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ヤバい・・・ズレてますよ!

こんにちは南仙台の父です。
台風一過でフェーン現象のためかなりいかれています。
涼もうと入ったコンビニで私の方をずっと見ている爺さんがいます。
私も人のことは言えない怪しさがありますが、その爺さんは明らかに頭に
何かが不自然に載っています。
しかも、本人は気がついていないようですが微妙にズレています。
「カツラズレてますよ。」って声をかけることはできません。
いくらバカで明るい私でもこちらをずっとガン見してるような頑固でプラ
イド高そうな爺さんに能天気には言えません。
そんな状況で昔のことを思い出してしまいました。

だいぶ昔のことですが、品質か何かの打合せで来客があって打合せしてい
た時のことだったと記憶しています。
私は品質の担当ではなく、別の部署でしたが関連する話だということでそ
の打合せに出席して欲しいということで出席していました。
色々な部署から集まって来たのですが、何か会議室に入った途端に怪しい
雰囲気が漂っていました。
私はその前の会議が長引いたので空いた席を見つけて座りました。
私は本題のメインではなかったし、部下の人が先に会議には参加してくれ
ていたので、特に後ろの目立たない場所に居ても問題はありません。
隣に座っていた別の部署の人が私に囁きました。
「ほら、あそこ・・・、何かおかしいと思いません?」
指さす方向を見ましたが特に変な様子はありません。
「えっ、どこがおかしいんですか?」
「よ~く見てくださいよ・・・、絶対におかしいですから・・・。」
もう一回見てみるけれどおかしい部分には気づけません。
「わかんないんですけど・・・。」
「ほら、〇〇さんの頭をよ~く見てくださいよ。」
指をさされた〇〇さんの方に視線を向けると、〇〇さんの頭の上を覆う黒
いものが少しズレているように感じました。
「ひょっとして、ズレてるってことですか?」
「そうですよ、これだけズレてるのは初めて見ましたね。」
確かにかなりズレているようには見えました。
〇〇さんは以前からヅラ疑惑が持ち上がっていて、日によって髪の量が違
うとか、頭の横から上にかけて不自然な段差があるとか、髪の後ろや横に
は白髪があるのに頭の上の方には白髪がないとか、時々ズレていることが
あるとか、休憩中にトイレの鏡の前でズレた状態を直しているとか、都市
伝説のような話が絶えませんでした。
私は自分の部下でもなければ同じ部署でもないので、噂を裏付けるような
事実を確認することはありませんでした。
「どう見ても変なズレ方してるでしょ。 お客さんにもバレてると思うんで
すけどね。」
まあ確かにそうだが、こんなヘアスタイルだと思えばそうも見えなくもな
いけど・・・、確かにおかしいのは間違いありません。
「誰か傍に居る人が教えてあげないとダメだとおもうんですけど。」
「ここであからさまに対処したら余計におかしな事になりますよね。」
確かにそうだが、ズレたままも困ったもんだし、しかも来客があっての会
議なのに、第一お客さんに失礼なのは言うまでもありません。
そうこうして会議が始まって二時間ほどが経過し、一旦休憩しましょうと
いうことになりました。
〇〇さんの直属の係長も会議には出席していました。
「〇〇さんの頭は直した方がいいと思いますけどね。」
「ああ、あれですか・・・。 今から直すと余計におかしいと思います。」
「えっ、じゃああのままで最後まで・・・。」
「仕方ありませんよ、シラ切るしかありませんから。」
そう言うと〇〇さんの直属の係長は会議室を出ていきました。

十分ほどして会議は再開されました。
全員の視線は〇〇さんの頭に当然集中することになりました。
(おい、変わってねえし、さっきよりも余計にズレてねえか?)
たぶんこう思ったのは私だけではなかったはずです。
「〇〇さんの頭は余計におかしなことになってません?」
「そりゃそうですよ、会議の準備で慌ただしかったから直すどころじゃな
いし、慌ててたからズレ方が酷くなってますよね・・・。」
私の横で他部署の人は笑いを噛み殺しています。
そう言えば会議の出席者の何人かが笑いを堪えていて、お客さんの側でも
若い担当者の人がずっと下を向いてヒクヒクしていました。
ただ、会議の内容自体は本来重苦しい品質に関わる重要な打合せであった
にも関わらず、かなり友好的な雰囲気で進んでいきました。

会議終了後に〇〇さんの直属の係長が私に話しかけてきました。
「いやあ、ホント助かりましたよ。」
「えっ、どういうことですか?」 
「今回はかなりキツいこと言われるのを覚悟してたんですけど、驚くくら
いにあっさり終わりましたから・・・。」
「ということは、〇〇さんのファインプレーということですか?」
「そりゃそうですよ。 あんなに体張られたら相手も厳しいことなんて言え
なくなりますから。」
〇〇さんは本当に真面目な人で、普段も冗談を言うようなタイプではあり
ませんでした。
結果として会社は〇〇さんによって救われた形となりました。
私が廊下を歩いて部署に戻ろうとしていたら、〇〇さんの部署の課長から
声をかけられました。
「どうだ、〇〇さんが体張ったおかげでうまくいっただろ。」
「まあそうなんですけど、本当に大丈夫なんですかね?」
「あれだけ笑わせたんだから大丈夫だよ。 下手なお笑い芸人なんかより
ずっと面白かったからな。」
課長は危機を何とかできた喜びで毛穴から安堵のオーラが出てました。

そう言えば、小学生の頃の話ですけど朝礼の時に校長のズラが強風で飛ば
されてしまい、先生たちが必死になってカツラを追いかけていたのを思い
出しました。
先生たちにとっては自分の評価だったり、出世がかかっているので当然真
剣にカツラを追っていました。
それを見ていた児童の我々は笑いを堪えることができず大笑いしてしまい
ました。
担任の先生から人の不幸を笑うとは何事だということで、たまたまその日
にあった道徳の授業でしこたま怒られたのでした。
もちろん不幸なことはわかってますけど、必死になって追っかけている先
生たちの姿の方がおかしかっただけなんですけど。
そうそう、〇〇さんの話でしたね。
その日の夜になった頃ですが、たまたま〇〇さんの直属の係長とタイムカ
ードの前で出くわしました。(当時はタイムカードを使っていた。)
「そういえば〇〇さんは会議後どうでしたか?」
「そりゃもう、課長からは褒められるし、部長からも今日の会議は良かっ
たよって大絶賛でしたよ。」
「カツラがどうとかって言っちゃったってことですか?」
「そんなことは言いませんよ。 資料がお客さんの気持ちを掴んだとか、
発言が良かったとか、そう言って褒めてましたけどね。」
「でも△△課長(〇〇さんの課長)はヅラのおかげだった言ってましたけ
どね。」
「ヅラがあれだけズレていたのは最高でしたね。 ボーナスが相当出るんじ
ゃないですか。」
まあ今回の一番の功労者だし、MVPだからそりゃそうでしょう。
まさに怪我の功名とはこういうことでしょう。
「最後に一つ聞いていいですか?」
「えっ、何ですか?」
「〇〇さん、頭は元に戻してました?」
「そりゃ戻しますよ。 何ならまだ実験室に居ると思うから見て来たらどう
ですか。」
そう言うと笑いながら係長は帰っていきました。
ひょっとして、会社を救うために一肌脱いだってこと?
愛は地球を救うかもしれないが、ヅラが会社を救った話でした。

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