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約11.5回分

詰め替えを失敗しない人と私とは、いったい何が違うのだろう。

シャンプー、洗濯洗剤、食器用洗剤などの詰め替え作業は困難を極める。
私は非常に不器用なのである。
特に詰め替え始めは、細心の注意で神経を集中させて行わなければならない。

まず容器の蓋を開け、安定した場所に置く。
詰め替えの袋も開けて容器の口部に近づける。
勢いよく出てくる洗剤。こぼれる洗剤。洗剤は容器の向こうの側面を流れていく。
目測を誤った。失敗である。
袋から出てくる洗剤の描く放物線を計算に入れていなかった。
また少し無駄にしてしまった。もったいない。

今度こそ失敗しないからな。
放物線も計算済みだ。
失敗すると容器を洗い流す手間が追加され、水も無駄になってしまう。
何としても成功させたい。

今回は食器用洗剤の詰め替えに挑む。
日用品の買い物が面倒な為、詰め替えは大容量で購入することが多い。
パッケージには「超特大 約11.5回分」と書かれている。
これだけ詰め替えられれば暫く買わなくていいだろう、という思いで購入した。
ちょっとデカすぎるな、とは思っていたが。

まず詰め替えの袋を開けようとしてさっそくつまずく。このペットボトルの蓋をミニチュアにしたような蓋、開けにくい。
小さすぎて力が伝わらない。あとなんか滑る。
それは私の手の問題か。
渾身の力を込めて開けることができた。
今日は絶対にこぼさない。

袋をそっと斜めに傾ける。
いいぞ、落ち着いて行け、もうすぐ洗剤が出てくるぞ。
あれ、ちょっと思ったより重いな。
さすが約11.5回分だな。でもこのままだと落とすかも、やばい。
持ち替えた方がいいかなあーーー……

今日は本体が倒れた。倒れた本体の上に洗剤は緩やかに流れていった。
爽やかな香りが立ち込める。
だいぶこぼした。

シャンプーやコンディショナーは早々に諦めて、本体のセットを購入することにしている。
ちょっと高いシャンプーをこぼした時のダメージは計り知れないものがある。
食器用洗剤とは訳が違うのだ。
ここは安全に詰め替えなしでいく。

そもそも私のような面倒くさがりの不器用者は詰め替えには向いていないのだ。
地球、ごめんよ。
私は本体を買うことにするよ。
環境に優しくないけれど許してほしい。
もうこれ以上、詰め替えのたびにハラハラしたくないのだよ。

あれをそつなくこなせる人は、もっと自分に自信を持って欲しい。
何なら「私詰め替え得意ですけど。」と上から目線で言いまわっても良いし、履歴書に書いても良いと思う。

長所は詰め替えが得意なところです。
私だったら採用を即決する。ぜひ来週から来ていただきたい。

今日の読書
田中 康弘 ヤマケイ文庫 山怪 弐 山人が語る  不思議な話




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