10年間気持ちを伝えられずにいたのが一瞬で馬鹿らしくなった話
片思い氏は急に引っ越して遠くへ行ってしまった。突然誰にも何も言わずに。
転勤した。
転勤して1ヶ月以上経って、SNSへの投稿で知った。新任地に赴いて早々、出張で忙しくて報告が遅れたとのこと。
今までは電車で気軽に行き来出来る場所へいたので、
「次、いつ誘おうか?なんて声かけようか?」
と、モヤモヤしながら様子を伺っていた。
3月に会ってから少しして次の飲み会の予定を立てようと思い都合を聞いたら返事がなかった。
この1年、本来の職種とは違う部署で忙殺され、会う度に顔色も機嫌も悪かった彼を知っている身としては、凄く誘いにくくて、たまに数分だけ会えても顔色を見たら気の利いた言葉も掛けられなくて、
「大丈夫?身体に気をつけて。落ち着いたらまたくだらない話して飲もうね」
と言うのが精一杯だった。誘える雰囲気はどこにもなく、声をかけても予定が立たず断る体力が必要になったら悪いな。
と思って敢えて声をかけずにいた。
故に、転勤の事実を知った時は、
もうこのまま連絡が取れずに逢えなくなるんじゃないか?
とさえ思って、不安に押しつぶされそうで、仕事が全く手に付かなかった。食事も出来なくなった。
ヤバい。病んでる。ババア病んでる(苦笑)
このままでは闇堕ちするだけだと思い、いつ読むのか、返事が貰える宛もないメッセージを片思い氏に送った。
新任地いかがですか?元気ですか?
今いちばん聞きたいシンプルなことだけ書いて送信。
返事は…とりあえず来た。送ってから4日後。
恐る恐る、メッセージを開いた。
元気です😀
新任地、最高です🥰
………?
凄く元気で機嫌良い!
この1年間見たこともなかったゴキゲンな顔文字付いてる!
はぁぁぁ?
私の中で何かが崩れ落ちた。
今まで散々心配して、悩んで、元気で仕事ができるように毎日祈るような思いでいたのに…
新任地に移動したら、去年までの日々が無かったことのようにご機嫌。
機嫌が治って良かった。元気になって安心した。
と、思いつつも…
あんなに病んでたからずーっと心配してたのに、お気に入りの土地に行ったら手のひら返したようにイキイキしやがって。私の心配と不安と祈りの1年間を返せ!
(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
ほんっと、馬鹿みたい。私。
そして、今までのモヤモヤが一気にどっかーんとぶっ飛んでどうでも良くなった。ついでに10年間、関係性が壊れるのが怖くて想いを伝えられずにいた気持ちも一緒に消えた。
そしてなぜか、物凄く清々しい気分になった。
勢いに任せて私は思わず、今いちばん聞きたいこと、知りたいことを返信したのである。
あなたが大好きな土地のこと
あなたのことが大好きな私に
教えてください。
返事はまだない。既読ですらない。
でもなぜか、私の中で達成感ではない。爽快感が身体中を駆け巡っている。
あんなにも好きだと言う言葉を使うことに躊躇っていたのに、10年間をたったの10秒で超えてしまった。
相手の気持ちを測って退くのではなく、自分の気持ちを大事にして押してみよう。
何も考えずにただ本能のままメッセージを送ったその日は、恋が叶う夜と呼ばれる、満月の十五夜だった。