好きな俳句たち〜句具ネプリ【2024秋分編】〜
句具、という俳句に特化した文房具屋さんがあります。
句具さん(というか、主催は後藤麻衣子さん!)が今回も秋分という節目にネプリを作ってくださるとのことで、私も参加させていただきました。
長い夏もいよいよ終わりを迎え、秋の気配を実感している今日この頃。
素敵な句がたくさん集まりました!
先入観なしに読みたいので、俳号を隠して読んではじめの印象を大事にしました。
いいなぁと思う句と、合わせて感想を言わせてください!
(もし、不本意であったら遠慮なく申し出てください。適正や削除など、臨機応変に応じたいと思っています。気軽に言いつけてくださいー!)
いろがみのいちまいはしろ冬近し/隣安
(いつもの折り紙セットの光景に改めてハッと気付かされることと、季語がマッチしていて素敵)
DJの優しき声や星流る/花星壱和
(選曲が絶えず、声でフロアを沸かすDJ。季語と相まってキラキラしている)
膝すこし曲げて受くるや赤い羽根/河添美羽
(スーパーや駅前で呼びかけてくるボランティアの小さい子から受け取っている、優しい句)
黄金の波に溺るる案山子かな/岡田 耕
(稲が実る季節、案山子は何もない田んぼも見ていたことだろう。案山子は案外嬉しそう)
秋ですね風を食べても太るのは/イサク
(食欲の秋!強く同意!そう。風からしておいしいから太っちゃうのは仕方がないのである)
コールアンドレスポンス秋澄みにけり/笠原小百合
(我々が秋を呼んでいるのであり、秋はそれに応えて来てくれたのである!長かった夏…)
水澄むや雄鹿の角の剥がれをり/庭野環石
(綺麗な森林に住まう雄鹿なのだろう。角の表面も剥がれていよいよ秋なのだ)
焼秋刀魚きみがのこした骨きれい/八日きりん
(私もそんな人好き。秋刀魚なのだから、大根おろしやかぼすもきれいにしているだろう)
ホルン抱く色無き風の手触りに/六文風鈴
(私も楽器の句ができたらなぁと憧れる一句。風の手触りとは何と素敵な表現)
母の焼くレモンケーキや誕生日/星月彩也華
(星月さんの句はいつも惹かれる。レモンケーキが焼ける母はきっとかわいい)
星合や絆創膏を不器用に/星私虎亮
(貼る際にくっつかせてしまう不器用さ。彦星、織姫が待ってるぞ急げ…!)
野を行けばつぶされさうに吾亦紅/小澤ほのか
(素朴な吾亦紅だ!けれど野にはワサァと色とりどりの植物も栄えているわけで)
踏切の一時不停止石榴爆ず/草夕感じ
(近所の踏切では大抵の車がルールを守っている。ルール守らないと…こうなるぞ!力!)
裏金のやうにどんぐりもらひけり/このはる紗耶
(へへへコイツでどうだい?という闇のやりとりが聞こえそう。団栗だからユーモアある句)
泣きさうなわたし笑つている案山子/藍創千悠子
(案山子の表情のことを句にしたのがすごいし、泣きそうな私への励ましが染みる)
落鮎やドリップコーヒーの琥珀/三浦海栗
(ドリップコーヒーのあそこのことだ!落鮎と取り合わせられるなんて発想が素敵)
八月尽大イグアナと海へ行く/細葉海蘭
(冒険家なのか、相棒を大きなイグアナとして大海へ進んでいく壮大な光景が浮かんだ)
木犀や寝癖直して不登校/檜野 美果子
(描写がリアルで身近にいらっしゃるのかと感じた。寝癖を直すだけでもえらい!)
サタンにも吾にもくちびる曼珠沙華/嶋村らぴ
(くちびるがある…ハッとさせられた。だからといってサタンは容赦しないのだ)
お譲りします。鶺鴒の一行詩/にしぐちたける
(私は動物の句を作るのが多分苦手。こう詩的に作れるようになりたい。囀が物語になる)
皮引いて桃の白さを汚しけり/円堂実花
(急いで食べないと色が変わっていく様を俳句に昇華されていてすごいと思った)
猫じやらし向きを揃へて手向けたり/杉澤さやか
(猫じゃらしの向きを揃えたことがある人はわかる。相手のことを想っていないとできない)
満月や押されて痛む白毫相/かほ
(満月パワーは仏様をもほぐし、「あいててて」と言わせてしまうのだ!)
たましひのにごる夜長の便秘かな/ギル
(便秘を題材に俳句に昇華、さすがギルさん。便秘が詩的に表現されていてとても綺麗)
芋虫の曲がらむとして縮みけり/千野千佳
(吾子が生まれて虫に目を向けるようになった私。こんな芋虫いるし愛らしく感じた)
秋寂ぶや坊主もすなるドライヤー/山本たくみ
(日常品・ドライヤーが「坊主もすなる」が捕まえて俳句に昇華された句。季語とのマッチ!)
スルタンは知らぬ名月の密会/天雅
(「名月の密会」月光眩い夜に密会だと?!よほど注意を払って密会しているに違いない)
群馬から栃木にかけて蚯蚓鳴く/クズウジュンイチ
(私のイメージする土地柄と合致し、確かな説得力を感じた。蚯蚓鳴くはこう使うのかと納得)
人見知りの手に林檎のうさぎかな/つまりの
(人見知りだからわかる。自分から話しかけには行けないけどきっかけなら作れる…!)
着信を拒否し檸檬を乗せてある/竹内桂翠
(檸檬を乗せるのは比喩だろうが、魔除けな意味合いを感じて面白いと思った)
引き抜いて生姜は原罪のかたち/鈴木総史
(生姜のゴツゴツのあの形を「原罪」と表現する目、ワードチョイス、素敵)
しづかなるまだ温かき猪を負ふ/清水縞午
(無言で行われる作業。武骨な手が命に敬意を払い、猪を背負って進んでいる様子が浮かんだ)
秋冷の巴里の待かど手風琴/村山恭子
(手風琴とはアコーディオンのこと。パリには行ったことはないが雰囲気がとても好み)
イニシャルの煌めく指輪新酒の香/井上れんげ
(新酒のめでたいイメージと指輪がマッチして、どちらも光り輝いている。素敵)
木簡の恋文やさし女郎花/紀宣
(木簡の恋文、太古の男女のやり取りだと想像した。日本の女郎花の美しいイメージと合う)
残暑なほ床のべたつく町中華/みらんだぶぅ
(町中華の説得力。床がべたつこうが、おいしけりゃ満点。残暑だからこそ町中華!)
サルビアになつた人から帰れます/沖原イヲ
(不思議な句。好き。どういうことかわからないけれど従うしかない。どうサルビアになろう)
オクラ刻む父よ明日は入院日/となりの天然石
(ネバネバのオクラを刻める父、妻想いの優しい夫に違いない。星の形。きっと大丈夫。)
八月や図書には位置が与へられ/いかちゃん
(戦争の話はどれだけ図書になっているだろう。位置の与えられないものの居場所は?)
秋蛍つつむ手心臓のかたち/きつネつき
(蛍を包む形はまさに心臓の形になった。ハッとさせられ、蛍の小さき鼓動も聞こえるよう)
新涼の戸に立てかける松葉杖/となりの天然水
(主体は脚の治療中。しかし経過はきっと良好。新涼の戸、季語の力でそう思わせる)
ピザ窯の煉瓦に余熱秋の夕/柚木みゆき
(煉瓦と夕がとても合っている。レストランでなく丁寧な生活をしている人と見た!)
おつきさまうちゅうのなかにはいっちゃった/のぐちごう
(子どもの世界の見え方は時に詩だ。明け方の、空に消えゆく月のことかと思った)
十六夜や試筆のひらがなの架空/後藤麻衣子
(後藤氏のカリグラフィーを見てほしい。サラッと描かれているがそれに至るまでがあるのだ)
いつもこれくらいは言いたいのでなかなか記事にできないできました。
またネプリが出たらやりたいし、前に手に入れたネプリについてもできたらいいなと思っています。
最後に私の句で終わります。
仲秋を覗くドーナツの広告/弥栄弐庫
(スイーツ句。「ミスタードーナツ♪」菅田将暉さんが秋限定ドーナツを持っている)