限定承認とは?
今回は相続関係の手続きの中ではマイナーな限定承認という手続きをご紹介します。
以前にお話ししたように、たとえ相続人であっても相続したくない場合には「相続放棄」を家庭裁判所に申し立てることによって相続人の地位から離脱することができます。
本当に相続放棄しちゃいますか?
まったく相続に関わりたくないといった事情のケースにおいては、相続放棄を選択することが良いでしょう。
ところが、被相続人に負債(借金など)があるものの、もしかしたらプラスの財産の方が多いかもしれないから相続放棄の決断に踏み切れない、といった場合ありますよね。
「限定承認」もありますよ~
「限定承認」という方法があります。これは、全体としてプラスになるのかマイナスになるのかがわからない場合において、プラス財産の範囲内で債権者に弁済を行うというものです。つまり、相続人が私財を投げうってまで債務を返済する必要がないのです。
「なんと良い手続きなんだ!」
これだけ聞けばそう思うかもしれません。ところが、年間でこの手続きが利用されるのは1000件にも満たない数なのです。ちなみに、相続放棄については20万件以上申し立てられています。
限定承認を利用する方はなかなかいません…
では、この限定承認が利用しづらい理由としてどのようなことがあるのでしょうか?
理由①
「相続人全員で申し立てをしなければならない」というハードルがあります。
相続放棄は、相続人1人1人が別々に申し立てることができますし、その手続きもイレギュラーなケースを除いては非常に簡単です。
つまり、限定承認においては、1人でも手続きをしないという考えを持っている人が相続人にいる場合には、そもそもこの手続きが利用できないわけですね。
理由②
「手続きが煩雑すぎる」ということが挙げられます。限定承認は、家庭裁判所に申し立てをするのですが、申立をするにも書類の準備が煩雑ですし、申立をしてからも相続財産を選任し不動産など換金できる財産の競売、債務の清算など時間のかかる手続きがあり、すべて終わるのに1年以上かかることもあります。
相続って難しいですね。
その他、税金面においても、故人が取得した際の価格より価値が上がっているような場合には、譲渡所得税として課税されるケースがあるなどのデメリットがあります。
このような理由から、プラス財産とマイナス財産がはっきりわからない場合には利用すべきでは?と思ってしまいがちなのですが、実際には利用しづらい制度なのです。
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