「熱中症にならないためには?」
皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は、森本 優一です。
今回は“教えて!近大先生〜日常生活編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。
今回のご質問です。
「熱中症にならないために、何かできる事がありますか?」
早速ですが、結論です。
「環境の温度や湿度を把握し、適切な服装を選びましょう。特に乳幼児は注意が必要です。運動をするときは、水分・塩分・休憩をこまめに取りましょう」
となります。
この結論にいたった理由について3つにわけてお話しします。
1. 熱中症とは、環境の温度に身体が適応できない事で起こる
2. 子どもは、大人よりも熱中症になりやすい
3. 大量の汗をかくと、体内の塩分や水分が不足する
1. 熱中症とは、環境の温度に身体が適応できない事で起こる
そもそも、なぜ熱中症が起こるのでしょうか?普段、私たちの体温はだいたい36.5℃~37.5℃の間に保たれています。これは、私たちの体が最も効率よく活動できる温度です。私たちの身体は、環境の温度が上昇しても体温が上がらないように様々な対応をします。体温が上がりそうになると体は血管を広げて熱を外に出します。また、汗を出して、それが蒸発する時に熱を逃して体温を下げます。しかし、暑さや激しい運動などで、体温調節の限界を超えると熱中症が発症します。したがって、周りの環境が暑すぎる場合は要注意です。具体的には、夏の外出や運動に際してはこれからご説明する「暑さ指数」を参考にしてください。暑さ指数は気温に加えて、湿度と周辺の熱環境を考慮した数値です。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温が下がらず熱中症になりやすくなるので、熱中症予防には湿度にも注意が必要なのです。
暑さ指数は環境省の熱中症予防サイトから確認することができます。
このホームページでお住まいの地域を選んだあと、周囲の環境を選んでください。すると、時間ごとの暑さ指数が表示されます。
暑さ指数によって、注意すべき活動の目安が変わります。
日常生活に関しては、次の表を参考にしてください。
運動に関しては、次の表を参考にしてください。
屋内では適切にエアコンを使用し、外出時は通気性がよく汗を吸収しやすい素材の服や帽子を着けて、気温が下がった時に汗で濡れた服で体が冷えないように着替えも用意しましょう。子ども用の首に巻く冷感ベルトも理論上は有効ですが、首が締め付けられるという情報を受けた消費生活センターが業者に不具合を指摘したという報告も過去にあるので、適切なサイズのものを選ぶようにしましょう。
2. 子どもは、大人よりも熱中症になりやすい
子ども(乳幼児)は汗をかく器官である汗腺の機能が未熟で、自律神経の反応も大人ほど早くないので、暑さを感じても十分に汗をかけず体温を下げるのに時間がかかります。一方で、皮膚の血管を広げて=顔を真っ赤にして熱を逃がそうとするのですが、環境の温度が高すぎるとむしろ熱を取り込んでしまうのです。そして大人に比べて体に必要な水分の割合が高いため、汗で多量の水分を失ってしまうと熱を逃しにくくなってしまいます。また、子どもは体重に比べて体表面積が広いことも環境温度に影響を受けやすい理由のひとつです。身長が大人より低いため、地面からの反射熱による影響も強く受けます。大人が暑いと感じる時、子どもはそれよりも更に高い気温を感じていることが多く、暑さ指数の計算方法も変わってきます。
さらに、子どもは自分で体調の変化をうまく伝えられないことがあります。遊びに夢中になっているときに体調が悪くなっても、それに気づかないかもしれません。暑い時期には大人は子どもの体調に常に注意を払ってあげる必要があります。
3. 大量の汗をかくと、体内の塩分や水分が不足する
大量に汗をかくと、体内の水分だけでなく、塩分やミネラル(電解質)も一緒に失われます。これらは体の基本的な機能、特に神経と筋肉の機能にとって重要な役割を果たしています。そのため、これらが不足すると脱水症状や塩分不足(低ナトリウム血症)を引き起こす可能性があり、頭痛、疲労、筋肉のけいれん、混乱、めまいなどの症状を引き起こす可能性があります。
その対策として以下の方法が考えられます:
水分補給:大量に汗をかくときは、こまめに水分を摂ることが重要です。ただし、ただ水を大量に飲むだけではなく、失われたミネラルも補給する必要があります。
ミネラル(電解質)の補給:スポーツドリンクや経口補水液は、水分だけでなく、塩分やカリウムなどの電解質も含んでいるので、これらを摂ることも効果的です。経口補水液の作り方は、以下の記事を参考にしてください。
ただし、これらの飲み物は糖分も多く含むため、摂取量には注意が必要です。大量に汗をかいた後は、食事を通じて塩分を摂ることも有効です。食塩を少し多めに含むスープやおにぎりなどがおすすめです。ただし、医師から塩分を控えるよう指導されている人は量に注意が必要です。
適度な休息:熱中症などを防ぐためには、適度に休息をとり、体を冷やすことも重要です。
以上のような対策を心掛けることで、大量の汗をかいた後の体調管理が可能になります。
ここまでのお話で、「熱中症にならないためには?」の回答が「環境の温度や湿度を把握し、適切な服装を選びましょう。特に乳幼児は注意が必要です。運動をするときは、水分・塩分・休憩をこまめに取りましょう」とお答えした理由がご理解いただけたでしょうか。
ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。
近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。
森本 優一
参考文献:
[1] 環境省 熱中症予防サイトHP(https://www.wbgt.env.go.jp/)
[2] 熱中症診療ガイドライン2015(https://www.jaam.jp/info/2015/pdf/info-20150413.pdf)
[3] 国立成育医療研究センターHP熱中症(熱射病)(https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/heatstroke.html)
[4] 国民生活センター報道発表資料
(https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20120419_3.pdf)