「結局、アビガンはCOVID-19に効果があるのか?」
TONOZUKAです。
結局、アビガンはCOVID-19に効果があるのか?
以下引用
ファビピラビル(商品名アビガン)、シクレソニド(オルベスコ)といえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期によくコロナ病棟で処方されていた薬剤です。いずれに対しても、国内で観察研究が行われました。今回は、その中でもファビピラビルについて、現時点でどういったエビデンスが蓄積されているのかを紹介します。
なお、現在は中等症I以上への抗ウイルス薬としてはレムデシビル(ベクルリー)が用いられ、軽症例への吸入ステロイドについてはブデソニド(パルミコート他)が有効ではないか、と考えられています。
ファビピラビルについては、内服する錠剤数が多い点が懸念です(初日18錠、2日目以降8錠/日)。また、薬剤投与に関連する有害事象として、高尿酸血症が17.8%、肝機能障害が7.6%に見られます1)。実際にこれらの有害事象が発生して、管理にやや困った症例も経験しました。
レムデシビルが登場してからは、だいぶ鳴りを潜めてしまった感じですが、レムデシビルが使えないようなケースで、ちらほら処方されている光景もあったようです。
ちなみに、タイの国民医療保障事務局(NHSO)は、国内のCOVID-19患者の治療に用いるためファビピラビルを購入しています。ファビピラビルに対して一定の評価を持っている国もあるのが現状です。
第3相試験の結果が発表
ファビピラビルは内服ということもあり、基本的に酸素療法を要する患者さんでは投与しにくいことから、中等症Iに対する第3相ランダム化比較試験が行われていました。その結果がInfectious Diseases and Therapy誌に掲載されました2)。
中等症IのCOVID-19と診断された患者さんにおいて、発症(体温37.5℃以上を記録)してから10日以内に、プラセボ群またはファビピラビル(1日目に1800mgを1日2回、その後800mgを1日2回、最大13日間)投与群に1対2の割合でランダムに割り付けたものです。
主要評価項目は、体温、酸素飽和度、胸部画像所見の改善、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)PCR2回連続陰性が達成されるまでの期間の複合アウトカムでした。
156人のCOVID-19患者さんがランダム化されました。主要評価項目の中央値は、ファビピラビル投与群で11.9日(95%信頼区間[CI]10.0-13.1日)、プラセボ投与群で14.7日(95%CI 10.5-17.9日)と、有意差が観察されました(図1)(補正ハザード比1.59 [95%CI 1.02-2.48]、P=0.0136)。ただ、複合アウトカムであるというのは、やや気がかりです。
実際に、胸部画像所見が改善するまでの期間、SARS-CoV-2 PCR2回連続陰性を達成するまでの時間については有意差があったものの(それぞれP=0.0287、P=0.0405)、体温や酸素飽和度といった臨床的に有用な指標には有意差は付いていません(それぞれP=0.1760、P=0.5110)。
当初はSARS-CoV-2のPCR陰性確認が退院基準になっていましたが、現在は退院基準として用いることはありません(関連記事:現場から訴えたい、コロナ病床逼迫の真の原因)。
レムデシビルもそうなのですが、ファビピラビルも「すごいぜ!」という実感がある薬剤ではなく、臨床試験の蓄積によって国内外の指針がどう変わっていくのかを見るしかないということでしょう。少し話がそれますが、第5波のさなかにあるコロナ病棟にはCOVID-19ワクチンの接種者がほとんどいません。そういう意味では「COVID-19ワクチンは本当に効果的なんだろうな」という実感があります(もちろん、「ワクチンを接種した人としていない人で健康状態などに差がある」というバイアスも存在していると思いますが)。
ファビピラビルについては、今回ご紹介した論文と同じ雑誌に、先月、サウジアラビアの別の臨床試験(FACCT研究)が掲載されていました。こちらは中等症Iに加えて中等症IIも組み入れ基準となっています。標準治療と、ファビピラビル+ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)を比較したもので、現在、ヒドロキシクロロキンの有用性は否定されていますので、ファビピラビルに「すごいぜ!」という効果があれば……、と思ったのですが、臨床的改善までの期間に群間差は観察されませんでした(ハザード比0.845、95%CI 0.617-1.157、P=0.29)。
現状、中等症I以上に関しては、臨床的に実感できるほどの効果は示されていないのかなという印象ですが、現在、発症早期のCOVID-19患者さんを対象として企業治験が実施されています(jRCT2041210004)。主要評価項目は「ランダム化から28日目までに重症化した患者割合」ですから、恐らくその研究できちんとした結論が出るのではないかと思っています。
(参考文献)
1)藤田医科大学ファビピラビル観察研究事務局. ファビピラビル観察研究中間報告(第3報)(2021年2月28日現在)
2)Shinkai M, et al. Efficacy and Safety of Favipiravir in Moderate COVID-19 Pneumonia Patients without Oxygen Therapy: A Randomized, Phase III Clinical Trial. Infect Dis Ther. 2021 Aug 27;1-21.
3)Bosaeed M, et al. Favipiravir and Hydroxychloroquine Combination Therapy in Patients with Moderate to Severe COVID-19 (FACCT Trial): An Open-Label, Multicenter, Randomized, Controlled Trial. Infect Dis Ther . 2021 Jul 28;1-17.
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