営農型太陽光(ソーラーシェアリング)で一時転用制度を20年の事業計画に流用している「転用期間不整合」問題
営農型太陽光(ソーラーシェアリング)を実施する場合、太陽光発電設備の支柱を一時転用することが必要です。逆にいうと、営農型太陽光制度でソーラーを設置する、ということは、支柱に一時転用をすることを意味します。
一時転用制度というのは、通常、農地法4条や5条で永久転用ができない優良農地や農振農用地でも認められています。一時転用というからには一時的なものであり、通常は、農地を一時的に工事用車両の通行路として使用する場合や、一時的な資材置き場にする場合など、文字通り「一時的な」使用の場合に適用されます。
営農型太陽光制度(ソーラーシェアリング)ではなぜかこのような「一時的な」転用制度を20年の、どう考えても一時的でない太陽光設備に流用しています。何ともおかしな制度です。
転用の事務を使う農業委員会は20年の計画だということを知らないで転用許可をしているのでしょうか。いえ、間違いなく20年の計画だということを把握したうえで一時転用許可を出しています。この場合、一時転用の期間は原則3年です。
何故把握しているのかというと、農地転用の申請を出す際に、「転用の確実性」(農地法運用上定められている基準)を示す根拠資料として、再エネ特措法上の買取制度の認定書を添付することが求められるためです。再エネ特措法上の買取制度は20年です。
以上が、営農型太陽光制度の期間不整合問題です。通常、短期で使用する一時転用制度をどう考えても長期である、20年以上の事業計画に流用している。このことが含意するのは、発電事業の20年の期間中、一時転用許可を繰り返さなければならないということです。3年の転用の場合、7回許可を得る必要があります。
このことの問題点は何だろうかと考えてみます。
まず設備所有者にとって、一時転用期間が3年出あるからといって大きな投資をした太陽光発電の事業を3年で終了する、ということはまずありえないので、かならず許可を得続けなければなりません。一方で、営農型太陽光制度のの制度では、根拠となる農水省通知で、耕作義務・反収8割以上の義務を課しており、逸脱したら撤去命令が出ることになっています。
したがって、事業者は営農型太陽光制度制度の根拠が法的拘束力のない技術的助言であるにもかかわらず、3年ごとの転用許可更新を天秤にかけられているため、この通知に従わない自由が一切ないということです。逸脱したら撤去命令が出されるものに選択の自由があるわけがありません。
ここから、この農水省通知が技術的助言の枠内を完全に超えた、個人の財産権を制限している、ということが良くわかります。