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ゆりやんさん入院騒動①

ゆりやんレトリィバァさんが、撮影により脳を損傷して、緊急入院したことについて、ファイト・ディレクター(西洋殺陣師)の視点から、記事を書きたいと思います。

何があったか

私の情報源はこちらの記事です。

まとめると

  1. ゆりやんさんは以前にプロレスシーンの撮影で指にケガをして撮影が延期となった。

  2. 今回の脳の損傷は延期したシーンの撮影が引き金となった。

  3. 自分のせいで撮影が延期になった責任を感じて、体調の異変を伝えられられなかったのでは?

  4. 結果的に2度も俳優のケガを防ぐことができなかった制作陣

  5. プロレスの監修者はついていたが、技の指導のみ。安全管理はノータッチ。

  6. 俳優の体調管理やメンタルケアの専門家がついていない。


起こるべくして起きたこと

日本ではこういうことを「事故」としてしまいますが、アメリカでは(少なくとも私が入る現場では)事故ではなく「事件」です。

私は、ケガを防止するための十分な対策がなされていた上で発生したケガを事故といい、十分な対策がなされていない状態で発生したケガを事件としています。

今回のことは(記事を読む限り)事故とは言い難いです。

例えば、日本人はよく「前例がないからわからなかった」と言い訳しますが、そういうときは監修者をつければ解決できます。だから、この作品の制作陣は監修者をつけたということであれば、これは正解だったんです。

でも、今回の監修者はプロレスの知識に関する監修者であって安全管理の監修者ではなかった。

アクション映画に殺陣師を呼ぶか、武術家を呼ぶかの違いのようなものですが、武術家は演技のことがわかりませんから、アクション映画の現場でできることといえば、技の正確性だけしか口を出すことができません。

演出家や監督が俳優に「こうやってほしい」というと、武術家から「そういう技はありません」と言われる。監督も「でもこれは演技だからやってくれないと困るんです」と言っても、武術家は「私は技や伝統を引き継ぐものとしてウソを教えることはできない」なんて返されてケンカになる。というのが現場で起きることもあります。

だから、今回の監修は視聴者(特にプロレスファン)からのツッコミ回避のために呼ばれたと解釈できてしまうんです。

リアリティを出すためにツッコミ回避を考えるのも大事だと私は思います。ただ、作品にとってはそれだけでも良いのですが、俳優にとってはそれだけだと不十分なんです。

安全管理の専門家も呼ぶべきだったんです。でも呼ばなかった。

現実を見ると、知識がないからという理由だけでなく、プロレスの専門家に任せれば大丈夫だと思ったという過信や、ゆりやんさんはいつも笑顔で答えてくれているから大丈夫だろうという俳優に対する甘え、また、予算の問題で安全管理の専門家を呼べなかったのかもしれません。


でも、ファイト・ディレクターの視点から見れば、安全管理の専門家がいない現場で発生したケガですから、これは起こるべくして起きたと言えます。

この記事の続き

私がこの記事で「これはひどい」と騒いでも火事場で水ではなくガソリンを撒いていることになりますので、ここからは「では、どうすればよかったのか?」を記事に書きたいと思っています。

私は日本では「西洋殺陣師」という肩書になっていますが、正しくは「ファイト・ディレクター」といいます。

厳密に言うと、日本の「殺陣師」とアメリカの「ファイト・ディレクター」は違う職業です。

次回の内容は…

  • ファイト・ディレクターって何をする人?

  • ファイト・ディレクターならどうした?

  • ファイト・ディレクターの視点から考える問題点

などを記事に書きます。

記事を書き終えるまで少々お待ち下さい。


<記事が書き上がったらここにリンクが入ります>


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