ウクライナの縫製会社からのメッセージ
舞台俳優にとって衣裳はとても重要です。
私が専門としている西洋殺陣の衣裳については、日本国内で探すのはほぼ不可能なのでいつも海外から輸入しています。
それらの衣裳の中にウクライナ製のものがあるのですが、今日は私の衣裳を作ってくれた縫製会社からのメッセージを紹介したいと思います。
「注文をキャンセルしないでください」
おそらく、ウクライナ侵攻が始まってすぐに多くのキャンセルが寄せられたのだと思います。顧客の心理を考えると当然です。しかし、彼らのメッセージを読むとキャンセルしないことが彼らを支援することにつながることに気づくと思います。彼らは常に職人として仕事に誠実です。
「安全確保が最優先」
外国らしいですね。昔の日本であれば「お客様に迷惑をかけちゃいけねぇ」なんて言って仕事を続けるのが職人として普通なのかもしれませんが、今の時代、私は人命を第一に考えるべきだと思うので、まずは避難を最優先にしていただきたいと思っています。商品の到着が遅れて迷惑だなんて思いません。
「家族の安全を見つけるための時間をください」
私はこの表現がとても好きです。縫製会社の職人さんの意思がすごく伝わってきませんか?私はこの言葉から、仕事に対する意欲を失っていないことを感じたのですが、すごいことだと思いませんか?今、彼らが置かれている状況は、明日死ぬかもしれない状況なんですよ!?それなのに、「家族の安全を見つけたらすぐに仕事に移ります」と言っているんです。
このメッセージから私が読み取ったこと
「どんなにつらくても仕事に誠実でありたい」
彼らは今、とてもつらい状況に置かれています。でも「家族を安全なところに避難させたらすぐに仕事に取り掛かる」と言っているのですから、これはすごいことだと思います。日本人なら当たり前と思うかもしれません。
しかし、これを言い換えるとウクライナの職人さんは日本人と同じ考え方をするということです。
「戦争が完全に終結するまで待って」ではなく、「家族の安全を確保するまで待って」と言うところも真面目な日本人と似ていませんか?
ウクライナの職人さんは共感できる部分が多い
私は衣裳を受け取ったときに感じたのですが、仕事に誠実でありたいと思う気持ちだけでなく、仕事に対する熱意や丁寧さも日本人と似ています。
私が着ている衣裳はすべてオーダーメイドです。サイズを選んで買うのではなく、こちらから送った寸法どおりに作ってくれます。そして、それがとても丁寧なんです。
日本人でも仕事が丁寧な職人さんっていますよね?
だから、日本人ならこの丁寧さが想像できると思うんです。
お金を送ることだけが支援ではない
仕事を奪わないことも支援になる
「注文をキャンセルしないでください」
なぜなら、仕事が今を生き抜くための手段になるから。
自分の周りから大事なものがなくなったとき、仕事があるだけで救われることもあると思うんです。仕事があったから道を見失わなくて済んだということもあると思うんです。
絶望の淵で何をすれば良いかわからない。生きている実感が得られず、生きる活力もない。でも、そんなとき仕事があれば、そこから生きる活力を得られるかもしれません。
日本人と似ているところがある人たちならなおさらです。
募金が不安なときは
SNS上では募金の呼びかけを見ますが、募金を考えている人の中には「自分のお金が何に使われるか不安」という人もいらっしゃると思います。そんなときは自分が応援したいウクライナの会社から商品を購入するのはいかがでしょうか?
例えば、この縫製会社の場合は、新規の注文は受け付けていませんが会社独自のギフト券があって、それを購入していただくことでその代金が支援金になるというシステムになっています。
プロ中のプロの発想《ギフト券》
私はこれはすごく素晴らしいアイデアだと思いました。彼らが考えていることはプロ中のプロの発想です。
なぜそう感じたのかと言うと、ギフト券ならすぐに何かを作らなければならないということにはならないですし、いわゆる前払いの状態なのでお客様にも迷惑がかからないんです。
募金ならお金を受け取って終わりですが、ギフト券の場合はお返しをしなければならない。先にお金はいただくけど、あとから払った金額分のお買い物ができますよ。というのがギフト券。
これ、彼らがいかに職人魂を持っているかがわかる対応だと思いませんか?
自分の仕事に誇りを持っている証拠です。そして、お客様をすごく大事にしている証拠です。
私は今までこんな発想を見たことがありませんでした。
もし、ギフト券を買ったお客様が「お店も大変でしょう?復興にはお金が必要だからお返しはいらないよ」というのであれば、ギフト券を使わなければ良いだけですし、これなら実質、募金と同じです。
ギフト券を使えば仕事で支援することができ、ギフト券を使わなければお金で支援することができる。それがこのギフト券システムなんです。
素晴らしいと思いませんか?