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波打ち際に座る一人の女性
みなさん、おはようございます。
Kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
過日。買い物帰りに愛車をうんならかし、海岸線を走行していたので海水浴場に寄ってみた。
およそ100台は停められるであろう駐車場には、10台も停まっていない。
時刻は14時。おそらくサーファーたちもこの時間帯の波に乗るほど、暇ではないのだろう。ちなみに僕は暇だけど、サーフィンは出来ません。
車を停めエンジンを切ると、前方の海を見ます。久しぶりの海。それも晴天の海です。
僕はパワーウィンドウのスイッチをON!
すると潮の香りが僕の鼻腔に届きました。
打ち寄せる穏やかな波のそばに、一人の女性が座っています。
一人で海にやってきたということは、失恋でもしたのかと勘ぐってしまう。
まあ人生生きていれば様々な問題に直面するのは致し方ない。あとはどうやって立ち直るかだ!
立ち直る手段を持ち合わせていないと、意図しない方向に引っ張られてしまい、気づいた時にはおそらく立ち直り方を忘れてしまっていることだろう。そうなったら自力では無理だ。誰かの手助けが無いと………。
きっとこの女性も、海をみながら立ち直る為にいろいろ模索中なのだろう。犬を散歩している男性がそばを通っても、見向きもしない。深く考え込み、時に内省もしているはず。
僕は海を見ると、必ずと言っていいほど沖縄を思い出す。残念ながらここの海は、沖縄のようにブルーではないけどサ。
沖縄には2年弱住んでいた。部屋のカーテンを開けると、眼下に広がるブルーの海が一望できたのだ。そんな環境下でも、僕はほぼ毎日海を見に行っていた。気づくと海に向かっている自分がいるのだ。それに抗うことはできなかった。
確かに海は人を惹きつける何かがある。それは火を見ることにも通じていると思う。キャンプ場で焚き火をしながら炎を見ている時、僕は大いに安堵しながら、どこか懐かしい気持ちも沸いてくるのだ。
だから海や火を見るという行為は、きっと人間のDNAに組み込まれているのだと僕は信じている。
座り込み考えていた女性が立ち上がった。そのまま海を眺めると、くるっと回ってこちらに進んで来る。その歩き方は、ちょっと跳ねるような感じ。きっと何かが吹っ切れ、無事に立ち直ることができたようだ。そうでなければ、こんな歩き方はしないだろう。
顔の輪郭がはっきりしたところで、女性が笑っていることに気づいた。これで万事大丈夫だ。
女性が車に乗り込んだ瞬間、僕と目が合った。一瞬、女性が僕に会釈したように見えた。だけどそれは一連の動作の中で、単に女性の頭が下がっただけだろう。僕の勘違いだ。
だけど僕の鼓動が早くなったのだ。なんだろう、この違和感は?
女性が車をバックさせた。発進する際、もう一度女性と目が合った。見過ぎだろうと反省しつつも、どういう訳か僕の両目は女性を追ってしまうのだ。
すると女性が、確かに僕に向かって会釈をした。今度は間違いない。
そして、女性が破顔した。
それはとても素敵な笑顔であると同時に、どこかで見た懐かしい笑顔にも見えた。
女性の車が遠ざかって行った。
しばらくして僕は気づいた。
女性は、僕の元彼女だった。
【了】
とらねこさんとのコラボ企画『kindleマガジン』発動中!
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