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石巻ニューキネマパラダイス 第四回「街の灯はどこに」

「石巻の中央一丁目で、もう一度劇場文化の灯をともしたい」という思いで始まったシアター・キネマティカプロジェクトをご紹介する「石巻ニューキネマパラダイス」。先月からの一ヶ月間は、おもに自分たちで解体作業を行っていた。
 「Do It Yourself」(DIY)と言えば聞こえは良いけれど、その目的はシンプルに予算の節約。本プロジェクトは、クラウドファンディングや寄付金で募らせていただいた500万円ほどの資金と、自己負担金で進めているが、まだまだ圧倒的に資金が足りない。解体とインフラ整備、空調設備で資金の全てが無くなってしまう。そこに合わせて今後は、映画や演劇を行うための設備である音響機材、照明機材、映像機器、スクリーン、客席、平台、箱馬、防音・防熱対策、さらにはロビー&カフェ部分の内装や、飲食店の整備にと、この数倍以上の資金が必要となってくる。もちろん本来であれば人件費なども加わってくる。
 そこで、出来る所は少しでも自分たちで行い予算を削減しようと辿り着いた「Do It Yourself」だ。石巻には震災後、DIYで作られた拠点やお店が少なくない。それが得意な人や専門家も多い。そして成功事例も多いから、経験者たちにも協力を願い行っている。快く参加してくれる地域の仲間たちには頭が上がらない。
 そんな解体作業中の施設に12月、何組かのお客様が訪れた。まずはこの建物の持ち主の方。ご家族で立ち寄ってくれて、さまざまなご縁を紡いで素敵な施設になって行きますようにと、手作りのお守りまでいただいた。「この場所を活かしてくれるなら、思うようにやってください」と言ってくださる大家さんにも、ご親族の方にも、そして「通りを盛り上げてね」と言って応援してくださる町内会の皆さんにも、支えられている。かつてこのエリアで映画をよく見ていた年配の世代の方が、通りがかりに寄ってくれる事も多い。彼らの中の街の灯はまだ消えてなどいない。
 他にも、とあるモニターツアーの企画の受け入れで、市外からの数名が視察に訪れてくれた。その際ゲスト講師として、元わらび座で現在は社会福祉法人の石巻祥心会で汗を流す黒田さんをお招きした。劇団員当時に体に染み付いた「鬼剣舞」を舞ってくれたのだが、これは観た人にとっても圧巻のようだった。やはり目の前で行われる身体表現には、それでしか伝わらないエネルギーがあると、生舞台の本質のようなものを確信できたのだった。
 また、メディア関係の方々が絶えず取材に来ては、我が事のように感じ、丁寧に取材して紹介してくださったり、市内の高校生が課外学習で学びにも来てくれたりもした。「映画にはあまり馴染みがないけど、好きな作品や推しの映像はやっぱり映画館で観たい!」と笑う若者の目の輝きに、街の灯を見られた気がする。
 まだ解体段階中の、わずか一ヶ月の間。こんなにも多くの方が、さまざまなきっかけで施設を訪れ、めいめい心に何かを灯し帰ってゆく。その縁がまた次の縁を生み出す。中央一丁目が少しだけ、かつての騒々しさを取り戻す予感がしてくる。大家さんからいただいたお守りの効果はすでにてきめんだ。  矢口龍太

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