35歳のNZ留学【ランギトト島・続】
私は今どこにいるの?
不安に襲われながら道を進む。すると突然道が消えた。これは…前にも経験したことがあるぞ。
タカプナでも確か同じようなことがあった。初めは道の上を歩いていたのに突如道がなくなるという摩訶不思議な現象。
ダメ元でGoogleマップを開いてみる。すると意外にも自分の居場所が判明した。詳細は分からないが、おおよその自分がいる位置は把握できた。
私は今、島の中腹にいる。
…中腹?
もう昼の12時を回っているというのに中腹にいるのはまずいのでは?
道に迷っているという疑念に加え、帰りのフェリーに間に合わないという恐れまで出てきた。そこに、初めて”人”を発見する。
この道で合ってる!よかった!
ほっとしたのも束の間。
「すれ違った」が意味するのは、相手はもう下山しているということである。サーッと蒼くなり一瞬にして追い込まれた。それでも直ぐに気を取り直して「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせた(留学中頻繁に自分にこの言葉をかけている)。息を切らし黙々と登る。中腹よりやや上にきたかという所でパッと視界が開け、広大な海と隣島を臨む素晴らしい眺めが広がった。眺めているうち、気力も体力も尽きそうになっていた自分の中から元気が湧いてくるのがわかった。
進もう!
道中木々の無い道は暑くて、ああもうダメだ…と思ったり、最短コースを選べば良かった…と後悔に駆られたり、帰りのフェリーに乗れなかったら…など心の中でたくさんの弱音を吐きながら、なんとか頂上に辿り着いた。
午後2時半を過ぎていた。時間が差し迫りまずい状況であることに変わりはない。しかし360°の景色は最高だった。圧巻の景色をケータイのパノラマ写真に収めてみたが何とも迫力がなくなってしまう。
自分の目に焼き付けた。
よし、下ろう。
無論帰りは直線コース一択である。殆ど駈け下りたと言っても過言ではない。
おお、直線コースの何と歩き易い。
4時間かけて登った島を1時間ちょっとで下山した。私はどれだけゆっくり登っていたのか、それともあの所要時間の目安自体がクレイジーだったのか。とにかく、フェリー出港時間まで少し休める。
トイレにも行ける。
無人島で野宿することにはならなかった。
よかった。
そして島の中であれほど人に出会わなかったのに、麓に着いてみれば行った時と同じ、大勢の人の姿がそこにあった。