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皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は、アレルギー担当の竹村豊です。
 
今回は“教えて!近大先生〜日常生活編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。

今回のご質問です。 

「もうすぐ本格的な夏がやってきます。こどもは日焼け止めを塗った方が良いですか?」 

早速ですが、結論です。

 「生後6か月をこえて、夏に屋外で過ごすときは塗った方が良い。」


となります。
この結論にいたった理由について3つにわけてお話しします。

1. 日光にあたることで得られるメリットより、デメリットの方が大きい。

2. 夏の日中はほとんどの地域で紫外線に対する注意が必要である。

3. こどもは紫外線に弱く、生後6か月を超えたら日焼け止めを含めた日焼け対策が必要である。

1. 日光にあたることで得られるメリットより、デメリットの方が大きい。

「日光浴」という言葉はご存知でしょうか?日光浴とは、太陽の光を屋外で浴びることです。1998年までは母子手帳にも記載があって、赤ちゃんの日光浴が推奨されていました。その記載がなくなってもう25年もたつので、いまのお母さん、お父さんの中には「赤ちゃんに日光浴なんて!」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん日光浴にも、ビタミンDがつくられたり、気持ちがリラックスしたりといったメリットがあります。また、小麦色の肌は健康なイメージがありますよね?これは、あくまで筆者個人の感想です。笑
ビタミンDは、骨の健康を守るために大切です。ビタミンDは、キノコや魚などを食べることで栄養として摂取することができますが、現在の日本人は不足しがちとも言われています。太陽の光が皮膚にあたることは、不足しがちなビタミンDの生成を助けます。
一方で、日焼けによるデメリットも存在します。主なデメリットは、
・シワ、シミなどの皮膚老化が早まる
・皮膚がんのリスクが高まる
・白内障、翼状片、メラノーマなど目の病気にかかるリスクが高まる
です[1]。日焼けした方が良いのか、悪いのかを考えるのはこの2つのメリットとデメリットを比べることになります(下図)。

日焼けのメリットとデメリット

この2つのバランスを考えるのに「ビタミンD・紅斑紫外線量」が有用です[2]。日光照射時間、肌の露出面積、日本人のスキンタイプなどを元に、非常に精緻にこのバランスを見ることができるので、興味のある方は参考になると思います。ただし日常生活において、このデータを元に最も有効なレベルで太陽の光を浴びて、ビタミンDの生成を促すのは、多くの方には現実的でないと思われます。
現時点で日光を浴びるメリットとデメリットのバランスを考えた場合、デメリットの方が大きい、というのが一般的な見解です。日本臨床皮膚科医会はこのバランスを「紫外線 百害あって 一利あり」と五七五で表現しています[3]。

2. 夏の日中はほとんどの地域で紫外線に対する注意が必要である。

日光には、目に見える光(可視光線)のほかに、目に見えない赤外線や紫外線があります。紫外線とは地表に届く光の中で、最も波長の短いものです。紫外線は波長によって、UV-A、UV-B、UV-Cの3つに分類されます。この内、皮膚への影響が強いのは、UV-BとUV-Cの2つです[4]。

日焼けサロンでの日焼けは、人工的にUV-BをカットしてUV-Aだけを照射しています。ただし、UV-Aだけだとしても過剰な暴露は水脹れやシミなどの影響が起こる可能性があります。また、WHOの報告では、日焼けサロンの利用による皮膚ガンの増加が指摘されており、18歳以下の使用を禁止するよう勧告しています[5]。
紫外線が人体へ与える影響はUVインデックスという指標が用いられています。UVインデックスで表される紫外線の強さは下記の様に分類されています。

これを地域、月別、時刻別に示すと以下の様になります。

夏は日中の時間帯ほとんどが中程度以上で、全国的に紫外線対策が必要になりそうですね。

3. こどもは紫外線に弱く、生後6か月を超えたら日焼け止めを含めた日焼け対策が必要である。

日光の紫外線が、身体に良くないことはご理解いただけたと思います。このブログは、こどもの健康に関する情報を発信することが目的です。日焼けにおいて「こども」特有の問題はあるのでしょうか。実は、世界保健機構(WHO)はこどもの時期こそ、日焼けや紫外線対策が必要と提言しています[6]。その理由は、大人に比べて免疫系が完全でなく、紫外線による影響を受けやすいことが挙げられています。また大人に比べて皮膚は薄く、火傷の様なダメージを受けやすいのです。さらに、こどもは屋外で活動することが多く、18歳までに生涯に浴びる紫外線の約半分を浴びると言われています[7]。
FDA(米国食品医薬品局)という日本の厚生労働省と同様の機関と米国小児科学会は、生後6か月未満の乳児を直接日光に当てないことを推奨していて、この時期に屋外で過ごすときの日焼けに対する注意点を以下の様に述べています[8]。
・赤ちゃんはできるだけ日陰で過ごしましょう。
・敏感な肌をカバーし、保護できる服を着せてあげましょう。生地を手に当ててみて、透けて見えるほど薄手であれば、十分な保護効果がない可能性があります。
・顔、首、耳に日陰ができる帽子をかぶらせましょう。
また、日焼け止めもかぶれなどの副作用のリスクが高く通常は勧められないとしています。ただし、新生児や1か月の乳児から使えるとする日焼け止めもあるので、使用を迷ったら小児科の先生に相談してみて下さい。
物理的な日焼けが有害であることは、この年代より上のこども達も同じです。つばの広い帽子をかぶせ、肌の露出が少なく、白か淡い色の服が有効です。また紫外線防止効果のある繊維でできた衣類もあるので、利用を検討しましょう。年齢がある程度大きくなったら、日傘やサングラスの使用も有効です。
ただし夏は気温も高いので、長袖の服を着用することによる熱中症も心配です。そのときは、日焼け止めを使用します。日焼け止めは病院で処方することができないので、薬局などで購入します。一般に、赤ちゃん・こども用のものを選ぶのが良いとされています。その時には、低刺激性と書いてあるものを選び、防御指数は日常の生活ではSPF15〜20、PA++海や山ではSPF20〜40、PA++〜+++を目安にします。塗る量や方法は以下の図を参考にしてください[9]。

太陽光にさらされやすい部位(鼻の頭、肩、背中の上$$部など)は念入りに塗ります。日焼け止めを塗るタイミングは、屋外にでる前が望ましいです。一旦塗った日焼け止めも手や衣類に触れたり、汗をかいたりすることで落ちてしまうので、外出が長期になるときは2-3時間おきに塗り直し(重ね)も必要です。
ちなみに、よく日焼け止めに表記されているSPFやPAとは何を表すのでしょうか。それぞれSPF(Sun Protection Factor)とPA(Protection grade of UV-A)の略語であり、SPFが主にUV-Bを防ぐ指標であり、PAがUV-Aを防ぐ指標です。SPFでは数値が大きい、PAではプラス(+)の数が多い方が、紫外線を防ぐ効果が強いです[4]

ここまでのお話で、「もうすぐ本格的な夏がやってきます。こどもは日焼け止めを塗った方が良いですか?」の回答が「生後6か月をこえて、夏に屋外で過ごすときは塗った方が良い。」
とお答えした理由がご理解いただけたでしょうか。
この様な話を直接聞きたい、または何らかの皮膚の症状がすでにあって日焼け止めの使用を迷っている、という方は近畿大学病院小児科を受診してください。また、受診の希望はないけど、ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。
 
近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。
 

竹村 豊

[1] 日本小児皮膚科学会HP(http://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html)
[2] 国立環境研究所 地球環境研究センター(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/radiation.html)
[3] 日本臨床皮膚科医会(http://plaza.umin.ac.jp/~jocd/disease/disease_32.html)
[4] 紫外線環境保健マニュアル(https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf)
[5] WHO: Environmental Health Criteria No.160, 1994
[6] WHO: Sun protection(https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-sun-protection)
[7] るるぶkids(https://kids.rurubu.jp/article/130907/)
[8] FDA “Should You Put Sunscreen on Infants? Not Usually” (https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/should-you-put-sunscreen-infants-not-usually#:~:text=Not%20usually.,effects%2C%20such%20as%20a%20rash.)
[9] 日本小児皮膚科学会、こどもの紫外線対策について(http://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html)

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