なぜ最近の注射は昔ほど痛くないのか?
注射と西洋剣術(西洋殺陣)の関係。
それはズバリ、突き刺したときの「痛み」にあります。
今日の記事は、西洋剣術における「痛み」の概念とその研究を、注射に応用してお話するものです。
この記事が注射に対する恐怖や不安から人々を解放し、ワクチンの接種率の向上に貢献できれば幸いです。
はじめに
みなさんは、ワクチンを打ちましたか?
インターネットでワクチンの接種が終わった人の感想を見ると
・全然痛くなかった
・あっという間に終わってた
・注射こわい アー
という感想が多く、ほとんどの人が強い痛みを感じなかったと思います。
なぜ痛みを感じなかった人が多かったのでしょうか?
筋肉注射だから?
この度のワクチンは筋肉注射なのですが、筋肉注射は皮下注射と比較して痛みを感じにくいと言われています。
筋肉注射とは、ワクチンなどの医薬品を皮下脂肪の奥にある筋肉内に直接注射する方法のことを指します。ファイザー社のワクチン、武田/モデルナ社のワクチン、及びアストラゼネカ社のワクチンは、通常、肩の筋肉(三角筋)に接種を行います。筋肉は皮膚と比べて痛みを感じる神経が少ないともいわれており、皮下注射と比べて痛みが強いという証拠はありません。世界的にはインフルエンザワクチンなども、筋肉注射で行われている例が多くあります。皮下注射と筋肉注射を比べた臨床研究では、筋肉注射は皮下注射に比べてむしろ、注射した部位の痛みといった局所反応が少なかったという報告もあります。
厚生労働省HPより https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0022.html
しかし、痛くなかったのは筋肉注射だったからなのでしょうか?
私の経験では子供の頃に日本脳炎の予防接種(筋肉注射)を受けたときは、とても痛くて泣きたくなるくらいだったのを覚えています。
注射が痛くなくなった謎について「子供の頃の話で、今は大人になって痛みに強くなったから」と自己解決できそうですが、どうも腑に落ちなかったので、もう少し考えてみました。
看護師さんが上手だったから?
自己解決で最も多いのがこれだと思います。
今回注射を打ってくれた看護師さんが上手だったから痛くなかった。
とても納得できます。
でも、この答えだと注射を打つときにいつも不安になりますよね。
今回の看護師さんは上手かな… 痛くないかな…(不安)
もちろん、世界中の看護師さんは痛くしないように、日々研鑽されていると思います。
毎日、毎回の積み重ねがあって初めて痛くない注射を身につけることができるという考えは否定しませんが、患者さんからは目の前の看護師さんがどれだけの経験を積んでいるのかはわかりませんから、やっぱり不安になると思うんです。
私は西洋殺陣師で、舞台上の俳優さんの安全管理を任される立場ですから、演技中の不安や痛みは徹底的に排除しなければなりません。
そのため、目の前の人の体調やスキルによって、痛みや不安を感じる確立が変わるというような”バクチの要素”を許容することはできず、職業柄、この答えに納得することはできませんでした。
献血ルームで聞いてきました!
疑問に思ったら自己解決せずに時には徹底的に調べてみるのも良い経験です。
私の情報の中で、きっと日本で一番注射を打っているであろうと思われたのが献血ルームで働く看護師さんだったので、いつも行っている献血ルームに行って聞いてみようと思いました。
看護師さんに質問するタイミングを最も長く伺えるのは成分献血だと思ったので、予約して行ってきました。
看護師さんの答え
看護師さん「注射の針が昔よりも細くなっているんです。」
納得。
注射の針が細くなれば看護師さんの経験に関係なく、痛くない注射が実現できますよね。
看護師さんは謙遜されてましたけど、事実、看護師さんの経験も大事な要素だとは思います。また、それに加えて、注射器メーカーさんのたゆまぬ努力のおかげでもあったわけです。
答えを聞いてみればとても簡単なことでしたけど、なかなか気がつかないものですね。
こういった気がつかないところにこそ匠の技が使われているのは、注射針に限ったことではないと思いますが、世の中の技術者のみなさんに感謝したいと思いました。
注射針メーカーの功績も知ってほしい!
最近の注射が昔ほど痛くないのは、
看護師さんの日々の努力と、注射針メーカーさんのまごころがあったから。
私は今回は特に注射針メーカーの技術者の功績を世のみなさんに知ってほしいと思い、記事に書きました。
ぜひみなさんも、ワクチンを打つときに注射針の細さを見てみてください。
看護師さん、ありがとうございました!
看護師さん、ありがとうございました。
今回の成分献血は90分くらいかかりましたが、その間、にぎにぎするものを用意していただいたり、クエン酸タブレットを用意していただいたり、常にお気遣いいただきありがとうございました。
そして、注射針メーカーの技術者のみなさん、ありがとうございました!
みなさんの「痛くない注射針を作りたい」という思いがあったからこそ実現できたことだと思いますし、記事を書くにあたり、みなさんのまごころをしっかりと感じることができました。
多くの患者さんは直接接する看護師さんに感謝を伝えますが、技術者のみなさんはそれを見ても「なんで看護師ばかり感謝されるんだ」と不満をもらさず、影でこっそりそれを見て笑顔でいるだけなんてカッコ良すぎます。
(付録)看護師さんとの会話
(血液検査のときの会話です)
看護師さん
ちょっとチクっとしますよー。(チクッ)針を指したときに痛みやしびれはなかったですか?
私
全然痛くなかったです。看護師さんが上手で良かったです。
看護師さん
いや、これ、私が上手なんじゃなくて、注射の針が細くなったからなんですよ。
私
(あ、そういうことか!)
そうなんですね。それでも、看護師さんが上手だからだと思いますよ。
(引かない私)
看護師さん
看護師もいろいろですよ。
最後の「看護師もいろいろですよ」からはいろんな意味を感じてしまいましたが、看護師さんが上手だから痛くないというのも事実だと思いますので、「注射が痛くないのは看護師さんと注射針メーカーさんのおかげ」と書かせていただきました。
注射の痛みと西洋剣術の関係
西洋殺陣師(ファイト・ディレクター)は俳優を痛みや恐怖、不安から守るのが仕事です。そのため「なぜヒトは痛みを感じるのか?」を勉強しなければなりません。
また、ファイト・ディレクターは、歴史的な刀剣がどのようにしてヒトにダメージを与えてきたのかも勉強しますから、斬られたときや刺されたときの正しい演技を指導できるのです。
さて、日本で「突き刺す剣」というと、その代表がレイピアということになっているのですが、この「レイピア」はヨーロッパの刀剣の中でも特にその細さが特徴として注目される剣です。
また、その細さゆえ、今までの刀剣にはなかった使い方をするのも面白いところです。
詳細は教室・講座で
詳細は私の教室や講座で話していますので、もし、興味があればお問い合わせください。出張講習のご依頼も承ります。
<人気のトピック>
・レイピア剣術ってどういう剣術?
・レイピアで刺されるとどれくらい痛いの?
・人を刺すためにはどれくらいの力が必要なの?
などなど