マスタリングに大活躍!チューブサチュレーター「Black Box HG-2MS」
マスタリングに入ったがどうも音にパンチがなかったり、存在感が希薄だったりした経験はないだろうか?
そんなときは音源にソフトな歪みを加えることで、音に太さや温かさを加えるサチュレーターの出番だ。サチュレーターにはいくつか種類があり、「テープ」や「真空管」、それに「トランジスタ」などの回路をシミュレートしたプラグインがあり、製品によって狙っているサチュレーション効果が異なる(以下を参照)。
その中で、今回は「真空管」をシミュレートしたPAから出ているBlack Box HG-2MS(MS対応版)を紹介したい。Black Box HG-2は実機で存在する同名の真空管(チューブ)ステレオプロセッサーをモデリングした、チューブサチュレーターだ。2mixは言うまでもなくベース、キック、ギター、ボーカルなど個別のトラックをブーストするのにも役に立つ。
概要
Black Box HG-2はキャラクターの異なる2本の真空管を使ってサチュレートするチューブサチュレータープラグインで、偶数倍音をコントロールする五極管と三次倍音をコントロールする三極管がそれぞれ搭載されている。これら2種類の真空管によって、アナログライクなサチュレーションをシミュレートできるのがこのプラグインの特徴と言えるだろう。
なお、偶数倍音と三次倍音を含む奇数倍音の違いについては、おなじみSleepfreaks様による以下の記事に詳しいので、ぜひ併せてご覧いただきたい。
Black Box HG-2MSでは、原音の「どの周波数帯域」に「どのくらいのサチュレーション」をかけるか、と言うサチュレーションの回路と、2つの真空管に関する真空管回路に切り分けて考えることができる。
つまり、原音は直列接続された2つの真空管を必ず通る設計になっており、それプラス、並列回路でサチュレーションをかけられると言う以下のような仕組みのようだ(あくまで想定なので間違ってたらご教授願います)。
では、実際に詳しくみていこう。
1:パラレルサチュレーション回路
サチュレーションモジュールのパラメーターは以下の通り。ここでは主に、サチュレーションの適用量(アマウント)と、サチュレーションを適用する周波数の設定(イコライジング)を行う。
In/Out
パラレルサチュレーションのイン/アウト(オン/オフ)の切り替え。
Saturation
パラレルサチュレーションのDry/Wet。サチュレーションに送る原音の量を 0~10 の値 で設定できる。
Solo
サチュレーションに送る量の原音をソロ再生する。
Filter Type
サチュレーションを適用する周波数をフィルターの種類から選択できる。ここで選択したフィルターの種類は、次に説明するサチュレーション周波数(Sat. Freq.)と連動するので注意しよう。
Saturation Frequency (Sat. Freq.)
Filter Typeで選択したフィルターで、実際にサチュレーションを適用する周波数帯域を設定する。範囲は20dB〜20KdB。
Q Factor / Slope Selector
こちらも選択したFilter Typeによって挙動が変わる、EQのQ幅やカットオフのスロープを決めるパラメーター。ハイパスとローパスでは要素が「スロープ」になり、バンドパスとバンドストップでは「Q」になる。また、Sat. Freq.同様、FLATモードでは無効になる設定。
2:真空管回路
PENTODE
五極管のゲイン。真空管ギターアンプのような温かみのある心地よいドライブ感を作る。PentodeとTriodeは直列配列になっているため、Pentodeのゲインを上げると、それに比例してTriodeの効きも強くなる。
TRIODE
三極管のゲイン。エッジの効いたきらびやかな歪みを作る。PentodeとTriodeは直列配列になっているため、TriodeのサウンドはPentodeのゲインに依存する。
Alt Tube
パラレルサチュレーション回路内には12AX7管が2セット用意されており、それら切り替えるスイッチ。デフォルトの管と比べ、スイッチオンしたバージョンの「alt」管の方がやや派手なサウンドになり、音とサチュレーションがよりワイドレンジになるのが特徴。ちなみに、このスイッチで切り替えるのはPentodeやTriode管ではなく、サチュレーション用の管のみなので注意しよう。
Air In
超高域をブーストする「エアー」リフト機能のオン/オフを切り替えるスイッチ。
Air Amount
超高域の10kHz付近をブーストし、サウンドにエアー感を付与する。
Output
プラグインから出るアウトプット。
ノイズに注意
Saturationノブをあげすぎると歪み過ぎてノイズが発生してしまうので注意しよう。あげていくと音にパンチや張りが出るのでついついあげすぎてしまいがちだが、ノイズが発生しないところで抑えておくのがよい。
まとめ
いかがだっただろうか?多少クセのある仕様で慣れないと分かりにくい部分もあるが、サウンドのまとまり感やブースト感は一級品なので、ぜひマスタリングや、個別のトラックに使用して実感してみてほしい。
では、良いDTMライフを!