1日1回は外に出でみよう
みなさん、おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡
過日。
日がな一日、部屋にこもり畳の縫い目を数えていてはダメだ。と、15時過ぎに感じた僕はドライブに行った。陽射しが強くて風もそこそこ吹いている。
愛車に乗って15分。小高い丘というか、寂れた公園に到着した。眼下に広がる街並みを見ていると、気分が高揚してくる。
「皆の者、これより一気に突入する。ついて参れ。えい、えい、オー!」
なんて言ってみた。だって公園内には僕しかおりませんのでネ。
すると、公園の反対側から声が聞こえてきた。
「今は稲刈りの時期だから、どこの農家さんも忙しいんだョ。分かるだろうよ、そんなことくらい」
60代の男性がキレている。僕は声が聞こえた方に近づいた。そこには農家さんと思われる男性が2人と、作業服を着用している男性1人が、荒れた畑の前に集まっていた。
「そ、そこを何とかお願いしたいのです。この立ち合いが終わらないとですね、次のステップに進まなくて僕が怒られてしまうんです。お願いします」
作業服の男性が首を垂れた。男性は水色のバインダーを持っている。おそらくまだ20代だろう。一方農家さん2人は同じような服装をしていて、同じく両腕を組んで沈思黙考している。
こんな山奥の荒れた畑の前で、こんなに深刻なやり取りを見ることになるなんて思いもしなかった。しかも今日は土曜日ですョ。
「一応、俺らからも言ってみるけど、あの人は無理だと思うぞ。なあ?」
農家さん2人が同時に頷いた。
「ありがとうございます。私も明日、もう一度お願いに上がりますので。本日はありがとうございました」
作業服の男性がまた首を垂れた。
農家さん2人は家が近所なのか、そのまま歩き出した。
すると1人が振り返ると同時に、作業服の男性に向かって言った。
「この集落は何年も太陽光に反対してきたんだ。まあ頑張ってみるのも良いけど、あまり集落の人たちに迷惑をかけるなョ」
「あ、ありがとうございまーす」
作業服の男性が大声を上げた。
農家さん2人は僕の視界から消えた。
「はっはーん!」
僕はこのやり取りを次のようにまとめた。
おそらく作業服の男性は測量士さん。で、農家さん2人は荒れた畑の隣に自分たちの畑を所有していて、本日、境界の立ち合いに参加されたのだ。つまり荒れた田んぼを購入して、そこに太陽光を設置する計画なのだ。
だけど境界部が曖昧ではっきりとしないので測量を行い、その測量結果をもとに本日、立会日が行われたのである。
ほいであと一人、立会者がいるけれどその人が一筋縄ではいかない人なので、測量士さんが農家さん2人に首を垂れたのである。自らも明日会いに行くと言っていたけど、果たしてどうなるのだろうか、ということです。
それでもあの農家さん2人は稲刈りで忙しい中、境界立ち合いに参加してくれたのだから、測量士さんからすれば有難いはず。
問題は本日立ち合いに参加されなかった地権者だ。稲刈りのシーズンで忙しくて参加できないのであればまだ望みはあるけれど、もし太陽光自体に反対しているのなら、境界立ち合いには参加しないだろう。
荒れた畑を放置しておくくらいなら、別の方法で活かすのも得策だと思うけど、農家さん2人が言っていたように、集落の人たちの生活も考えると、とても難しい問題だと感じました。
やっぱり、1日1回は外に出るべきだネ! とても勉強になりましたョ。
測量士さんは大きなため息をつくと、僕の視界から消えました。
そして僕はもう一度、下界を見渡します。
「諦めるナ、負けるナ、測量士ョ。君の前途は明るいゾ!」
僕は久方ぶりに大声を出した。そして大いに咳き込んだのであった。
【了】
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