カケラの記録 2

 人間ドックの報告書が届いた時、娘は帰省中だったので、私が要精密検査となったことを知っていた。
 娘には即、早く検査を受けた方がいい、と言われていた。帰省から大学に戻る時には、どうだったか結果は教えてね、と念を押されたものの、検査の内容を知ると怖気付く気持ちも湧いていた。また、実は怖がりの娘に、あまり詳しく知らせたくないな、とも考えたりもした。
 でも知らないことでかえって不安がらせるのも良くないかもしれないと考えた。なので、検査当日もLINEで状況を報告した。
 内視鏡検査で見つかった組織片2つ、それをそのまま切除したことから、術後の数日、安静を言い渡された。
 重ねて1週間、食事制限が少しあった。動物性タンパク質を避けなくてはならず、食事の支度に困る日もあったが、夫は夫で鷹揚に受けとめてくれて、ありがたかった。腫瘍マーカーに出てないからまず大丈夫やろ。ドックの結果が届いて瞬時に不安が込み上げた場面で、最初にそう言ってくれたのは夫だった。術後も、解禁になったら焼肉、とユーモア混じりで言ってくれたことで、気が楽になった。
 また同じ検査を受けた経験がある方は、検査前、私が不安がらないで済むようなアドバイスをいろいろ授けてくれた。お話を聞いたどの方も、気が進まない検査、とはおっしゃったが、さっさと受けといたらいいねん。何にもないなら何にもない、大丈夫って早くわかった方がいいやろ。そう言われて、肩の力が抜けた。
 術後に、組織片を切除する処置をしたことを報告した時にも、大きくなり過ぎる前に切除できたことで、すっきりしたやん、と言われて安堵した。その時はまだ、その組織片は良性で大事ありませんでした、という検査結果を聞いて終わる、と思い込んでいた。
 それが、そうではなかったことを知ったのは、検査結果を聞きに病院に行く2日前のことだった。夕方、突然電話があった。
 生検の結果、もう一度詳しい検査が必要となりました。今日から10日後、あらためて検査結果を聞きに来てください。
 スマートホンを手に、ぽかんとしてしまった。これってどういうこと? 
 通話を終えて夫の方を振り返り、言われたことを復唱するうち、喉の奥からせりだしてくるように不安が急に込み上げてきた。(つづく)

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