だいすきを照れずに言えるほど大人にはなってない
「GW中に、お墓参りされると思うから、私、お花と野菜を
持って行ってあげようと思うの。」
ふ~~ん、と「よつばと」を読みながら
わたくしは返事をする。
母が、家庭菜園で育てた花と野菜を
友達に持っていくと言う。
「バスを降りたら、ちゃんと横断歩道で渡ってね。
焦らなくていいから、ゆっくり、休み休み行ってね。」
「はい。」
いつの間にか逆転している玄関での会話。
行ってきますと、杖をついて
母は出かけて行く。
さあ、これで帰って来るまで、わたくしは落ち着かない。
・・・・
・・・・
「ただいまあ~~~」
あ、お帰り~!!!
どうだった?と尋ねるわたくし。
友達には、無事、会えた??
「それがね、中ちゃんのお家の周り、ガラッと様変わりしててね!!
びっくりしたわ~~。
なんか、マンションとかビルとかいっぱい建ってて、判らんのよ~。
中ちゃんのお家に行く道、これだって思って行くんだけれど
なんか、段々不安になってきてねえ」
あらら。
「どうしよう
どうしよう
困ったわ~~って思っていたらね
バスでお母さんの前に降りたおじさんがね
ずっとお母さんの前を歩いて
家に一度は入ってらしたんだけれど
また出てきてくださってね~~
「どこかお探しですか」
って、聞いてくださったの。」
あら、優しい。
優しいね~~。
「ねえ~~!!優しいよね~~!!!
で、中さんのお宅を探しているんですけれどって言ったら
ああ、それだったらって
教えて下さって、で、やーっと辿り着いたのよ。」
ああ、それは良かった。
知らないおじさん、ほんっとにありがとうございます。
貴方の明日に幸あれ!!!
・・・・で、お母さん、誰に電話しようとしてるの。
「いや、永ちゃんや大田さんに
こんな親切な人がいるのよ~って報告しておこうと思って。」
ふふふふふ。そうですか。
「もしもし?永ちゃん??
お久し振り。ええ、ええ。もうねー、暑くてねー。
お元気でした??
そうそう、今日ね、中ちゃんの家に行こうとしたらねえ~~」
母の電話を聞きながら
わたくしは、日常の幸せを噛み締める。
「今日のご飯は、シュウマイにしたよ。」
「あ、美味しそうね~。
・・・あの、永ちゃんと大田さんにお母さん電話したでしょう?」
「うん。」
「その時、中ちゃんにお花と野菜を持っていったって話しをしたから
やっぱり、永ちゃんと大田さんも、自分がもらわないと
気分が悪いと思わない??」
「そ、そう?」
「・・・だから、お母さん、
永ちゃんと大田さんにも
お花と野菜、届けに行こうと思うんだけれど。」
「・・・まあ、行くなら気を付けて行ってください。」
「そう??」
「でも、道判ってる??
また優しいおじさんに出会えるかどうか、判らないよ??」
「・・・・あ、そうか~~~。」
悩んでいるその横顔見ながら
わたくしは、幸せを噛み締めていたりするのさ。