大人のいじめ
私は学生時代、いじめに近い経験をした。
子供の頃から少し変わっていたことは、薄々自覚していたが、隣のクラスの女子が、のちに友人となる女性に、「あの子と付き合うと、〇〇ちゃんまで変人だと思われるよ。やめときなよ」と言ったそうだ。
私と喋った直後だったので、言いたかった相手は私だとわかったそうだが、彼女は、『そういうことを言う、お前がろくでもない』と思ったそうで、以降、彼女とは仲良くなれた。とても嬉しかった。
また、部活でも無視にあっていた。誰からも話しかけられないのは序の口で、二人組んで行うストレッチも、人数が余っているにも関わらず、「あの子は体が弱いから無理でーす」と避けられた。当時、ひどい貧血だった私は、練習に制限がかかっていた。皆が4km走るところを、医者から2kmまでが望ましい、と指示があったので、その通りにしてたのだが、部活仲間は気に食わなかったのだろう。泣く泣く退部して、顧問の先生に挨拶したら、「お前が悪いから、仲間はずれにされたんだろう?うちの部活の恥さらしだ」とまくし立てられ、涙が零れたことを、今でもはっきり覚えている。
そして、大人たちは誰もが、これは学生だからだよ、大人になったらいじめはないよ、と言った。そうなのかな?と理不尽に思いつつ、その頃は納得した。
けれど、大人になっても、いじめのようなことはあったし、見た。なにも変わらないじゃないかと切なくなった。
ある時は、仲良くしていた友人がおり、毎日のようにメールする間柄だったが、ある日、おそらくその子がファンの同人作家さんの本を私が買ったことで、急速に距離を置かれるようになった。少なからず、彼女にはお金の援助のようなこともしていて、それが悪かったのだと考える。きっと鬱陶しかったのだ。引け目を感じていたのだ。
そして、グループチャットですら、他の仲間から無視された。いないことにされた。ログインしても、皆が話しかけてこないし、時には私の登場の瞬間に全員がログアウトした。
私は何度も無視を経験していたので、すぐに察したが、黙っていた。いつか、これまでのように笑い合える仲に戻れると信じていた。
だが結果として、友人の友人からメールで、「あなたは友人に思いやりがない」というような内容が送られ、縁が切れた。約2年近く、楽しかった思い出も、きっと彼女には疎ましくなったのだろう。裏では、嫌なことを囁いていたかもしれない。
無視は、簡単ないじめだ。相手にしないだけで、本人にはダメージが入るし、爽快なのかもしれない。してやったり、という気分だったかもしれない。
しかし、蓄積された無視は、なによりつらい。悲しい。自分がなにをしたのだろう、と悩み、苦しむ。
職場でも、あまり良くない状態を経験した。相手は私ではなかったが、色々とあってとても忙しい時、仕事をしていないように見えた方に対し、不在を狙って、「あいつ、死ねばいいのに」と大声で話していた。上司もとめず、むしろうなずいていた。私が、そこに割って入って、やめなよと諌められたらよかったのだが、係全体が、同調する雰囲気で、口を噤んでしまった。私もまた、いじめのような状態に加担してしまったのだ。
当然、ののしられた相手は無視された。業務上、必要なことだけ告げられて、休暇をとればまた悪口を言われる。その繰り返しだった。
大人になったって、学生時代と同じことが起きる。いや、もしかしたらもっと悪い。パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラ等々。しんどくても、そこから逃げるのは厳しい。退職したって、自分が苦しくなるだけだ。歯を食いしばって、耐えなければならない。病気になって、はじめて休みがとれるくらいだ。陰湿極まりない。
無視は、多分、いじめの入口だ。お手軽にできる、集団から追いやる手段だ。
もし、これを読んでくださる方がいたら、どうか知って欲しい。このような態度は、いつか相手も気づき、深く傷つけるのだ、と。そして学んで欲しい。自分がその立場だったらどうなるのか、と。
大人のいじめは難しい。
だからこそ、せめてあなただけは、感情的に 、安易に、人を貶めることが、醜いと感じる、健全な精神でいてくれることを願う。