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天使との馴れ初め
初めて天使に会ったのは、
幼稚園の時だった。
その天使は自分より少し若くて、赤ちゃんみたい。背中には白い羽が生えており、パタパタと飛ぶことができる。髪の毛は若葉のような綺麗な新緑色をしている。
日本語は話せないみたいで、ときどき
く ぴ ぷ
と言う。
その天使はいつも
私より少し年上の
髪色が紫の女の子と一緒にいた。
天使の名前は 「がっちゃん」
それから数年後、九州に旅行する機会があった。観光地を巡り、ハウステンボスというところに行った。その中にあった建物の一つに、壁一面に羽が生えた人間達が描かれおり、その絵のグッズがたくさん売られていた。
私が知っている天使(がっちゃん)とは違い、見た目は人間そのもので、日本人ではなく西洋人に近かった。赤ちゃんも大人も、女の人も男の人もみんな白い羽が生えている。
その時、サンタクロースを信じていたし、キョンシーが本当にいると思っていたし、私が実際に見たことがないだけで、外国には天使と言う人達が本当にいるんだと思った。
旅行から帰って母にそのことを話すと、笑いながら そんな人はいない と言われた。
ツクリモノだと知ってがっかりしたと同時に、なぜそんな羽が生えた人間の絵を描くのかが気になった。
それからさらに何年も経ち、ある販売の仕事をしていた時、先輩が常連のお客様ととても楽しそうに話をしていた。
先輩は聞き上手で、お客様も熱心に何かを話されている。接客が終わり、お客様が帰ったあと、先輩が浮かない顔をしていた。
なんの話をしていたか教えてもらうと、宇宙とか天界とか、ちょっとよくわかならい話だったとのこと。そしておすすめの本があるとのことで後日、お客様が本当にその本を持ってきてくれた。だけど先輩は仕方なく受け取り、本はいらないとのことだった。
私は本の中身が気になり、読んでみた。
すると著者の紹介の部分から、先輩がなぜ本をいらないと言ったのかがわかった。
その本はハピネスをサイエンスしている人達が書いた本だった。
信仰は自由だけれど、本物は不安を与えたりしないし、金銭のやりとり等は発生しないと思っている。
気になった本の中身は、最初に天使の話がふんだんに書いてあった。
そこから天使とは、
私の中では人間が都合よく作り上げた、商売道具の一種のようなものになった。
そして数年後、今度は大きな図書館でまた天使に関する本に出会う。
その本の表紙には「エンジェルナンバー」と書いてあり、数字には天使からの色々なメッセージがこめられているとあった。
この数字のしくみを最初に思いついて本にした人は、儲かっただろうなあと感心し、10冊借りられるうちのひとつに、その本を選び読んでみた。
その本を借りてひとつ良かったことは、
4という数字について。
日本では4という数字はあまり縁起が良くないと言われることが多いと思う。だけど、その本には4は天使たちが側にいて見守っているというサインだった。そのため、それまでは嫌な思いだった数字を良い意味に捉えることができようになった。
そして数年後、この数字に心底助けられる体験をしていく。
ある日、平凡でそれなりに幸せだった日常が、オセロのコマが白から黒になるように、真っ暗になった。カレンキングストンの本に出会ったのもこの頃。
信頼していた人に嘘をつかれていたことが発覚し、数百万のお金と家と仕事を失った。
それから色々あって、引っ越しを余儀なくされ、その時も進んでいた道の先がなくなって、後戻りを余儀なくされた。
身一つで新たな引っ越し先にとりあえず戻ってきたため、自分の荷物を引っ越し先に運ばないといけないのだが、ショックが大きすぎて頭が上手く働かない。
それでも頑張ってアリさんやパンダの引っ越し屋さんに電話をしてみたが、運びたい荷物の中に植物があると伝えると、全部断られてしまった。
大事な植物を運べないことにもショックを受け、それから私は荷物を送ってもらうことを諦めた。もう気力がなく、わずか数週間でLサイズからXSサイズになり、動くことができなかった。
すると、数日後に一通の連絡が来た。
私を騙していた人から、荷物を送るからと。
そして数日後、ちゃんと荷物が届いた。
引っ越し屋さんとは思えないような、なんだかとても良い香りのする爽やかで目がキラキラした、とても感じの良い笑顔が素敵なお兄さんが一人、はるばると遠いところから運んで来てくれた。
荷物が入っていた箱には、
アリさんでもなく
パンダでもなく
手に箒を持ち、翼の生えた可愛い女の子の絵が
描かれてた。
そんな引っ越し業者さんを見たことがない。
天使が引っ越し屋さんに変装して、
もしくは荷物が上手く届くようにあらゆる手配をしてくれ、私の荷物を全部無事に運んでくれた。
天使なんていないと思うけど、
その時はいるのかもと思った。
お兄さんも天使みたいにキラキラしていた。
中身は丁寧に全部仕分けされ、わかりやすく入っていた。
私は引っ越し代を払うこともなく、荷物を梱包することもなく、魔法のように全部手元にやってきた。
信用ができない人と一緒に生活をしていかないといけない毎日が大変辛く、全て私が望んだ結果とはいえ、この時期はとても辛かった。
でも周りの人のおかげで、全て滞りなく順調に事が運び、私の頭の中以外は全て、新しい生活の準備が着々と整って行った。
よしもとばななさんが本に、自分ではどうしょうもない、運命の分かれ道のようなものがあるということを書かれていたのを読んで、少し気持ちが楽になった。
そして数ヶ月後、ある手続きをするために、また大きな町に行かないといけなくなった。
XSサイズになってしまい、一人で行ける精神状態ではなかったため、家族が付き添ってくれることになった。
出かける日には、当時なでしこジャパンの大切な試合が午前中に開催される日になっていた。
でも、出かけないといけないから見る事ができない。残念に思いながら寝た。
そして次の日、思いのほか早く目が覚めた。
その時、ある人から農業を教えてもらう機会があり、8畳分くらいの畑で、自然栽培の野菜やハーブを育てていた。
いつもの日課で畑に向かう。
まだ夜明け前で、うっすらと明るいくらい。
畑に向かう途中から異変に気がついた。
何かタンポポの綿毛ような白いものが
畑にたくさんある。
夜明け前にしか咲かない花なのか、不思議に思いながら近づくと、小さな羽毛が私の畑だけに、一面に散らばっていた。
フワフワの羽毛だらけになっている畑を見て
泣いた。
羽根は天使が側にいるからと、見守っているからと教えてくれるサインらしい。
この日、これから起こる辛い出来事を見透かして励ましてくれているように感じた。
でも、現実にはこんなに大量の羽根があるのはおかしいと思い、畑の周りを見渡すと、枇杷の木の下に羽があった。
羽というか、翼が落ちていた。
翼以外はおそらく動物に食べられた痕跡があり、羽の色は珍しいミルクティー色をしていた。
それは近所で飼育されているレース鳩だった。
毎朝、夜明けと共に鳩たちは一斉に外に出て、 空を跳ぶ。
子供の頃から見慣れた光景だったけど、毎朝美しく旋回するハトが飛ぶのを見られるなんて、貴重なことなのかもしれない。
とりあえず綺麗な羽毛たちを集めて、そのあとすぐに目的地に出発した。
目的地に着くとたくさんの人がいて、
自分の順番を待った。
担当してくれた方が、こちらの状況を察してくれて、とても優しく暖かく対応してくれたのでまた泣きそうになった。
手続きが終わり、家族の元に行くとそこには大きなテレビがあり、なでしこジャパンの試合の真っ最中だった。
そしてその試合でゴールが決まり、勝利を納める瞬間に立ち会うことができた。
そこにいた見ず知らずの人達もみんな笑顔で、一緒に手をたたいて喜んだ。
もう見れないと思っていた試合を見ることができ、無事に目的も果たすこともできた。
今までも、絶対絶命の時というと大袈裟かもしれないけれど、もうどうしようもないときに助けてくれる人たちが現れたり、状況が勝手に整ったり、全て上手くいった。
これはほんの一部で、
この時期は、自分では動くことも考えることもできないお手上げ状態だったが、何かが色々と手配をしてくれているような、不思議な出来事が多発した時期だった。
あしあと
ある夜、わたしは夢を見た。
わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。
暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。
どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。
ひとつはわたしのあしあと、もう一つは主のあしあとであった。
これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、
わたしは、砂の上のあしあとに目を留めた。
そこには一つのあしあとしかなかった。
わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。
このことがいつもわたしの心を乱していたので、
わたしはその悩みについて主にお尋ねした。
「主よ。わたしがあなたに従うと決心したとき、
あなたは、すべての道において、わたしとともに歩み、
わたしと語り合ってくださると約束されました。
それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、
ひとりのあしあとしかなかったのです。
いちばんあなたを必要としたときに、
あなたが、なぜ、わたしを捨てられたのか、
わたしにはわかりません。」
主は、ささやかれた。
「わたしの大切な子よ。
わたしは、あなたを愛している。あなたを決して捨てたりはしない。
ましてや、苦しみや試みの時に。
あしあとがひとつだったとき、
わたしはあなたを背負って歩いていた。」
マーガレット・F・パワーズ
translation copyright(C)1996
わたしはキリスト教徒ではないし、特に何かを信仰しているわけではない。
お盆も
お正月も
旧正月も
お彼岸も
クリスマスも
イースターも
ハロウィンも
全てお祭りのように楽しむ。
強いて言えば、ターシャテューダーが話されていた、スティルウォーター教が好きだ。
…..「彼女(ターシャ)がスティルウオーター教を作ったのは、何かあったときに神様のせいにしたくないという思いからです。庭作りでも畑仕事でも、生きていればうまくいかないことはたくさんありますよね。でも、そのとき、お願いしておいたのになぜこんなことになるの? と神様を恨むのは潔くないと」
――自分の人生を、他人のせいにしない...。
「そうです。もう一つは、スティルウオーター(静水)のあり様をターシャが好んだから。自然の中に水があれば、春は木々の緑を、秋なら紅葉を映しますよね。水そのものに色があるわけではなく、その周りにあるものを映し込んで、きれいです。ターシャは、自然や自分の周りの環境をそのまま受け入れ、一体となったとき、そこに美しさがあるはずだと考えていたのです。だから、自分は水であれと」
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神社の散歩道で、珍しい羽根を拾った。
とんびでもなさそうだし、フクロウでもない。
調べるとチョウゲンボウという聞きなれない鳥の名前が出てきた。夜行性らしく、姿は見たことがない。
でもついこの間、ダーウィンが来た!というNHKの番組で、パリの鳥特集をしており、
チョウゲンボウが出てきた。
嬉しくてみていたら、チョウゲンボウが狩りをするときにホバリングをする姿勢が
「聖霊の飛行」
と呼ばれ親しまれていることがわかった。
せい‐れい【聖霊】
《Holy Spirit》キリスト教で、父なる神、子なるキリストとともに三位さんみ一体を形成する第三の位格。人に宿り、啓示を与え、聖化へと導く。助け主。慰め主。
カメラはその聖霊の飛行を捉え、
周りの人達は目をキラキラさせながらその美しい姿を見ていた。
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