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他部署への引継ぎ

みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

過日。
「TAKAYUKIさん、今の仕事の一部を蛸三課に引き継いで欲しい」
まさに晴天の霹靂とはこのことなのか…なんて一人思ったところで詮無きこと。サラリーマンは上司の言う事に従うのみなのだから。ワン!

とりあえず、明日のzoomミーティングで引継ぎを行ってくれとの事だったので、僕は大急ぎで引継ぎ資料を作成した。逆に引継いだあと、僕は何の仕事を覚える事になるのだろうか。

翌日。9時20分になった。僕は会議室に移動し、パソコンをON。zoomミーティング用のIDやパスワードを入力した。
そして画面を見た僕は愕然とした。
画面には社長、専務、常務、本部長、仕事を覚える当人(烏賊山くん)、さらに会長までいるではないか。

「きいてないよー」

マジでガチで僕はそう思った。単なる引継ぎとしか聞いてないゾ!

9時25分になると同時に、蛸三課の本部長が僕に気づいた。

「それでは5分早いですが、始めましょう。TAKAYUKIさん、よろしくネ」

なんの前置きも無く、引継ぎがスタートした。僕は前日に作成しておいた引継ぎ事項(A4サイズで3枚分)をそのまま読んで行った。何の工夫もなく、単にそのまま読んで行った。まるで音声AIのようにネ。

結果、僕は15分で役目を終えてしまった。

恐る恐るzoom画面に視線を移した。全員がまだ僕が作成した引継ぎ事項書類をガン見していた。

すると、まさかの会長が口を開いた。

「いいでしょう。TAKAYUKIさん、ありがとう。ご苦労さん!」

なんと、仕事を覚える当人である、蛸三課の烏賊山くんの意見も聞かずに閉幕したzoomミーティング。

マジで、ガチで、これでいいの?

「た、TAKAYUKIさん。あ、ありがとうございます。このあと少し残れますか?」
さすがは本部長。そうですよネ。何の質問も無しに終われませんよネ。

最終的に本部長と烏賊山くんが残った。

「烏賊山、何か質問はないか?」
本部長が言った。先ほどまで僕は緊張していたので余裕がなかったけど、本部長の声が高い。成人男性になると出せなくなるくらいの高い声の持ち主だ。

「そ、そうですね。あとは徐々に慣れながら………」

「馬鹿者! 慣れる前に、今の段階で質問がないとしたら烏賊山、君は天才だゾ」

本部長がキレた。まあ…確かに本部長の言う通りだと思う。僕だってこの仕事を担当して2年。それをA4用紙3枚になんとか纏めたのだ。書ききれなかった内容は、一通り仕事ができるようになってから覚えた方が得策だ。

「え…そうですね。TAKAYUKIさん、あとで電話してもよろしいでしょうか」

「烏賊山!!! お前は何を言っているんだ。今が引継ぎの時間だろ。何であとでわざわざ電話をかけるんだョ。TAKAYUKIさんだって他に仕事があるんだゾ」

zoom画面からも確認できるくらい、烏賊山くんが凹んだ。確か烏賊山くんは僕と同じ40代のはず。こんな引継ぎなんて何度も経験している世代じゃないのかな?

烏賊山くんが視線を上げた。画面上で初めて僕と視線が合った。

「た、TAKAYUKIさん、いつからこの引継いだ仕事を一人でできるようになりますかね?」

やっと質問が出た。僕はちょっと安堵した。

だけど、僕が答える前に本部長が答えた。

「それはお前次第だろ! それに独り立ちするタイミングは上司の俺が判断する事だ。その為には烏賊山、お前の仕事ぶりにかかっているんだョ。ちゃんと覚える気があるのか? 俺の上には常務、専務、社長、会長がいるんだよ。彼らに進捗を報告する義務があるんだョ。頼むゼ、烏賊山………」

なんと本部長まで俯いてしまった。それを見た烏賊山くんも俯いた。zoom画面で2人の姿を見ている僕は、どうしたらいい?

ってか、蛸三課、大丈夫なの?

「あ、あのぅ………」
さすがの僕も声を上げた。

すると2人が同時に顔を上げた。

「引継がこれで終わるのではなく、段階を踏みながら引継いでいこうと考えております。その方が私も安心できますし、何より烏賊山さんが仕事を覚えて頂くのが大前提ですので………」

「TAKAYUKIさん、ありがとうございます。お前も礼を言え!」
「あ、ありがとうございます。TAKAYUKIさん」

こんな感じでzoomミーティングは閉幕した。


僕はお手洗いを済ませたあと、自分の上司のデスクに向かった。

「zoomミーティング、終了しました」
「ご苦労さん。大丈夫だったか?」

僕に視線を合わせず答える上司。なんか腹立つ。

「いいえ。段階を踏んで引継ぐことになりました」
「だろうネ。ぐふッ」

上司が鼻で笑った。それも豚鼻で。余計に腹が立つ。

「なんであの場に常務、専務、社長、会長が参加していたのですか?」
するとここでようやく上司が顔を上げた。
「それは俺も知らなかった。逆にそんな状況だったのなら、なぜ俺をすぐに呼ばなかった?」

メンチを切ってくる上司。マジで腹が立ってきた。

「あなたを呼んだら、僕の代わりに引継をしてくれたんですか?」
「そ、それは無理だろ」

すると上司は再び僕から視線を外した。僕が「あなた」呼ばわりしても気にしない上司。まさに頓馬ですよネ!

「それで、私は何の仕事を覚えれば良いのでしょうか?」
僕はちょっと挑発的に尋ねてみた。上司の眉間に皺が寄った。

「追って連絡する。これから打ち合わせなんだよ」

上司が会議室に向かって行った。

僕は自分のデスクに戻った。

12時のメロディーが室内に流れた。

僕は席を立った。

7分後、僕はお蕎麦屋さんに入店。

「カツ丼とざるそばの大盛りをください」

ストレス解消の為のチンラを注文した、場末のkindle作家でした。

引継ぎは同じ部署内で実施しようネ!



【了】


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