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専門家が言ってはいけない言葉

数年前からツイッターが議論の場となってしまっているときを見かけますが、そのときに「これは言ってはいけないな」と思う言葉がありまして、今日はそのことを書こうと思います。

「そんな事言うんだったら、お前がやってみろ!」

ツッコまれた側が言う言葉です。ツイッターだけでなく、日常会話でも激昂したときに使ったことがあるかたもいらっしゃるかもしれませんが、私はこの言葉こそ専門家は言ってはいけないと思っています。

「どうだ!?できないだろ?」が前提となっている

「そんな事言うんだったら、お前がやってみろ!」は、何かの言い争いになったときに出てくる言葉だと仮定して、その時のシチュエーションを考えますと、この言葉の後ろには「どうだ!?できないだろ?」が隠れていることが予想されます。つまり、相手ができないとわかりきっている状態で「やってみろ!」と言っているのです。そして、更にもうひとつ後ろに隠されている言葉があります。

「私に服従しろ」が隠れている

それは、「だったら~するな!」または「だったら~しろ!」です。「だったら文句言うな!」だったり、「だったら黙って言う通りにしろ!」だったりといろいろ考えられますが、共通して言えるのはそれらは服従を促す言葉であるということです。

ケンカに勝つための基本戦術。でも…

戦いに勝つためには兵法を勉強するのが一番良いのですが、兵法の基本に「地の利を活かす」というものがあります。これは、自分の得意なフィールドに引き込むことができれば勝てる確率が上がるというものですが、「だったらお前がやってみろ!」は、この意図が見え見えなのです。
そんなあからさまな兵法は策と呼べず、大抵の場合は「はぁ?」という態度をとられて、服従させる作戦は失敗に終わってしまいます。

プロ並みの知識を持つアマの存在

ちょっとだけ話がそれましたが、「そんな事言うんだったら、お前がやってみろ!」の意味はおわかりいただけましたでしょうか?相手が反論できないことを知っておきながら、あえてその一言を言う心境たるや、かなり追い詰められている状態だと言えるでしょう。専門家が追い詰められている状態というのは、自ら勉強不足であることを認めてしまっていると思うので、かなりまずい状態です。負けたも同然でしょう。しかし、私は「負けを認める事になるから言ってはいけない」と思っているのではありません。ここで注意すべきはプロ並みの知識を持つアマチュアの存在なのです。

容赦ない追撃をくらう覚悟があるか?

「だったらお前がやってみろ!」の裏には「どうせお前にはできないだろ!?」が隠れていることは見え見えですから、相手が”できる人”だった場合は最悪です。おそらく、「自分は不要である」ということを確信するに至る追撃が待っているでしょう。専門家は、誰にもできないことができるから”専門”なのであって、他にできる人がいたら存在価値がなくなってしまうのです。オンリーワンを売りにする人ほど、「だったらお前がやってみろ!」は言ってはいけないのです。

意見は誰もが自由に言って良い

今回は言い争いのシチュエーションでお話をしましたが、「だったらお前がやってみろ!」は、政治の話をしていると良く出てきます。「だったらお前が政治家になって国を変えればいいだろう?」というように。でもここで考えたいのは、意見を言うのは自由なのではないか?ということ。

「だったらお前がやってみろ!」のもうひとつの解釈

「だったらお前がやってみろ!」という言葉は、もうひとつ解釈がありまして、それは「文句を言うのは簡単。でもやるのは難しいからその難しさをわかってね。」というものです。こういうシチュエーションでは少し弱気で「そんな事言うんだったらあなたがやってみてください」となるかもしれません。

やはり言わないほうが良い

言葉というのは受け手により意味が決められるので伝わったようにしか伝わらないので、どんな意図で言おうが前者の意味で解釈されれば追撃は必至ですし、専門家としての自分の立場を危うくするので、結局は”専門家が言ってはいけない言葉”になると思います。

追記

この記事を書いてからネット検索をしていたら、この言葉は過去に何回か話題になっているようです。その時は芸人さんが素人さんに言ったようなのですが、自分の芸について指摘されたのでしょう。
私も芸事を生業としていますので、芸人さんの大変さはわかります。素人に言われたくないという気持ちもわかります。しかし、ここはプロらしく余裕を持って対応すれば、神対応となって好感度が上昇したのではないでしょうか。

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