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『ミュータンス・ミュータント』百景episode2…「見えざる胸囲」
「うんめい、これ。やっぱり定番にハズレはないよな」
隣にある病理学講座で大学院生をしている同期の澤田から学会土産としてもらった伊勢名物の赤福餅を口に頬張りながら、水津は思わず唸った。
「久しぶりに食べてみたいな、なんて思っていた絶妙なタイミングで思わぬ差し入れ。これもスイーツ好きの僕に定められた運命なんかな。やっぱり、うんめい」
下らぬ駄洒落を呟くと、甘党の彼が美味しいものに出会うことに運命的な、ある意味で必然的なものを感じていた。
深夜の研究室。
一人残った彼は、実験の合間の休憩時に束の間のスイーツタイムを楽しんでいた。
「あんこはもちろん美味いけど、白い餅もモチモチしてて美味いなぁ…」
彼はほくそ笑むと、黒革のスイーツ・メモに6月の日付を記入し、食べた感想を詳細に記した。
しばらくしてメモを置くと、傍らにある「クマノコ通信」の最新号に手を伸ばした。パラパラとめくり、目的のページを探す。
「えっと…あん?あ、このへんやな」
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