悩めるDTMerのためのメロディー作曲入門②歌メロの作成(「ペンタトニック」編)
前回に続いて、歌メロ作成の話。メロディー作りがうまくいかないときは「制限する」ことが重要だが、ここではその制限をペンタトニックに求めるアプローチを紹介したい。
おそらく少なくない人がペンタトニックでメロディーを作ろうとした経験がお有りだと思うのだが、実はここに落とし穴がある。
そう、「音5つ、意外と多くね?」問題だ。
ペンタトニックを使いアドリブで作曲しようにも、意外と自由度が高くうまくメロディーに落とし込めないという状態。でも、メロディーの多くはペンタトニックがベースになっていたりするので、できるはずなのになぜかできない、というもどかしいペンタトニックのジレンマに陥ってしまう。。
そこでまた活躍するのが、「制限」だ。ここでは、Reo Music Channel様の「【作曲講座①】誰でも上手に曲を作れる方法【メロディ編】」により、このスケールを使いこなせるようになる方法を見ていきたいと思う。
こちらの動画、日本語の作曲チュートリアル動画の最高傑作の1つといっても過言ではないので、まだの方はぜひご一聴をおすすめしておきたい。
作曲の手順とは
さて、皆さんは作曲の手順をどう考えているだろうか?ここでは、その流れを「メロディー」→「コード」→「伴奏」→「アレンジ」と定義しよう。つまり以下のようになる。
つまり、作曲において最初に作るべきは「メロディー」であるということ。そしてメロディー作りにおいてポイントとなるのは①音階②リズム③聴きやすさ、の3点だ。
音階
最初は音階(スケール)について。2音で作るときと似た考え方で、12音を使うとややこしくなるため、まずはペンタトニックで制限をかける。
①ペンタトニックに絞る
メロディーを作ろうとするとき、多くの人はダイアトニックスケール(いわゆる「ドレミファソラシド」)をスタートポイントにすると思うが、より簡単にメロディーを作るならスケールはペンタトニックスケールを使うほうがよい。
②「順次進行」に絞る
ただ、ペンタトニックスケールに絞ったからといって、任意の音にやみくもに飛んでしまうと、やはり不自然なフレージングになってしまう。
そこで、弾いた音の隣の音にしか移動してはいけないという制限(「順次進行」、ステップともいう)を新たに加えると、多少メロディーっぽさが生まれる。
③「跳躍進行」を限定的に取り入れる
「順次進行」で安定はしたもの、このままだと決まった間隔でスケールを上下しているだけなので、「「跳躍進行」、ジャンプともいう」も取り入れてみよう。
ただし、こちらもやみくもに音を飛ばすと不自然になるので、飛んでよいのはコードトーンからコードトーンの跳躍(「ドミソ」から「ドミソ」)のみを可とする。言い換えると、ペンタトニックの場合、「3度↔5度(ミソ)」の跳躍はすでにスケール内に含まれているため、「1度↔5度(ドソ)」、「1度↔3度(ドミ)」、あるいはオクターブ跳躍(ドド、ミミ、ソソ)などの進行が新たに追加されることになる。
④「ファ」と「シ」を追加する
前の投稿「2音で作る編」でもメロディーをビルドアップさせるために登場した「ファ」。ここではさらに「シ」が加わる。
注意すべきは、「ファ」と「シ」はクセが強いため、無作為に入れると相性が合わず不自然になってしまうことがあるということ。そのため、以下の点を心に留めておこう。
つまり「ファ」や「シ」に「入るときも、出ていくときも」、必ず順次進行で移動するということだ。
⑤黒鍵の音を追加する
Cのキーでいう黒鍵の音、つまりノンコードトーンを無作為に追加すると、アボイドノートで不協音になってしまう。だが、装飾音として音のすぐ隣において半音でアプローチするとオシャレなメロディーに早変わり。
つまりメインのメロディーというより、ニュアンスを追加する意図で入れるとこなれた感じが出てよい。
⑥コードトーンでフレーズ終わりを安定させる
さて、ここまででメロディーがある程度出来上がってきたと思うが、ここではフレーズ単位での音の処理をおこなう。フレーズの終わりに音符が散らかっていると聴感上ゴチャゴチャして聞こえるので、「ド」「ミ」「ソ」のいずれかのコードトーンを(2分音符などの)白玉で伸ばして終わらせることで、きれいに締めることができるのだ。
リズム
音をフライングさせる
ではここまでのメロディー作曲でできた音に対して、リズムの工夫を加えてみよう。音を少し早めにフライングぎみにすると、単調なリズムにダイナミクスが生じ、グッと歌メロっぽいリズムになる。
常に小節や拍の頭から音が鳴ると単調に聴こえてしまうもの。そのため、一部の音を前倒しすることで、メロディーにシンコペーションなどのグルーブ感が生まれ、より自然に聴こえるようになるのだ。
一度作って「なんだかパッとしないメロディーだなあ」と思いボツにしたくなるようなメロディーも、この法則を適用すれば見違えるかも?問題はピッチの動きではなく、リズムにあるかもしれない。ぜひトライしてみよう。
メロディーのはじめに助走を入れる
また、メロディーに助走を入れることでメロディーを生き生きと聞かせることもできる。やり方としては、フレーズのド頭に助走を入れてもいいし、フレーズの途中でも、フレーズの一部を速めることで助走を作ることもできる。
聴きやすさ
以上でだいぶ良い感じのメロディーになってきたのではないだろうか?さらにブラッシュアップするため、以下についてもチェックしておこう。
ただし、例外はあるのであくまで原則だということをお忘れなく。
失敗例①同じ音が多すぎる
メロディー内で同じ音が多いと退屈で、盛り上がりに欠けてしまう。
失敗例②同じリズムが続きすぎる
フレーズの最初から最後まで同じリズムが続きすぎると平坦に聴こえてしまう。これを回避するには、フレーズ内で速い(音価が短い)部分と、ゆっくり(音価が長い)部分を作り、メリハリをつけてあげると良い。
失敗例③リズムがバラバラすぎる
たとえ速い遅いの変化があっても、リズムにまったく統一感がないと、メロディーに安定感がなくなってしまう。つまり、②の反対だ。
この場合は、リズムを反復することで安定感が生まれ、覚えやすいメロディーになる。なお、このような反復を特に「モチーフ」と呼ぶが、モチーフについては重要な概念のため別の記事であらためて紹介する予定だ。
失敗例④ブレスがない
音符を敷き詰めるようにフレージングしてしまう現象。ブレスをせずにずっと動いているような、落ち着きのなさを感じてしまう。
このような場合は、メロディー内の1フレーズごとに区切りをつけて、聴き手側も息継ぎができるメロディーにしてみよう。
失敗例⑤「ファ」と「シ」の配置不良
「ファ」と「シ」の入れどころが悪く、悪目立ちしてしまうパターン(中・上級者でも結構ありそう)。音階の④の項でも触れたように、あくまで隠し味として使いたいので、つながりをスムーズにするため、隣の音への移動で使うようにするのがポイントだ。前後どちらも必ず、というわけではないが、変だなと思ったらここを見直してみるとよいだろう。
他のスケールへの転用
ここまででペンタトニックスケールを使ったメロディーについて考えたわけだが、特にポップス以外の曲の場合、必ずしもイメージしたサウンドと合致しないこともある。
その場合は、イメージを表現できるスケールに差し替え、この方法を転用することもできなくはない。その場合は、対象のスケールの特徴的な音が度の音かをとらえ、その音をうまく活用するような配列にアレンジするとよいだろう。
とは言うものの、もちろん実際はそう単純にはいかないかもしれない。手詰まりになったときは、好きなアーティストで自分が表現したいイメージに近いことができている人を探し、その人のメロディーを研究すれば何かのヒントにはなるはずだ。
「2音」vs「ペンタトニック」
では、「2音で作る編」と今回の「ペンタトニック編」の比較してみると、作りやすく即戦力になるのは「2音」の方に軍配があがると感じた。イメージのない全くの白紙の状態から「ペンタトニック」で作ろうとすると、ところどころ不自然になってしまう箇所が発生しがちだからだ。
ただ、ブラッシュアップしていく方法としては「ペンタトニック」のこのアプローチは非常に優秀であるため、個人的には「2音」でイメージを作ってから「ペンタトニック」に移行して仕上げるワークフローがおすすめ。
まとめ
いかがだっただろうか?
今回紹介したペンタトニックのアプローチは、「自由にイメージを作っていく」アプローチというより、「なぜそれがダメなのかを明確にする」アプローチといってもよいかもしれない。ハマるメロディーを、消去法的に絞り込んでいくという感じだ。そのため、個人的にはなんとなくでも先にイメージを作って、そこからこのアプローチに進むことによって、より質の高いメロディーに仕上げることができるように思う。
皆さんにもこのアプローチを活用して最高のメロディーを作っていただければ幸いだ。
それでは、よいDTMライフを!