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高い

そろそろ車検の時期である。
また行かなくてはならないのだ、あの店に。

少しでも費用を抑えるべく、ディーラー車検ではなく、全国展開している某カー用品店での車検を受けている。
車のことはわからないので、整備の良し悪しはどうでもよいが(よくない)、受付の女性が見ていて気持ちが良いくらいの出来る女なのである。

こちらが何も言わずとも、アプリやハガキのクーポンを即座に計算し、「こちらの方がお得です」と言ったときにはもう入力している。
何をしても無駄がない。
カー用品店の受付だけあって、おそらく車好きなのだろう。何を聞いても聞きたかった答えが素早く返ってくる。
素晴らしい接客である。

古い店舗だが、トイレや整備を待つ間を過ごすカウンターなど埃ひとつない清潔さである。
おそらく彼女が清掃もしているのではないかとふんでいる。

そんな気持ちの良い店舗のどうしても気に入らない点がひとつ。

車検受付カウンターのイスが高すぎる。
ここはショットバーなのか。
「あちらの整備士からです」と言われて伝票が来るのか。

「座ってお待ち下さい」と言われてから座るまでの緊張感。
少し背伸びをして座らなければならないので、バランスを崩して転びはしないかといつもハラハラしながらの着席である。
かつてオープンした時にはこれが最先端だったのかもしれない。
今となっては中年をハラハラさせるアトラクションと化している。

実際のところは整備士さんが立ったままでの打ち合わせになるので、目線を合わせると高いイスになるのであろう。
それにしたって高すぎる。
ベンチや何だったらパイプ椅子でいいから、とにかく低くして欲しい。

毎回車検の時期になると、あの高いイスを思い出し、ほんのり憂鬱になる。
けれど、受付の「出来る女」の受付を体験できるかと思うと重い腰も上がるものである。

あの店の客、ひとりひとりが別の推しポイントを持っているとは思うが、あの店舗の素晴らしさは彼女が担っていると言っても過言ではない。
やはり大事なのは人である。

人と言えば、担当整備士の無愛想さがマイナスなので、出来る女がいたとしてもプラマイゼロである。(当社比)















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