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純資産、株主資本、自己資本、ROEについて考える

今回は、「純資産」「株主資本」「自己資本」そして「ROE」について、少し深堀りしてみます。


■純資産とは?

純資産とは、企業の貸借対照表において、資産から負債を差引いた残りの部分をいいます。これは、企業にとって返済義務のない資産を意味します。
わたしの保有株である大和ハウスの純資産をみると、「株主資本」「その他の包括利益累計額」「非支配株主持分」の3つから構成されています。他にも「新株予約権」という項目があります。

■株主資本とは?

株主資本とは、簡単にいうと「株主の持ち分にあたる部分」をいいます。
株主資本は以下の式で表すことができます。

株主資本=資本金+資本剰余金+利益剰余金-自己株式

株主資本とは、株主からの出資(資本金と資本剰余金)と会社がこれまで稼いだ利益の累計額(利益剰余金)の合計から会社が保有する自己株式を差し引いた金額になります。

また純資産の構成項目には、その他の包括利益累計額があります。これは会社が保有する資産や負債の「含み損益」です。「株主資本」は、既に確定した株主の持分であるのに対して「その他の包括利益累計額」は暫定的な株主の持分という違いがあります。

■自己資本とは?

貸借対照表をみても「自己資本」という言葉はありません。自己資本とは、株主資本に「その他包括的利益累計額」を加えたものです。時価で価値が変動する資産を保有するような場合に、それらの評価額や換算持の差額なども鑑みて計算したものになります。

自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額

先ほど、「株主資本」は、既に確定した株主の持分であると説明しましたが、まとめてみると以下のようになります。
・株主資本:損益が確定的な項目で構成
・自己資本:損益が暫定的な項目も含めて構成
あとから、ROEの話が出てきますが、ROE計算には自己資本が使用されますので、まだ利確(損切り)してない資産も含まれているということです。

なお非支配株主持分とは、「連結子会社の資本のうち、支配会社である連結財務諸表作成会社(親会社)の持分に属しない部分」を言います。これは親会社持分に帰属しない部分であり、少数株主(非支配株主)に帰属する部分です。
つまり、子会社を支配する親会社が保有する持分が80%であったとするなら、それを除いた残りの20%が「少数株主持分」です。

■ROEとは?

ROEについて、日本取引所グループでは以下のように定義されています。

「当期純利益を、前期及び当期の自己資本の平均値で除したものです。
純資産の部合計から株式引受権、新株予約権及び非支配株主持分を除いた自己資本を「元手」として、1年間でどれだけの利益をあげたかを見る企業の経営効率を測定する指標の一つです。」

ROE=(親会社株主に帰属する)当期純利益÷自己資本

近年ではDOE採用が増え、よりROEの重要性が増しています。ただし、ROEを見る上で、以下2点の注意点があります。

1.ROEは単年度の変動が大きい
ROEは、分子の当期純利益は固定資産の売却、災害等の損失などに影響を受けるため、大きく変動することがあります。
また分母の自己資本に評価・換算差額等の項目が含まれるため、資産・負債に発生した含み損益の影響を受けます。近年は株価の値上がり、円安などもあるため、やや留意する必要があります。

2.長期的には平均回帰する
大和総研の報告書によると、ROEは長期的に平均に回帰する傾向があります。ROEが高い会社が平均に回帰する理由は、新規参入者により競争が激化(分子が減少)、当期純利益が増えると自己資本も増加(分母が増加)などの理由があるようです。

以上、純資産、自己資本、株主資本、ROEの説明になります。これらの言葉はSNS上でよく飛び交っていますが、その違いを正しく理解し、「違いのわかる投資家」を目指したいと思います。


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