホップではジャズの音源をネタとしてサンプリングしていたので、打ち込む際もジャズっぽいコードがよい。動画では「II - V- I」のコード進行に「VI7」を足した循環コードが使用されている。

コードにおけるポイントは以下の2点だ。

①ジャズ風なコード進行:「II - V- I - (VI)」など
②7thノートやテンションノートの使用:コードの響きを洗練させる

リード

リードも2つのポイントがある。音色とグレースノートの活用だ。

①ジャズっぽい音色:ピアノ、エレピ、ギター、サックス
②グレースノート(装飾音)の追加:(ダブル)クロマチックアプローチなど

ベース

ジャズでよく使用されるウッドベース、エレキベースのほか、ローファイヒップホップではシンセベースもよく使用される。こちらもポイントは2つ。

①ゴーストノートの追加
②カウンタメロディー

ゴーストノートの追加

グレースノートとゴーストノートの違いは、グレースノートがメロディーを強化する手法であるのに対し、ゴーストノートはリズムを強化する(グルーヴを出してノリをよくするための)手法だという点だ。

カウンタメロディー

リードのメロディーに対して合いの手を入れるような、対位的な旋律にする。各小節、瞬間において、「主役の楽器が何か」を明確にする。

ドラム

ドラムのポイントは以下の3つだ。Logicにはバージョン10.5からAbelton LiveのSimplerによく似た「Quick Sampler」という機能が搭載されたので、Logicユーザーならそちらの利用がお勧めされている。ドラムにおいては、いかにリズムをヒューマナイズするかが重要。

①Boom Bopな音色の使用
②タイミングをずらす
③Kickのシンコペート

Boom Bopな音色の使用

90sテイストを出すためBoom Bopの音色を使う。ただTrap系の軽めの音色なども使われている楽曲もあるので、基本はBoom Bopだが曲調に合わせて決めればOKだろう。

タイミングをずらす

クオンタイズをかけてきっちりグリッドに合わせると機械的に(ある意味ハイファイに)なってしまうので、タイミングとベロシティーは手打ちするのがベスト。「微妙なズレ」というのが生っぽく聴かせる上では重要だということだ。

Kickのシンコペート

Kickをイーブンではなく跳ねさせてノリやグルーヴ感を出す。これを簡単におこなうには、グリッドを3連符や6連符など奇数音符にするのがよい。例えば6連符はLogicのグリッドを「24」にすると1拍が6分割されるので(6x4拍で24)試してみよう。ちなみにグリッドはディスプレイを「カスタム」にすれば設定可能。

(補足)Logicの機能「Quick Sampler」について

Logicのプロジェクトにサンプル素材をドラッグ&ドロップする際、便利な機能がある。「Quick Sampler」だ。

サンプルをLogicのトラックヘッダ領域にドラッグすると、以下のようにQuick Sampler、Drum Machine Designer、Alchemyのいずれかのプラグインにサンプルを読み込むようメニューが表示される。Quick Samplerには「Original」と「Optimized」の2種類があるが、「Optimized」はサンプルのピッチなども自動で解析されるため便利かもしれない。

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なお「Quick Sampler」については以下の公式サイトで詳しく解説されている。

ローファイ化

ローファイ化でのポイントは以下の3つだ。ツールとサンプル素材を使用して、楽曲に味付けしていく感じ。

①プラグインでローファイ感を追加
②サイドチェインの適用
③ノイズ音・環境音の追加

プラグインでローファイ感を追加

iZotopeのVinylが推奨されている。無料のプラグインだなので、誰でも導入しやすいだろう。有料のものだと「RC-20 RETRO COLOR」動画ではピアノとリードに挿したとのことなので、基本は上モノに挿すということでよいと思われる。(逆にいうとベースやドラムには不要)

「Warp(バージョンによってはWARP DEPTH)」は特に利用価値が高いパラメーターだ。レコードの回転数を下げた効果を得ることができる。ノイズなどもあるが、無音時にも音が鳴ってしまう仕様のようなので、場合によっては避けた方が無難。

サイドチェインの適用

かける対象はドラム以外の楽器、という認識でよいだろう。動画ではピアノ、リード、ベースにかけている。

ノイズ音・環境音の追加

動画では7トラック分のノイズ音や環境音を追加しているようだ。レコードノイズ、Vox(人の声)、雨の音など。

構成

以上のプロセスを経れば1ループが完成しているはずなので、抜き差しで楽曲を構成していこう。ポイントは、「イントロ」「アウトロ」「中間の展開を作りたいところ」ではドラムやベースを抜くと良いという点。覚えておこう。

まとめ

今回参照した動画は、ローファイヒップホップを作成する上でのポイントがうまくまとめられている。改めてポイントだけを抜き出すと、次のように13個のポイントがあった。

コード
①ジャズ風なコード進行:「II - V- I - (VI)」など
②7thノートやテンションノートの使用:コードの響きを洗練させる

リード
①ジャズっぽい音色:ピアノ、エレピ、ギター、サックス
②グレースノート(装飾音)の追加:(ダブル)クロマチックアプローチなど

ベース
①ゴーストノートの追加
②カウンタメロディー

ドラム
①Boom Bopな音色の使用
②タイミングをずらす
③Kickのシンコペート

ローファイ化
①プラグインでローファイ感を追加
②サイドチェインの適用
③ノイズ音・環境音の追加

構成
「イントロ」「アウトロ」「中間の展開部分」ではドラムやベースを抜く

傾向としては、ジャズ/ヒップホップなどジャンルを意識した音作り、リズムのヒューマナイズ、ツールやサンプルを活用したローファイ化、の3点に集約できるかもしれない。

ローファイヒップホップについては他にもチュートリアル動画がいくつか上がっているようなので、機会があればそちらも記事にしていきたいと思う。

参照元はコチラ:



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