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石巻ニューキネマパラダイス 第1回「非日常を日常の中に」

記憶の箪笥を開けていって、一番古い映画鑑賞の想い出を引っ張り出してみる。確かあれは、地域の公民館のような場所で、地元の子ども達で集まりアニメ映画をスクリーンに映して観たことが、私の最古の映画鑑賞の記憶。なんの映画を観たのかは覚えておらず、ただ日常から離れたワクワク感と、大好きな友人達と映画を観たという楽しかった残り香だけを思い出す。映画というものは、作品の面白さだけでなく、いつ、何処で、誰と、何を観たのかということが、思い出の質を上げるのだと思っている。私は、それが場所の重要さだと考える。テレビのみならず、パソコンやスマートフォンでも映画は観ることができる現代で、場所を選ばずに作品に触れることができるということは、映画鑑賞のハードルを下げることに成功した。しかしその代わり、記憶に残る映画鑑賞体験が減少することに繋がってしまったように感じてしまう。作品の気楽な消費。そこに、かつてのような文化的な体験は、果たしてあるのだろうか。
私は、そんな時代と逆行するプロジェクトを仲間たちと行っている。かつて「文化通り」と呼ばれた地にあった日活パール劇場、その横にあった布団屋を、劇場のみならず、飲食・服飾・音楽・ファッション・サブカル・エンタメなどに親しむ「複合エンタメ施設」に生まれ変わらせようとしている。名前は、「シアターキネマティカ」。
現在、9月末までインターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募るクラウドファンディングに挑戦中だ。そして10月中旬から、本格的な改修が始まり、来年の夏頃の施設オープンを目指し活動している。その施設は「未就学児から中学生までの子どもは、無料で鑑賞、観劇が可能なエンターテイメントに富んだ施設」というコンセプトを掲げているが、傍目から見たらなぜそんなことをするのだろうと思うかもしれない。きっと子供の頃に私自身が体験した映画鑑賞が、とても幸福な体験だったと記憶に残っているからだと思う。あの時に感じたワクワクを、日常の中に現れた非日常を子供達に作ってあげたい。
最後に、私の好きな映画の一つ、ニューシネマパラダイスの登場人物アルフレードの台詞で、忘れられないものがある。
「何をするにしても自分のする事を愛せ。子供の頃、映写室を愛したように」
私は私が行うことを信じて愛していこうと思う。あの日、子供達が小さな部屋で身を寄せ合って観た映画の景色は、きっと喜びに満ち溢れていて、それをまた石巻で実現したいのだから。       阿部拓郎

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