西洋剣術と銃刀法⑤
前回のおさらい
さぁ、今回からいよいよ西洋剣のお話に入ります。
と、その前にここまでのおさらいです。
インデックス的に銃刀法シリーズをまとめますと、各記事ごとに次のような情報を知ることができます。バックナンバーが気になる方は参考までにどうぞ。
西洋剣術と銃刀法① → 「刀剣類」と「刃物」
西洋剣術と銃刀法② → 「模造刀剣類」
西洋剣術と銃刀法③ → 「所持等」
西洋剣術と銃刀法クイズ → 銃刀法を短時間で理解する方法
西洋剣術と銃刀法④ → 「業務」「その他正当な理由」
銃刀法を学ぶ理由 → 銃刀法を学ぶメリット
※タイトルから各記事へ飛べます。
この6つの記事で銃刀法をわかりやすく説明してきましたが、ここからはもっと具体的に西洋剣術と銃刀法の関係をお話していきます。
銃刀法の「剣」とは?
銃刀法で規定されている「剣」がどのようなものかを見てみましょう。
(定義)
第二条 2 この法律において「刀剣類」とは、刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣、あいくち並びに四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。
この条文を読むと、刀は刃渡り15cm以上のものからなのに、剣は刃渡り5.5cm以上のものからとなっているところを見ると、「剣」がエクスカリバーのような西洋剣を想定していないことがわかります。もし、そのような西洋剣を想定しているのであれば刀と同じ15cm以上となるはずです。
実は、ここが銃刀法と西洋剣の関係を考える上で、大事なポイントなのです。
「刀」と「剣」の区別
銃刀法において「刀」と「剣」はどのように区別しているのでしょうか?インターネットで調べてみると、ほとんどの人がその形状で判断しているようなのですが、それらを紹介しますと以下のようになります。
刀 → 刃が反っていて片刃
剣 → 刃がまっすぐで両刃
確かに、このように分類するとわかりやすいですよね。ですから、一般的にはこのように解釈されています。
ただ、私の記事を読んでいる読者層には、西洋剣術に詳しい人もいますので、そういったみなさん向けにお話しますと、この分類法が不完全であることがわかりますよね。
「どういったところが不完全なのか?」「では、どのように分類すればよいのか?」と疑問に思う人もいらっしゃると思いますので、その分類法についてお話させていただきます。
分類法の違い
どんなものでも分類する際には基準となる値が決められますが、上記のような一般的な分類法では「形状」によって分類されていました。この「形状」が値になるわけですが、みなさんは「形状」以外でどんな値が考えられますか?
例えば、「地域」というのはいかがでしょう?
東洋で使われている刀剣が「刀」、西洋で使われている刀剣が「剣」とするのです。分類法としてはわかりやすいと思います。ただ、実際には採用されていません。(理由はすぐにわかると思いますので、みなさんで考えてみてください)
【武術の世界の分類法】
銃刀法を作った学者さんも、「地域」という値で分類するのは良くないと判断したから、この分類法がなくなったわけですが、ここで、一般人とは異なる、もっと専門的な世界に生きる人達の分類法を紹介しましょう。紹介するのは武術の世界に生きる人達です。
武術の世界に生きる人は、武器の用法を心得ています。そこから生まれる分類法が「用法」にという値です。武器にはそれぞれ武器ごとの使い方というものがあり、その使い方を正しく理解してこそ本来の性能を発揮することができるようになっています。そこで、刀と剣の使い方に注目して分類してみるのです。
すると、多くの場合、以下のように分類されます。
刀 → 斬ることを主として使う
剣 → 突くことを主として使う
この分類法は私も好きです。そして、銃刀法にも沿った分類法だと思っています。
刀剣に限らず、人類が使う武器というのは地域や時代を問わず、どこかしら共通点があるものです。その共通点の中から「用法」という基準値で分類をすると地域や時代に関係なく分類できるので、銃刀法的にはこの分類法が最もわかりやすいのではないかと私は思います。
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