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思い込みが人を不幸にすることもある
ふと10数年前の出来事を思い出しました。
私は片側二車線道路を原チャリで帰宅中、信号が赤になったので停車しました。
夜遅い時間だったこともあり、信号待ちをしているのは私だけ。
目の前の横断歩道を一人のおばあさんが渡っていました。
すると後方からオートバイの爆音が…
(ったく、こんな夜中にうるせーなぁ)
と思ったのも束の間、そいつは私の斜め後ろあたりで、人を威嚇するようにさらにアクセルを吹かしました。
それで慌てたのが道路を横断中のおばあさん。
焦った様子で小走りで横断歩道を渡ります。
すると、そのバイクはそのまま赤信号を無視しておばあさんが通ったすぐ後を突っ走って行きました。
顔はもちろん見えませんが、雰囲気的には若い兄ちゃんの二人乗りだったと思います。
バリバリと音を上げ、蛇行しながらアっという間に行ってしまいました。
(危ねーなぁ、ったくしょうがねー奴らだ)
そう思い視線を戻すとその傍らには道路を渡りきったさっきのおばあさんがこちらを見てました。
「ん、どうしたのかな?」と思って、よく見るとそのおばあさんは大きく目を見開き、明らかに私に対して怒りの表情を浮かべていました。
(え、何?どうした?)
なんで自分に対して怒っているのか理解できず狼狽する私。
するとおばあさんは何か文句を言いたげな表情で大きなため息をつき、首を傾げながら路地を曲がって行ってしまいました。
(以下、私の心の声)
「え?威嚇したのも信号無視したのも俺じゃないよね?」
「ひょっとして仲間と思われた?いやいや、俺が先に信号待ちしてたのは知ってるよね?さっきのバイクはそのずっと後ろから走ってきたのも見てるよね?どう見ても仲間じゃないよね?」
「危険運転を止めようとしなかったから?いやいや、後ろから走ってくるバイクをとっさに止めろって言われても無理だって!前に出たら轢かれるって!」
「追いかけて注意するべきだった?いやいや、俺まで信号無視して進めってか?
そんなことできないし!原チャリじゃ追いつけないし!追いついたとしてもあんなことする奴らが俺の注意なんて聞くわけないし!」
「俺はどうしたらよかったの?俺に何ができると思ったの?」
ほんのちょっとの時間で私の脳みそはフル回転です。
でも当然正解はわかりません。
信号は青になり私は前進。
気持ちとしてはさっきのおばあさんを追いかけて「私が何か悪いことしましたか?」と尋ねたいところですが、先ほど怖い思いをしたばかりのおばあさんを追いかけて話しかけたりしたら、余計に怖い思いをさせるだけでしょう。
煮え切らない思いで帰宅の途につく私。
(なんで俺がこんな不愉快な気分にならにゃいかんの?)
そしてやっと家に着き原チャリを降りてミラーに映った自分の姿を見たときに私はアッと思いました。
私が乗っていたのは白い原チャリ。
私の服装は黒のダウンに黒のパンツ。
(ひょっとしてあのおばあさん、俺のこと警察官と勘違いしてた?)
正解かどうか定かではありませんが、そう考えるとあのおばあさんの行動にも納得がいきます。
「信号無視で歩行者を轢きそうな危険運転をしている輩を見て見ぬふりの警察官」
そりゃあ、そんなの見たら「何してんの、この警官は!早く追いかけて捕まえなさいよ!ボーっとしてんじゃねえよ!」と思うのは当然でしょうね。
(ち、違うんだおばあさん! 俺はただの一般人なんだぁ!)
しょーもない話を長々と書いてしまいましたが、何が言いたかったかというと要するにタイトルどおり。
「思い込みが人を不幸にすることもある」
ということです。
この出来事で悪いのは信号無視をした奴らです。
おばあさんは悪くありませんし、私だって悪いことはしてません。
でも、不快な思いをしたのは私たち二人です。
ただ、あくまでも推測ですが私の不快な思いは、おばあさんの思い込みからきたものです。
しつこく繰り返しますがおばあさんは悪くありませんし、たまたま大事には至らなかったものの直接の被害者と言えるでしょう。
でも、あえて言わせてもらいますが、私の場合はとばっちりを受けたようなものです。
他人に避難の目を向ける前に自分の認識に間違いはないのか?
いくら自分が不快な思いをさせられたからといって、その感情を他人に向ける前に一度冷静に問いかけることの重要性を感じた出来事でした。
「感情は伝染する」と言われています。
それは「好い感情」も「悪い感情」も同じです。
頭に来た時こそ「悪い感情」をそのまま周りに伝染させないよう気をつけたいものです。
そしてどうせなら伝染は「好い感情」のほうにしたいと強く思った出来事でした。