あなたは横山秀房を知っていますか?⑤
最近ではあまり聞かなくなった気もするが、格闘技の試合において、選手の名前がコールされるという事がある。
大体はその選手がピンチに陥った際、頑張れという応援の気持ちで名前をコールされる事が多い。
例えば「や・ま・だ!や・ま・だ!」という具合にだ。
このような声援コールを浴びるのは、応援されるに値する選手だと思う。
無名のアマチュアレベルで何の実績もない選手に向けられるものではない。
もし、そのようなコールが起こるとしたら、大げさかもしれないが、奇跡的な出来事といっても過言ではないだろう。
そんな小さな奇跡が、この眠らない街、新宿歌舞伎町の一角で、良く分からないマッチメイクの試合で起こる事になるとは、私は想像だにしていなかった。
2016年3月9日。
Fighting NEXUS Vol.5 新宿FACE大会。
タイガー”ザ・ビースト”ヤツイ vs 横山秀房。
謎のグアム出身ヘビー級選手。
と
青森が生んだ性欲の権化(無職※当時)。
という不可解過ぎるマッチメイクだが、秀房の奔放なキャラとTV出演の影響もあり、一部で話題になっており、私のような好き者たちも会場に足を運ぶ事態となった。
1Rは、打撃で押す秀房と組技で自分の展開を作ったヤツイ選手。
難しい所だが、ほぼドローといっていい内容だった。
2Rの内容で全てが決すると言っていい。
1Rのインターバルが終了する直前。
秀房の顔からやや疲労感が漂っているのが感じ取れた。
言っても喧嘩大好きアナルセックス大好きのおじさんだしな。
このラウンドで仕留められてしまうのかもしれない。
秀房もよく頑張ったよ。
と思った矢先。
2R開始のゴングと同時の飛びヒザ!
まさかの強襲!
これは本当に惜しい一発だった。
もう少し踏み込んでたらKOもあり得た一発だった。
続けざまに左のオープンブロー。
これもかわされてしまい、タックルで組み付かれるが、脇をすくって正しい対処。
テイクダウンを許さない秀房。
そのまま浴びせ倒しつつ、ヒザ!
しかし、これはグラウンド状態であったため、反則となってしまう。
当たりが弱かったせいか、減点にはならならず、口頭注意。
一旦ブレイクされる。
スタミナが心配されたので「秀ちゃん深呼吸しろ!深呼吸!今の内に休んどけ!」とアドバイス。
おそらく私の声は届いていたと思われる。
チンポジを直しながら深呼吸する秀房。
すぐに試合再開。
「池袋デッドボール!」
場内に響き渡る声で池袋の地雷風俗店の名をコールするつとむさん。
※秀房のお気に入り風俗店でもある。
秀房のパンチとヤツイ選手の蹴りが交錯する!
何だか格闘技の試合を見ているようだ。
「よしよし行け~!!」
ノリノリで声援を飛ばすつとむさん。
距離を詰めてテイクダウンを狙うかのような体勢から
バックを取ってコントロールする秀房。
まるで総合格闘技の試合を見ているかのようだ。
コーナーに詰めるが、向き直ったヤツイ選手は、近距離のボディアッパーで攻め立てる。
秀房は秀房で時折ヒザで反撃。
それは、まるで観る者にMMAの様相を呈しているかのように思わせる展開に感じられた。
距離が出来てからヤツイ選手はパンチでラッシュを掛ける。
秀房ピンチ!
パンチで反撃してから脇を指し頭を抱える秀房。
もしかしたらこの態勢が得意なのかもしれない。
テイクダウンを取れるチャンスがあったが、疲れからか諦めて逆にがぶられてヒザをもらう。
さらにパンチを浴びるが、応戦する秀房。
パンチの応酬の中、肘を立て、顔に押し付けながら前進!
そこからスタンドで肩固めクラッチという驚きのムーブを見せる!
そのまま浴びせ倒すようにテイクダウン!
さらに肩固めでフィニッシュを狙う秀房!
やや不格好な形ではあるが、体重をうまく使えばフィニッシュもあり得る状況!
「うおおおおおお~~!!!」←観客
「フルパワーフルパワー!!」←私
「行け!行け!行け!行け!!!」←つとむさん
まさかの展開にどよめく会場。
しかし、タップする様子は見られない。
極めるのが難しいと判断した私は、マウント奪取を指示(セコンドじゃないのにw)。
「秀ちゃん、右足で跨いでマウント取ってもいいぞ!」
聞こえたのか分からないが、マウントへ移行する秀房!
「そうそうそう!!」←私
「殴れ!殴れ!」←つとむさん
「秀ちゃん時間ないから殴れ!」←私
会場も格闘技っぽい展開で普通にヒートアップ!!
しかし、秀房は疲れが限界に近付いているのか、動きが鈍い。
エスケープを目論むヤツイ選手の動きに合わせてバックを取り、パウンドを落とす秀房。
「後頭部は注意しろよ!」
「足で相手の体を伸ばせ!」
観客である事を完全に忘れている私。
聞こえているのか分からないが、指示通りに動く秀房。
「成長してる!」←つとむさん
「試合中に成長してる!!」←つとむさん
「ぎゃははははは!」←私
つとむさんの声援で爆笑に包まれる会場。
秀房がグラウンドで優位な展開だったが、やはりグラウンドは、ヤツイ選手の方がアドバンテージがあり、エスケープされてしまう。
さらにアキレス腱固めで秀房は、またしてもピンチを迎えた!
「相手の左足を外せ!相手の左足を外せ!!」←私
ヤツイ選手はフルパワーで極めに行くが、フィニッシュには至らず、ここでゴング。
ヤツイ選手は自コーナーに戻ったが、秀房は消耗が激しかったのか、全く動けないw
「ひゃはははは!」←つとむさん
何故か笑い声がこだまする新宿FACE。
ゆっくりと起き上がる秀房。
まるで熱中症にかかったゴリラのようだ。
本当のセコンド(当日急遽セコンドを頼まれた選手。)が迎えに行くが、それでも起き上がる様子は見せない秀房。
立ち上がるどころか、倒れこむ秀房w
セコンドに起こされる秀房w
ヤツイ選手の左手を掴み上げて勝手にヤツイ選手の勝利を宣言する秀房w
※それはお前のする事じゃないw
疲れがピークに達している為、胸を張る事すら出来ない秀房w
普段追い込むような練習をしていないのだから、こうなってしまうのも無理もない。
むしろあの練習内容で5分2R戦い抜いた事が称賛に値すると思う。
秀房の身体からも、「これでやっと終わった。」という安堵感のような物が漂っていた。
そして、ジャッジの採点が読み上げられる。
「ジャッジ梅田、青ヤツイ!」
「ジャッジ小池、ドロー!」
「ジャッジ千田、ドロー!」
「1-0の為、これより延長戦に入ります!」
うなだれるように膝を着く秀房w
背中しか見えないので、その表情をうかがい知る事は出来なかったが、絶望的な表情であった事は想像に難くない。
「秀ちゃん頑張れ秀ちゃん頑張れ!ぎゃっはっはっはっは!」←つとむさん
「秀ちゃんがんばれ~www」←観客
大盛り上がりの場内。
秀房の地獄は、まだ終わらない。
つづく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?