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2022.4月 石巻ニューキネマパラダイス第八回「バックトゥ・ザ・フューチャー」

4月21日は「R」vol.1を開催したあの春の日からちょうど丸々10年になる。東京から地元石巻へ通い続けるきっかけとなった企画だ。

演劇や音楽を石巻でやり続けようと思い、ライフワークのようになった。当時は「こんな状態の石巻で、表現活動なんてやれるのだろうか」と開演直前まで悩んだものだ。覚悟をしなければならないと思い、「10年目の2021年までやります」と言って始めた。

あれから10年が経過した。

あの頃予想できなかった未来に今いる。石巻の街には音楽や演劇のプレーヤーが溢れている。そんな中で街なかに劇場を作ろうとしている。あの頃未来が全然見えなくて、信じる方へ手探りで進んでみるしかなかった自分に、10年後の未来から何か言えるとすれば何だろう。

5年後の2017年にUターンし、街づくり団体のISHINOMAKI2.0に入って石巻で働き始める。後に一緒に映画と演劇を観られる劇場を作る相棒と、その団体で出会う。ターニングポイントは2018年の4月。ラジオ石巻から映画と演劇に関する番組をやらせてもらうことになる。ラジオ「劇場キネマティカ」をきっかけに、「MCネモ」と「MCチン」と名乗るようになる。

そんな日々の中で、日活パール劇場の隣で空き家になっている店舗と出会うことになると、あの頃の自分に伝えておこう。中を見た瞬間に、ネモが今まで見たことのないように目を大きく開いて「矢口さん、ここで劇場やりましょう」と言ってくる。その時自分も同じことを考えているから、食い気味に即答しておくこと。

そうして始まるシアターキネマティカ・プロジェクト。石巻の街なかの空き家を活用して、クラウドファンディングで資金を募り、改装に入ることになる。オープン予定は今夏。できれば川開き祭りの中で。

さて、ではこれから5年後10年後は何をしているだろう。劇場はちゃんと続けられているか、未来へ行ってみよう。10年後の自分達が「やっておけばよかった!」と思うことは何だろう。事業モデルはしっかり立てとけ、健康に気をつけとけ、家族は大事にしとけ、後進は先輩たち以上に大事にしておけ、災害には備えとけ。

今の自分にとって大事にしたいものが分かってくる。

そんな視点で言えば、2017年以前の自分に、「日活パールの館長が亡くなる前に出会い、たくさん話を聞いておけ」と言っておきたい。唯一の後悔かも知れない。

劇場に関しては、きっと後悔していることはないだろう。仲間を正しく頼り、手探りでもがむしゃらに進んでいれば、出会うべくして起こる出会いがやってくる。10年前もそうだった。あの頃、10年後の世の中がパンデミックと分かっていたら、表現活動の道を選べていただろうか。相棒と出会い、キネマティカと出会えていただろうか。

未来はどうなるか分からないからこそ面白くなる。シアターキネマティカから映画監督や舞台俳優が生まれているかも知れないし、僕らが二人ともシュッとしたイケメンになっている可能性だって、まだ今の段階ではある。

キネマティカは映画と演劇ができる小さな、しかしながらちゃんと楽しい劇場として日々賑わう。併設のカフェバーでは酒飲みたちが隣の醸造所で作られた地ビール片手に語らう。最高じゃないか。

そろそろ2022年に戻ろう。思い描いた最高の未来に辿り着くために、今何をしてこうか。  矢口

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