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君のためなら何でもする
小さなカエルの鳴き声が鳴り響く6月の朝、お隣さんの家族が大喧嘩をしているのがなんとなくわかった。なぜなら、僕の家とそのお隣さんはボロイ小さなアパートに住んでいるため騒音はほぼ丸聞こえであるからだ。
朝から元気な家族がいるなと思いながらも二階のベランダに足を踏み入れ、青空を見ようと顔を上げた瞬間、隣の家のベランダから泣いている女の子の声が聞こえた。
「借金があるなんて聞いてないよ、私の人生、親の借金返しで終わるのかな、」
僕の家と隣の家のベランダは約1メートルくらいしか離れていないため彼が
囁いた声は僕に全部聞こえていた。
しばらくすると、彼女が僕の方を見てきた。
するとさっきまで泣いていたのがウソみたいな明るい声で
「あれ、しおん君じゃん!おはよー」とベランダ越しに僕に話しかけてきた。なぜ彼女が僕に話しかけてきたかというと僕と彼女は隣町にある1学年30人ほどの小さな県立の同じ工業高校に通っていたため知り合いであるからである。
彼女は「朝からごめんね、うるさかったでしょ。あ、全部聞こえてた?」と気まずそうな声で僕に尋ねた。僕は「大丈夫だよ。なんか大変みたいだね。何かあったの?」と僕は言った。
「ここだと話しにくいから、あそこの公園にこれる?」と言われたのでなんとなく前髪をセットし、ちょっと季節外れな白いサンダルであそこの公園に向かった。
あそこの公園とは僕と彼女が初めて出会った滑り台しかない公園であった。ゆっくりその公園に向かっていると後ろから「しおんくーん、まってー」と彼女の声が聞こえてきた。後ろを振り向くと陽菜だった。陽菜というのは彼女の名前だ。
しばらくすると陽菜は今朝なにがあったのか、ゆっくり話し始めた。
「私の父親がギャンブルで失敗して4000万の借金があるんだってさー、それでさ借金を5年以内に返さないといけなくて。5年以内で返せないと4000万が利息で5倍になって、だから…2億(?)2億円になるんだって!」と笑いながら話した。
僕は「おい、陽菜、さっき泣いてたじゃん、俺の前ではそのキャラづくりやめてほしい」
これは僕の本心であった。陽菜は「キャラづくりなんてしてないし.」と涙目になりながら僕の方を見た。図星だったんだなと僕は思った。続けざまに僕は「あんま無理すんなよ」と頭を撫でながら言った。
陽菜は学校ではいつも明るい人だった。友達を大切にし悪口を絶対に言わない彼女の優しい性格を憧れる人は多かった。でも僕は彼女がその性格を、いやキャラづくりをしているのを無理してキャラづくりをしているのを知っていた。そのキャラづくりとは本当の自分ではない自分を演じ続けることである。陽菜は僕にいろんな彼女自身のことをはなしてくれた。
すると学校で人気な彼女は弱さを見せることがないのでよく言われることがあったそうだ。それは「陽菜は悩み事がなさそうでいいよねー。いつも楽しそうで!」
一見これは誉め言葉に聞こえるが陽菜自身にとっては一番言われたくない言葉でもあるのさーと僕に次々と今まで思ってたことなどを話してくれた。
今まで貯めていたことをいったおかげか彼女のもとに本来の彼女自身の落ち着いた優しい笑顔が少し戻ってきた。
そしてまた陽菜は泣きながらゆっくりと僕にこういった。「私はさどうしたらいいの?親が次々と作り出す借金をさどう返せばいいかな?」
僕と彼女はまだ高校二年生だ。
一番手っ取り早く稼げるのはアルバイトをするしかない。
だが、アルバイトだけで稼げるのはたかがしれてる。陽菜の親の収入はボロアパートに住んでいるためあまり裕福ではなく、親をあてにすることはまずできないようだ。
だからといって彼女だけがアルバイトをして返せる額でもないよなと僕は心の中で思った。陽菜には悪いが陽菜の親はクズだなと思った。
僕は彼女のことが幼い頃から好きだった。
そうだ、こう言おう。
「陽菜、僕と結婚してください。」
雨がすぐにでも降りそうなじめっとした空気の中、僕は彼女の悩みを打ち消すような声で告白ではなくプロポーズをしていた。
次話ep2.それどころじゃないんだよ…
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