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『雲の糸』稽古場日誌 final

お久しぶりです。
王様企画代表の菊地仁美です。

雲の糸、ご覧頂きありがとうございました。
終演から2週間が過ぎましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
嫌な思いをされていますか?前向きに生きれていますか?
何か心に残るものがあれば幸いです。

この「雲の糸」という作品は、色々とやらしい思惑もありつつ、強い主張を盛り込んで作りました。

主人公の沈波未知留という女性の人生を振り返る形で始まり、彼女が何故、ここでホームレスのように暮らしているのかを追っていく物語。


沈波未知留の語り



どんな影響を受けて、どんな考えで、「こう」なってしまったのか。その覚悟を、お客様には彼女の視点に入ってもらって追体験してもらう。
そんなお芝居でした。


辛く苦しい場面が多く、彼女に対して苛立ちにも似た思いを持つことが多かったと思います。
なんでこうしないんだ。そんなことするな。
そういう気持ちと隣り合わせに、自分にもこんなことがあった、と振り返る思いがあったはずです。

誰もが彼女に少し共感してしまうのは、その彼女の悩みは普遍的なものだから。 
辛くても生きていかなくてはいけなくて。
その生きるための指針はいつも頼りなくて。


下を向いていても生き続ける、それが彼女なりに出した結論なのではないでしょうか。

ラストシーン



会話劇というほど会話がなく、一方的な押し付け合いや思考の停止という表現が多く、
会話劇が見たかった
という声も毎度頂いています。


でもそこは、私なりの持論があって。

演劇っていうジャンルの、他の芸術作品にない強みはなんだろうかと。
音楽や、絵画や、映画や、写真や、詩や文芸にはない強みって。

よく言われるのは、想像力とか、役者の生の熱量とか。
それもそうだとは思うんですが。

特に箱の小さい小劇場でやる意味。
観に来て頂く意味はなんだろうか。

小劇場演劇は、時間の連続性から産まれる『沈黙』がよく映える芸術分野なのではないかと思っています。

黙りこくる人間の息遣い。

痛いほどに感じる、言葉にならない辛さ。

衣擦れの音ひとつ立てたくない緊張感。


そういったものを味わえる。
そんな風に思ってお芝居を作ってました。



次はいつやるのか、何やるのか、なんにも決めてません。
またうごきだしたら、何かお知らせしますね。


改めてになりますが、ご来場くださった皆さま、様々な相談にのってくださったウイングカップスタッフの皆さま、無茶な演出に最後まで付いてきてくれた役者スタッフのみんな、そしていつも応援してくださっている皆々様。
本当にありがとうございました。
また会える機会を。


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