見出し画像

なぜ育児放棄は無くならないのか? 『児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか』を読みました

 どうやったら、苦しんでいる家族を救えると思いますか?

#勉強記録

 今日の読書感想文はコチラの本です。

厚木男児遺体放置事件

父親は和室の掃き出し窓や引き戸のふすまを粘着テープで目張りをしていた。出勤中に男児が1人でアパートの外に出たことがあり、自由に出られないようにするためだった。

「このままでは死んでしまう」。父親が男児の生きている姿を最後に見た時には、自分で立ち上がったり、おにぎりやパンの袋を開けたりすることができないほど衰弱していた。か細い声で「パパ、パパ」と呼び続けていたが、「怖くなり、1時間もたたないうちに家を出た」。

約1週間後に帰宅した時にはすでに冷たくなっていた。その後は一度も、アパートに戻らなかった。男児は06年10月から翌07年1月ごろに死亡したとみられ、遺体が発見されるまでには7年以上がかかった。

5歳児を衰弱死させた父親の絶望的な「孤立」「助けを求めることを知らない」親たち

 この男児は一度、福祉と繋がっている。生前の早朝に、半袖に紙オムツの姿をし、裸足で歩きながら震えていたところを保護されている。その翌日に母親が引き取りに来たが、児童相談所は母子関係が良好である事などを理由に、迷子としてこの件を処理し、男児を母親に返している。しかしその日、母親は買い物に行くと言ってから、家には戻らなくなった。
 そこから、父親と男児の生活が始まったのである。
 父親はその後、キャバクラやホステスにハマり、ラブホテルに宿泊するようになる。もちろんその間、男児は自宅に放置される。
 1番甘えたい時期にほったらかされるのは、さぞかし辛かった事だろう。
 母親は母親で、ホストに熱中していた。

愛美佳は家出の後、夜の街にどっぷりとハマって生きていた。夢中になっていたのがホストクラブだ。

金のない時ですらホストクラブへ行ってツケで飲み回り、返済を求められると行方をくらます。ホストクラブの間で、彼女は「掛け飛び(料金踏み倒し)」の常習犯としてブラックリストに乗っていた。

店側はツケの回収のため、彼女が店に置いていった保険証もとに、夫の幸裕を割り出して職場に押しかけ数十万円を肩代わりさせていた。他にも、愛美佳は携帯電話の請求書を幸裕に押しつけて支払わせていたし、幸裕の名義でマンションを借りて家賃250万円を未払いのまま逃げたというから、自分が捨てた幸裕を利用していたと言わざるを得ない。

(中略)

「俺だけが裁かれるのはおかしいです。だって、理玖を捨てたのは愛美佳ですよね。俺は彼女の代わりに一人で面倒を見ていたんですよ。それなのにあいつは罰せられることなく、俺だけ裁かれる。そんなの間違っています!」

ゴミ部屋に閉じ込め…愛児の遺体を7年放置した父親の「言い分」

 父親は、証言台で発言を二転三転させた。家に週何回帰っていたのか、はっきり覚えていない。彼自身、記憶が曖昧になっていたのだ。
 私はこの点について、自分との共通点を感じた。複雑性PTSDの中には、解離性健忘という、記憶に蓋をする症状がある。

 私は虐待サバイバーでこの障害を持っており、幼少期の記憶が無い。しかも、新しい記憶が定着しにくい。いわゆる、「物忘れ」だ。
 この本にはこう書かれている。

虐待を受けた子どもたちは、記憶を司る海馬が小さくなったり、右脳と左脳を繋ぐ脳梁が薄くなったりすることがわかってきた。特定の年齢に虐待を受けると、その年齢に活発化するはずのニューロンの発達が阻害される。虐待を受けた子どもたちが、発達障害によく似た性質を身につけることは、広く知られるようになった。

同 P163

 もしかしたら彼も、同じような症状があったのかもしれない。

裁判で、記憶が曖昧な理由について、自分の母親が精神疾患を発症し、その母親の行動が嫌で、なんでも忘れるようにしてきたためと証言した。

『児童虐待から考える』P24

 しかし、精神科医によれば、「精神疾患には罹患していない」との事。しかし、軽度の精神遅滞ではあった。
 判決は殺人罪で懲役19年。殺人罪の有期刑は最高刑・20年なので、かなり重い刑である。

 こちらの記事でも扱っているので、興味のある方は閲読してほしい。

 関連記事はコチラ👇


いいなと思ったら応援しよう!