営農型太陽光通知に不適合となると法律違反と扱われる奇妙さ
営農型太陽光(ソーラーシェアリング)を実施して、営農が「不適切」とみなされると、次の一時転用許可を得ることができず、違法転用扱いとなる。つまり違法行為をしているものとみなされるのである。
ここで、次のような疑問が生まれる。この違法行為とは何の違法行為だろうか。もちろん、農地法違反である。農地法で必要な許可を得ていないで転用行為をしているという扱いになるわけである。では、農地法の何に違反しているのか。それは4条または5条といった転用を定める規定に違反している。では、なぜ許可を得ていないのか。それは申請して不許可となるからである。なぜ不許可になるのか。それは営農が不適切だからである。
では、適切な営農を定めた農地法があるか。なにもない。農地法は農地を公共の福祉視点から保護するために、権利の移転に制限を加えるものである。したがって、農作業について適切さを定めるような内容はない。たとえば、稲作をするときに何月に田植えをしましょうとか、田んぼの水はけ具合はこのようにしたらよいとか、このような農機具を使うとよい、とかそういったことを定めた条文は一つもない。
そうすると、不許可の根拠は営農型太陽光を定めた農水省通知しかない。ところがこの通知は自治事務に対する技術的助言のもので、農地法に解釈を加えるものでしかなく、法的拘束力はないものである。
そうすると、なんら法的拘束力がない農水省通知だけを根拠に、それに不適合であることをして、法律違反という扱いがされることになる。この不合理さ・奇妙さが分かるだろうか。この不合理さはどう説明できるだろうか。技術的助言的地位でありながら、それが法律同然と扱われ、通知不適合がほぼイコールで法律違反となるわけである。簡単に分類すると、本来、この農水省通知が実際に技術的助言的性質のものであれば、次のような整理ができるはずである。
・農水省通知に不適合だが、農地法には違反していないもの(A)
・農水省通知に不適合で、かつ農地法にも違反しているもの(B)
・農水省通知に適合しているが、農地法には違反しているもの(C)
・農水省通知に適合しており、農地法にも違反していないもの(D)
上記でいうと、営農型太陽光には、(B)と(D)しか、ありえない構造になっている。その理由は、従来の農地法に、「ソーラーシェアリングでの適切な営農」を定める基準が全くないからである。そのため、許可権者である地方自治体は、営農型太陽光の農水省通知を文字通り、独立した法律のように扱わざるを得なくなる。
この結果、ソーラーシェアリング実施後に、農作業での収量に問題があるということが、法律違反として扱われるわけである。実態が、「パネルの下での未知な環境であるため、想定通りにいかなかった」であれ「営農者が健康を害してしばらく休んでいたため」であれお構いなしである(農業委員会がこうした理由を考慮する場合は別かもしれないが、逆にいうと、農業委員会の慈悲に期待せざるを得ない構造があるわけである)。
ところで、一般に農地法違反という場合、農地法で規定された農地に、何ら許可を得ずに建築物を建設するような行為が該当する。これに対して、ソーラーシェアリング実施後に営農活動結果を理由に再許可が得られない「違法行為」は全く性質が違うものである。後者の場合、初回に許可を得られたのであれば、再許可が得られない結果としての「違法転用行為」というものは何もない。違法たる行為を何もしていないからである。このような「違法」というのは、反収8割以上を求める農水省通知(くどいが何ら法的効力がない通知)に適合していない、ということでしかない。
このような「違法行為」の違法性理由は、許可権者いわく「(営農型太陽光の農水省通知で定める)適切な営農を行っていないため」となる。しかし、農地法で適切な営農など何も定められていない。そもそも、そのような「適切さ」を定めて国家が規制をすることは、経済的自由権(憲法22条、29条)に明らかに反するのである。