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セットネック

こんにちは南仙台の父です。
今回はセットネックについての話です。
ギターは複数の木材部分を加工して接合する方法で製造されています。
これは各々の部分の木材を目的に合わせて選択するために採用されている
ところもありますが、製造工程やリペアの手間やコストを念頭に置いて採
用されています。
エレクトリックでは大きく分けて3種類の接合方法があります。
セットネックはその中の一つですが、最も古くから採用されている接合方
法です。
今回はそのセットネックについての話です。

ボディとネックの接合方法は大きく分けて3種類あり、セットネック、ス
ルーネック、ボルトオン・デタッチャブルに分かれます。
Gibsonでは伝統的にセットネックが採用されています。
これは元々Gibsonがマンドリンやアコースティックギターから創業した
ことが理由です。
セットネックは一番古くから使われており、クラシックで使われている
弦楽器でも基本的にはこの技法がスタンダードです。
もちろん形状や構造は時代を経ることで変遷していますが、木工の基本
技法で家具や建物・構造物でも使われる技法です。
Gibsonのギターが工業製品というよりも工芸品といわれるのもこうした
製法にも影響しています。
セットネックはネックとボディを別々に加工し、最終的にオスメス構造
で組合せ、接着剤を使用して接合します。
最近は樹脂系などの接着剤を使って、強度アップや接合時間の短縮など
も図られていますが、昔は伝統的に膠を使っていました。
今でもしっかりと接合するための圧を一定にかけて時間をかけて接合し
ています。
それに対してボルトオン・デタッチャブルはボルトでネックとボディを
止める方法です。
直接ボルトで止める方法だけでなく、金属プレートを介する方法などが
あります。
こちらは工業製品として大量生産を行うことに向いた製法で、Fenderが
採用して一気に広がった製法です。
スルーネックはボディとネックを別々に作らずに同時に一つの塊として
加工していく製法です。
それぞれにコスト面や音響効果、演奏性やリペアの難易度などが関係し
ていきます。

セットネックの特長はボルトオン・デタッチャブルと異なり、ネックと
ボディの接合部を比較的スムーズな形状で仕上げることができます。
また、音響面ではサスティンが比較的長いことも挙げられます。
一方で難度が高くて時間がかかるためにコストが高いこと、リペアが難
しい点があります。
また、音質的には多少アタック感が失われることもあります。
ただ、選択する木材などの影響もあるので、一概には一括りにはできま
せんがこうした傾向があります。
ボルトオン・デタッチャブルはアタックの立ち上がりが早い傾向があり
、コスト面やリペアの面で利点があるのが特長です。
ただ、サスティンが短い問題がありますが、エフェクターで補正できる
のであまり気にしないギタリストも多いと思います。
スルーネックは価格が非常に高く、リペアは事実上できない面がありま
すが、サスティンはかなり長くなって、セットネックよりもボディとネ
ック接合部がないためにスムーズな形状に仕上げることができ、演奏性
の面で抜群の効果があります。
最近は大きな木材を使わなければならないスルーネックのギターはあま
り見かけなくなりましたが、中古ギターなどでは高値で取引されている
ようです。

最近はネットで動画を検索するとギター工房やメーカーの製造工程を紹
介する動画を簡単に見ることができます。
Gibsonもいくつかの動画を公開しており、実際に木材の加工から接合、
さらにアッセンブリーの取り付けや仕上げまで公開しています。
セットネックは経年変化でズレたりすることはありません。
ボルトオン・デタッチャブルだと経年変化で木材の変形やボルトの浮き
などが発生してボディとネックの間に隙間が生じることがあります。
昔は多くのギタリストがこうした隙間にカミソリの刃を差し込んで隙間
を埋めているなんてこともありました。
ギター雑誌でも紹介されていることがあり、時期によってカミソリの刃
の枚数が増えたり減ったりしていることもありました。
こうした点も問題というよりは個性として表現されている部分もあって
、こうした浮きまでを再現したシグネチャーモデルまで発売されたこと
もありました。
セットネックの場合は簡単に接合を外すことはできません。
そのため、ネックが折れた場合は復元という形で修繕する手法が使われ
ることもあります。
スルーネックと同じ修繕方法です。
昔はこの接合部の膠の量によって音質が変わるみたいな都市伝説もあり
ましたが、どちらかというと接合はしっかり木材の組み合わせで接合さ
れるので、薄い膠の厚みや量で変わることはありません。
Gibsonの場合は接合に使われる膠だけでなく、ナットに牛骨が使用され
ていたりもしたので、かなりクラシックな製法によるギターといっても
良いと思います。
セットネックギターはシャープなバッキングプレイよりも、太い音やサ
スティン重視のプレイに向いた製法です。
多くのギタリストがボルトオン・デタッチャブル系とセットネック系の
ギターを両方使っているのもサウンド的に両方を使い分けたいという考
えから、こうした対応になっていることも多いです。
個人的にはセットネックでも、アルダーのセンターブロックが入ってい
るES-335は音の立ち上がりも比較的早い感じがあるので、カッティング
でもストラト的な立ち上がり感に近い感じも出せます。
どういうサウンドかによって好みも分かれ、コストやアフターメンテナ
ンスなどにも影響するので、どれが一番良いという答えがないのもギタ
ーの特長だと思います。
以上、今回はかなり真面目に書いてみました。

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