【BORDER .2】境目論
境目論 / 須江 篤史 (KINEMAS,AJISAI / Guitar )
BORDERという言葉を日本語に訳してそのまま書き上げてしまうという、超単細胞な事をやってみようと思う。
境という言葉を調べてみると「土」+音符「竟」(「音」+「人」の会意で人が歌う音楽の区切りを意味)土地の果てるとことを意味する。
嗚呼なんと我々音楽を愛好する者が語るにちょうどいい成り立ちの言葉であるか。意味は語る必要もない皆さんがご存じの通り土地の区切り。ものの分かれ目。場所。など。「境」という文字を使った言葉は少年の心をくすぐる言葉ばかりだ。魔境、秘境、逆境等々、ほらすぐに漫画や映画やドラ○もんのタイトルやハリソンフォードの顔が思い浮かぶ事でしょう?
今回はこのワクワクする漢字「境」にズームイン!(僕は福留さん世代です)
僕は球児達が汗を流して互いに全力を出して闘っている姿に涙してしまうくらいには高校野球が好きだ。その中でもやはり自分自身の出身地だったり、今住んでいる場所の学校が出ていると応援したくなると思う。そうなんといっても僕が東京生まれ東京育ちだったとしても。
同じ境目の中で育った者たち同士が共感し興味を持ち応援したくなるのである。離れた土地で同郷の人間に会うと嬉しくなるのも同じような気持ちだ。
ここで問題になるのは東京のくせに何をとおっしゃる田舎の方がいるという事。意外と東京出身のバンドマンって少ないんだぜ!だから会えるとけっこう嬉しいんだぜ!あっ、この東京の件もういらないっすね。
境があるから、その内側に共通の文化というものが生まれる。日本の国がもっと細かく分かれていた頃から、限られた土地での中で暮らす人々が限られた資源で国を豊かに出来るのか、何を暮らしの支えにしていたのか。
皆が考え出していった結果が今もその場所に残る伝統芸能だったり、特産品だったりするのではないのだろうか。
もし皆が自由な往来が出来て、なんでも手に入る時代がずっと続いていたなら、今とは違う形になっていると思う。
土地の境は不自由さも生むが人間はそれすら武器にしてなんとか道を切り拓いていく。
そして争いが絶えないのもまた境である。
支配、妬みや羨望、独占欲というような本能的な気持ちで生きていた時代には、隣の土地が豊かだと聞けば戦争になったり、本能的に生きる事をよしとしない現代社会でも、土地を持つが故の近隣とのちょっとした争い、県境をどこにするかなんて争いや、映画にまでなった埼玉県蔑視問題等々、枚挙にitomaがない。
itoma
境というのは土地だけではなくそこに在る人間の心も左右するものなのだ。
そして心が動く場所というものに人は関心や興味を持つ。
多くの映画やドラマや曲もやはり心の揺れ動き、中でも多くの作品が人間関係の境を題材にしている。
人間関係の境。彼は友達であの人は知らない人、特別な恋人だったり憎むべき敵なんて人もいるかもしれない。
昔、仕事の同僚が「さっき、敵に会ったんだ、敵のくせに話しかけてきやがったんだ!」とたいそうお怒りで職場に入ってきた事があった。彼の中ではその人は敵。その敵の中では彼は友達だったんだと思う。関係性を決めていくのは自分自身であるという事の顕著な例を示してくれた彼にとても感謝しているがそんな敵を作るやつとは2度と会いたくない。
僕が初めて海外に行ったのはキネマズのライブで行った台湾だ。
英語なんてちょっとしか分からないし、中国語なんてもってのほか。
そのくせにみんなと違う空港を選択し集合場所まで一人で50kmほど移動せねばならない道を敢えて選択した。なんの自信に満ち溢れていたのだろうか。今考えると恐ろしい。馬鹿なのかな。
しかし結果は入国、現金の両替、携帯のsimカード購入をスムーズにこなし、ジェスチャーと漢字を頼りにバスでたどり着き、時間が余ったので一人でビールを飲みながら待つという奇跡の展開を迎える事となった。
それも台湾人の人は優しくて話かけると、えっ?みたいな顔はされるけど、みんな優しかったおかげだ。
日本にいる時、外国人から話かけられると、言葉がわからなくてもなんとかしてあげようと思うなと後から考えた。
相手が何を言おうが初めからケチをつけるような人なんて、そうそういないと気付かされた出来事だった。そんなヤツがいたとしたらクズだ。うん間違いない。
外国に行った時だけの事ではなく普段の会話でも、これを言ったら変に思われるかな、空気読めないと思われちゃうかな。そういう境を自分で作ってしまわず、とりあえず話してしまうという事が大切な事で、その人となりが分るし、意外な一面が見えてくる。表現する事が苦手でツンツンしてるように見える可愛い人間かもしれない。
どうしても、合わない人と関わる事も多い現代社会での生活だが、喋ってみたら案外苦手意識も無くなるし向こうも心を許して気遣ってくれるようになるかもしれない。
逆に会話をしてみても何も変わらないなら、その時は容赦なく心をシャットダウンして必要な事以外は喋らないという選択も下しやすい。
なんにせよ悶々としている事が心にとってはとても良くない事だと思う。
とはいいつつ、「僕、人見知りなんで」というと「何言ってんの」と返されるのは未だに何故だか分からない僕は、初対面の人でもズケズケとベラベラと気にせず喋れる人のことをどうかしてるとは思っている。(いい意味で)
人との関わりとは結局は自分の心の境を自分自身で変えるという事だ。
他人が決める事ではない。
出来るだけたくさんの人達と、迎合するだけでなく、違いを認め合う、お互いの境を尊重し合いコミュニケーションをとる事で自分の人生を豊かに広げていく事に繋がるはずだとまではいかなくとも、少し楽しく生きられるはず。
2000文字までと宮下さんにシツコく言われているので、2500文字近くになっちゃてるので、宮下さん、キックボクシングやっててまじで怖いのでこの辺りで。馬鹿にしてないんで。
本当はもっと妬みとか恨みつらみの話を書きたい。
ドロドロしている感情は人間らしくていい。
土地の話も書きたい。墾田永年私財法とか書きたい。
という蛇足を付け足して今回はここまで。
また機会があればお会いしましょう。
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