「あなたの好きなカードを捨ててください」
こんにちは。先日うっかり棚から落ちたカードディスプレイケースの角で混沌の黒魔術師のレリーフと私の心に凹み傷が出来ました、らせるです。
混沌の黒魔術師メインのデッキをプレマに並べて構築している最中でした。
幸い目立ちづらい星の位置である事と、自分の中での価値は一切変わる事がないので大丈夫です。大丈夫なんだから・・・ッ!
自分しか持っていない唯一無二のカードって事でいいじゃんと前向きになりまして、今回は遊戯王界隈でも恐らく唯一無二であり私のアイデンティティのひとつであるデッキ【現世冥界ヴァンパイア】の紹介です。
もう7年目くらいの付き合いになるデッキで、これ以上の作品をこれから先作れるとは思っていません。
このデッキには特別な「概念」が存在し、それを解説するのには私の感性や知識、文章力、そして時間が圧倒的に足りず、今まで中々記事にする事が出来ませんでした。
しかしながら今ではその正体をある程度明かせると思い記事にしました。詳しい話は後述します。
【現世冥界ヴァンパイア】
パッと見た感じアンデットと溟界を使ったハリラドンからの展開力からの高レベルシンクロを使ってビートダウンし、その裏でデッキデスするタイプのデッキに見えるかと思います。
違います。ヴァンパイアは自分の手は汚しません。
ヴァンパイアは下僕が吸血した相手を洗脳し、自分の下僕にします。
ヴァンパイアは不死であり、時間の概念が存在しません。相手が勝手に死ぬのを待つ事も出来れば、生かす事も出来ます。
そしてこのデッキはデッキ破壊するだけでもありません。破壊するのはその先にある「相手プレイヤーと愛用するデッキとの信頼関係」です。
果たしてあなたのデッキは都合の良い時に応えてくれるのでしょうか?
解説します。
遊戯王OCGのルール上におけるこのデッキの勝利パターンは3つです。
相手からの攻撃によって反射ダメージを与えてライフを0にする。
相手のデッキを0にする。
相手の精神力を0にする。
どういう事でしょうね。
①「吸血鬼の十字架(クロス・オブ・ヴァンパイア)」
守備表示の《魔王超龍ベエルゼウス》《ノーブル・ド・ノワール》《竜星の極み》を使い、相手のモンスター(特にリンクモンスター)から破壊されない守備4000に攻撃させます。
ベエルゼウスは相手のモンスターを吸血し攻撃力を0にする事が出来るので、延々と自傷行為を繰り返させる事が出来ます。
ノーブル・ド・ノワールは相手の攻撃対象を私が決めます。
私を介さずに勝手に死ぬ事は許されません。
ノーブル・ド・ノワールはたとえ完全効果耐性を持つモンスターであろうと攻撃対象を変えられます。全体攻撃可能のモンスターと《因幡之白兎》以外のモンスターならコントロール出来る強裁定を持っています。
ちなみに「吸血鬼の十字架」の由来はそれらが揃った時の盤面が十字架になる事から。
「吸血鬼の十字架」のサポートカード
《溟界の漠−フロギ》
相手のフィールドのモンスターを、それ以上の攻撃力を持つ墓地のモンスターと入れ替える効果を持ちます。ベエルゼウスの効果により攻撃力0にしたモンスターを、0以上の攻撃力を持つモンスターと入れ替え、次の吸血の対象にします。ライフ供給を行える他、相手の墓地からリンクモンスターを引っ張り出す事で竜星の極みによる強制戦闘を行わせる事が出来ます(リンクモンスターは守備表示が存在しない為、無条件で攻撃可能なモンスターである為)。
《アンクリボー》
突然沸いてくるノーブル・ド・ノワールであったりフロギであったりで事故を誘発させる。《混沌魔龍カオス・ルーラー》で加えるには最適なカード。
《壊星壊獣ジズキエル》&《刻剣の魔術師》
ベエルゼウスで3300のライフ供給した後、刻剣の魔術師による除外で攻撃力をリセットさせ次のターンまた3300回復が出来る(相手に送ったジズキエルはフィールドに戻ってくる際相手のフィールドに着地する)。
《おかしの家》
同じく、ベエルゼウスで回復し続ける装置。攻撃力1以上あれば元々の攻撃力分まるまる回復出来るので噛合いがいい。
《溟界の淵源》
破壊耐性持ち等の面倒なモンスターを溟界と共に引きずり込みます。
後述のデッキデスの説明にて再び記載します。
と、この様にコントロール奪取をせずに相手を操る事が出来ます。
リンクモンスターは殆どの場合リンクモンスターにしか変換する事が出来ないので、リンク召喚した形跡があれば洗脳出来ます。
リンク召喚しない相手の場合、守備表示で逃げるしか出来なくなるので、こちらの得意な持久戦に持ち込めます。
その上、こっちから戦闘を行わず、相手の盤面を殆ど触れない為、とっ散らかった展開盤面を整理出来ずに動きが止まる事が多いです。
相手はこの盤面を打開しようと焦る事がありますが、ベエルゼウスも打点4000あり、他のモンスターも狙おうと思えばビートダウンし切れる打点あるので、迂闊にリセット出来ない状態に出来ます。
ですが相手がヘイトを向けているこのデッキの目的はその盤面には存在しません。
高打点高展開力が何故守備表示で固めているのか。
表向きで使っている理由を述べると、「ベエルゼウスが居る限りこのカードでしか攻撃を行えずライフを削り切れなければワンショットで返される可能性が大きいから」「《ユニゾンビ》の効果を使ったターンアンデットでしか攻撃できないから」「《シャドウ・ヴァンパイア》の効果を使ったターン出したモンスターでしか攻撃出来ないから」と相手にはそう伝えています。
それらのデメリットによって相手は生かされていると感じ、そして気を許したタイミングでワンショットキル狙ってくると怯えているのが分かります。
②相手に選択肢を与えるデッキデス
となれば次は裏の目的、デッキデス。
本当の目的である相手とデッキとの信頼関係を破壊するの手前の段階です。
遊戯王を長年やっている相手だと、このデッキの勝ち筋がデッキデスやバーンだという事に早々に気付く事があります。少し違いますけど。
アンデット族には《精気を吸う骨塔》や《ネクロフェイス》など強力なデッキデスをするモンスターが存在しますが、採用をしていません。
見えるとこに来ればデッキデスである事がバレるからです。
そしてこのデッキにおけるデッキデスは一味違います。
《ヴァンパイア・グレイス》
グレイスには自己蘇生効果と宣言したカードの種類を相手のデッキから相手が選んで墓地に送る効果を併せ持ちます。
殆どの場合、相手はこの自己蘇生効果の強みに気を取られ、地味なデッキデス効果をオマケとして見ている事でしょう。
実はこのグレイスのデッキデス効果はとても強力です。
「相手が」
「自身の好きなデッキから」
「"好きな"カードを」
「選んで」
「捨てさせる」
ランダム性のあるデッキデスとは違い、相手の選択で捨てさせます。
名称ターン1ではないので何度も展開すればその数だけ相手に選択させる事が出来ます。最初はラッキーだと思うかもしれませんね。
なんと、この「"好きな"カード」はその序盤と終盤では解釈が変わります。
序盤の「好きなカード」とは、墓地にあった方が有利だったり、既に同名引いてあったり、もうドローしたくなかったり、相手に効かないと判断した「不要なカード」ですが、グレイスが何度も行ったこの選択の揺さぶりを繰り返した後の「好きなカード」はそのままの通り、思い入れや引きたかった勝ち筋等のカードになります。
効果を使ったのはこちらですが、選択したのはあくまでも相手です。
このデッキデスでは、落とせる枚数は少ないものの、罪の意識を植え付けるには適しており、取捨選択の中で自由を与える事で勝手に後悔の連続が襲って来る事でしょう。
これによってプレイヤーとデッキとの歪が生まれるので、後は弱みに浸け込むだけです。
あなたが選んだ、私は悪くない。
そして、極めつけは《現世と冥界の逆転》。
墓地とデッキをすべて入れ替えるカード。
相手が選んで捨てた愛着のないカード達がデッキとなり、相手に報復します。
引いても引いても、以前自身が捨てたカード。
またはこのゲーム中クロス・オブ・ヴァンパイアの盤面が越えられなかったカードであり、手の内を把握され切っているので勝ち目が途絶えている事もその頃には理解出来ているかと思います。
それでもサレンダーされない限り、こちらは手を緩めず繰り返し相手に選ばせ捨てさせます。存在しない一筋の希望を追い求め続けてもらいます。これも洗脳と呼ぶべきでしょうか。
ここまでいくと流石にプロレス越えて害悪プレイと言われても仕方がないですが、デッキを0枚まで削り切った後に、「あなたの好きなカード」をもう一度訊ねます。
墓地の《PSYフレームロード・Ω》の効果で自身と墓地のその好きなカードをデッキに戻し、再びグレイスでその種類を宣言し、「好きなカードを捨ててください」と言えば完全にメンタルを破壊出来ます。トラウマ間違いなし。
と長々記述した事で、なんとなく「彼」の存在が視える様になってきたかと思います。
「彼」は非常に残虐な心を持ち、かつ自分の死を恐れています。
かつて私はこのデッキを「悪役を演じるデュエル」と称してました。
演じる悪役とは、「彼」です。デッキという台本の中で生きています。
らせる自身がこのデッキに固執し、アイデンティティを探し続けたのは、「彼」の影響かもしれません。
そんな演者をも洗脳する大変危険なデッキの紹介でした。
ここからは採用理由と展開パターンです。読み飛ばしても大丈夫です。
ご拝読ありがとうございました。それでは。
採用理由
《ヴァンパイア・グレイス》
前述の通り。ライフ2000あれば比較的簡単に湧く。ランク6に繋げやすい。
《シャドウ・ヴァンパイア》
召喚すれば戦況・空気を一気に変えてしまう謂わばエースカード。
デッキ手札からグレイス、そして墓地からグレイス自己蘇生での展開で恐怖のデッキデスが始まる。
この効果で出したモンスターでしか殴れなくなるデメリットが大きいおかげで大体妨害飛んでこない。
《ヴァンパイアの使い魔》
主にシャドウのサーチに使う。溟界のリリースコスト等にもなる。
《ノーブル・ド・ノワール》
前述の通り。居るだけで強い。ベエルゼウス等の大型モンスターにヘイトが逸れ易いので後々取り返しのつかなくなる事が多い。
《不知火の隠者》
ユニゾンビとシノビネクロが対象。
《馬頭鬼》
言わずもがな。承影起動スイッチ。
《ユニゾンビ》
言わずもがな。攻撃出来ない口実。
《ファラオの化身》
連続シンクロ等をしたい時に。
《シノビネクロ》
カオスルーラーの除外コストなど。
《溟界の黄昏−カース》
相手のモンスターを効果無効で沸かしたり、ランク8作ったり、ナイア吊り上げたり出来る。
《溟界妃−アミュネシア》
盤面整理に使える。グレイスのデッキデスで爬虫類蘇生効果起動する。
《溟界の昏闇−アレート》
ランク8作ったり、馬頭鬼を除外から墓地に戻せる。
《溟界の滓−ヌル》
起点、キングレムリン作ってレプティレス・コアトルサーチしてハリファイバー作るなど。
《溟界の滓−ナイア》
溟界魔法加える他、ベエルゼウスを作る為の星4として使う。
《溟界の漠−フロギ》
前述の通り。手札の馬頭鬼等を切れるのは優秀。
《レプティレス・コアトル》
ハリファイバー作る仕事。
《闇竜星−ジョクト》
ボウテンコウから出す2チューナー。
幻獣機トークン+ボウテンコウでカオスルーラーを出して沸かす。
その後に5枚の墓地肥やし、レベル10シンクロを行う。
《幻獣機オライオン》
アウローラドンから沸かして幻獣機トークンとでボウテンコウを作る。
《ジェット・シンクロン》
ハリファイバーからアウローラドンに繋げる。
自己蘇生効果はあんまりしないが、手札を切れたり、溟界のリリースコストに出来る。
《アンクリボー》
前述の通り。突然湧くノーブル・ド・ノワール。
《ブラック・ガーデン》
ガーデン・ローズ・メイデンで加えられる。竜星の極み下で立たせて強い。
《溟界の淵源》
相手に破壊されると墓地の爬虫類族の数だけデッキデス出来る。
破壊される際に輪廻独断を発動して爬虫類宣言するとそのまま勝てる可能性ある。
ドーハ・スーラがあまりにもしつこい蘇生だった時に割ってくるかもしれない。
本当にデュエルツラかったら淵源割るといいよ。
《溟界の大蛟》
アレートのデメリットがキツい時とかに。
《スネーク・レイン》
必須。溟界さえ動いてくれれば何とか真血公ヴァンパイアやハリラドン展開、カオスルーラー等に出来る。
《異次元からの埋葬》
一生抱えていたい。
《死者蘇生》
汎用
《おろかな埋葬》
汎用
《一撃必殺!居合ドロー》
サイクルに。
《竜星の極み》
前述の通り。
《現世と冥界の逆転》
前述の通り。
展開例
スネーク・レインで多く落ちた溟界+ユニゾンビ
カースでナイア蘇生し大蛟サーチ、馬頭鬼落としたユニゾンビとカースでハリジェットラドン
アウローラドンと幻獣機トークンリリースでデッキからオライオン
幻獣機トークンとオライオンでボウテンコウ、竜星の極みサーチ
幻獣機トークン生成し幻獣機トークンとボウテンコウでカオス・ルーラー
デッキからジョクト沸かしながらカオスルーラーで5枚肥やし
ジョクトとカオス・ルーラーでバロネスか承影
馬頭鬼でユニゾンビ蘇生し、ユニゾンビと幻獣機トークンとナイアでベエルゼウス
ジェット・シンクロン自己蘇生、大蛟でアレートに変換、ナイアと馬頭鬼を墓地に戻し、カオス・ルーラー自己蘇生、アレートとカオス・ルーラーで真血公ヴァンパイア、4枚墓地肥やし
ここらの9枚ランダム墓地肥やしでノーブル・ド・ノワールが見えていれば湧ける。
あとはシャドウグレイスグレイスの展開などでデッキを破壊していく。
次のパックの新規アンデットも恐らく採用するかと思います。
終わり